13 もう一回行きました
「……今日は授業が手につかなかった」
「それはいつものことっしょ~……」
夢の世界で、二人は懲りずに昨日の道を抜ける。
だが、無策というわけではない。
学校の空き時間に、簡易的な作戦を練っていた。
第一に、無闇に廃工場に侵入しないこと。
次に、こちらの存在は、まだ知られないようにすること。
最後に、何かあったら、とりあえず現実世界に逃げること。
相手の素性が知れない以上、最新の注意は払うのが定石だろう。
万が一、この学校のカースト上位者だった場合、今後の学生生活に更なる暗雲が立ち込める。
「念の為、防具的なヤツ作ってみたけど、使う?」
「! かっこいいから使う」
渡良瀬愛依は、中学の社会科見学で歴史民俗資料館に訪れた際に飾られていた、とある武士の甲冑と、ゲームに出てきた【妖:ヴァリアブルシールド改】という、物語上の西洋騎士が持っていそうな、無駄に大きな盾を創り出した。
六斎堂愛忌は飛び上がって喜び、嬉しそうにそれを装着した。
「どうせなら剣も欲しい」
(いらないっしょ……)と渡良瀬愛依は思ったが、それで落ち着くならと、同じように【霊:ノーズシャドウブレード】を出してやった。
六斎堂愛忌は小学生のようにそれを振り回し遊び、派手にすっ転んで、装備一式と共に現実世界に消えて行った。
「……ついた。敵に注意」
数分後、学校の制服を着た六斎堂愛忌が夢の世界に戻ってきた。
曰く「知らない同級生にパジャマ姿を見られるのは恥ずかしい」ということらしい。
一理ある、と渡良瀬愛依も制服をその場で創り出し、動き辛い甲冑を装備することを諦めた二人は、制服姿で学校の外へ繰り出していった。
「敵かは分からないけど……。ま、安全第一っしょ~!」
昨日ほどの爆発音は聞こえないものの、金属同士がぶつかり合う音は相変わらずで、その中から、人の溜息のような声がかすかに耳に届いた。
「? 正面からは行かないの?」
「あ~……。うん、正面は危ないから、裏口から行こっか。脚立くらいなら作れるから、二階から入るよ~」
六斎堂愛忌に、正面から入ると死にかねないということを言うのを忘れていた。
しかし、今更言って怖がらせたくはない。
二人は廃工場の裏に回り、お手製の脚立を立てかける。
工場は結構な高さだったが、脚立のようにシンプルな作りのものであれば、渡良瀬愛依の裁量で長さなどは変えることが可能だった。
「よし。行くよ、愛忌ちん」
「ドキドキしてきた」
そのドキドキは恐怖から来ているのではない。
純粋に、楽しみから来ていたその気持ちを、この後裏切ることになる。




