プロローグ 夏休みの始まる、世界
これでプロローグ終わりですー
ブクマ評価感想れびゅーいつでも待ってまーす
星乃芽台。
この物語の舞台になるのは、少し高くなった場所に存在する街。
世界中でたった一つ、人が生きる街。
二百軒ほどの住居が中心部に立ち並び、中心には学校が存在している。
外縁部には広大な畑や田んぼとゆるやかな流れの川。それと少しの廃墟が立ち並んでいた。
そして、重要なのはこの街の名前の由来にもなっているシンボル。
川を越えたさらに奥に存在するその樹の名前は、
星乃芽の大樹
二階建ての家を数回重ねてもなお追いつけない高さと、大の大人を数十人並べてもなおそれの直径に及ばないほどの大きさ。
されど、異常なのはそれだけでない。
驚くべきは、その性質。
世界とのリンク。
人が死ねば、樹から葉が落ち。
人が生まれれば、葉が産声を上げ。
この樹の葉が落ちれば、人が一人消える。
また、枝が落ちれば世界が欠け落ちる。
常に落ちたり、生えたりするけど、緑の絶えないときは無いから、常緑樹なんて呼ばれることもある。
とはいえ葉が落ちてから人が消えるときなんて、数十年に一度あるかないか程度だ。
……例外を除いて。
この樹には、全ての葉と枝が落ちるときが存在する。
その周期はおよそ、六百年。
およそ六百年が過ぎた時、突然に葉が落ちる速度が上がる。
最初は一か月に一度。
そして、一週間に一度。
次に、三日に一度。
一日に一度になってもまだ止まることはない。
誰も居なくなるまで、人は消え続ける。
人間にそれを逃れる術はない。
だから、受け入れる。
終わりを。
◆◇◆◇◆
七月の二二日。
ただの終業式には不釣り合いなちょっとだけ飾り付けた教室。
ちょうど終業式を終えた所だった。
梅雨明けの、気持ちいいカラッとした天気。
外から入ってくる太陽光は、教室備え付けのボロくて薄っぺらいカーテンじゃ抑えきれなくて。
窓際じゃない僕の所ですら、十分に暑い。
教卓の上で扇風機が首を横に振り続けているけれど、それでも雀の涙。
頬を伝った汗が一筋机に落ちた。
たまに吹く、ちょっと強めの風が命綱。
外では風鈴とクマゼミが競合するように音を鳴らし合っている。
「もう、本格的に夏だな……」
生徒の数は五人。
その前で式を進めていた中年の担任が額に滲んだ汗を拭く。
そして、言った。
「もうすぐで世界が終わるって話、前にしたよな。それの続報だ。割と正確な時期が計算で出てきたらしい」
「終わりは、今年の夏休みの終わり。八月三一日で誤差は二日ぐらい、だとよ」
前に言われたときは三か月以内だったから、結構精度は上がっているらしい。
なんて他人事のように感じるほどには、衝撃が無かった。
小さい時から、二十歳を迎える前に世界は滅びるとか言われていたし。
ああそうなのか、程度。
隣に座る白髪の少女も、興味なさげに窓の外を見ていた。
「つまり、だ。今日で本当に学校は終わり。……さっき、アイには事情を話して教室の飾りつけ手伝ってもらったけどな」
右前に座る藍色の髪の少女が笑う。
心配事なんてどこにも無いような、朗らかな笑み。
「ちょっとびっくりしたけどねー」
「ま、そうだろうな。――で、だ。そのことを合わせて俺からいえることは一つだけ」
「好きなようになんでもやれ。悔いの無いように過ごせ。お前らは今日で卒業だ」
「じゃあ、解散。号令」
「きりーつ」
気の抜けた、委員長の声。
――ああ、そっか。
この声を聴くのも、今日で最後なのか。
「きおつけー」
結局、最後までやる気のないままだったな。
僕も、委員長も。
適当に過ごしてきていた。
「れー!」
だけどせめて、最後くらいは。
残り四十日で。
「「「「「ありがとうございましたー!」」」」」
何か、大きなことをしたいと。
そう思った。
樹歴一一三九八年
熱い日差しの照り付ける七月の二二日。
この世界が滅びるまで、あと一か月とちょっと。




