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Natural   作者: ぷぺ
3/3

はじめてのびわいち 3

野洲菖蒲のローソンを越し湖岸道路を走る。道沿いは多くの木が植えられ湖岸の景色はあまり見れなくなってきた。正直テンションが少し落ちてきた。巡航速度は30㎞もいってないが、今後の疲労の事も考えると少しペースを落とすほうが良いだろうと考えゆっくりと空を見て楽しむ。

 小腹がちょくちょく空いてくるので補給食の羊羹を食べながら走る。途中、TTバー(※1)を装備した集団達に抜かれるが「あの速度は絶対に無理」と少し怯みながらペダルを回す。道に記されている青い矢印(※2)に沿って走り国道26号線に入る。少しすると3人ほどでトレインを組んだ集団に近づいた。先頭はMTB(※3)でサンダル履き、真中はロードバイク、最後尾はクロスバイク。「学生さん? 後ろについたら悪い気がするし、少し速度あげるか」と思い速度を上げ、「横通ります」と声を掛け先頭のMTBを抜き走り続ける。

 信号で止まるたびに少しずつ自身の速度は落ち、後続が近づいてくる。

 彼は少し慌てていた。ロードバイクに乗りはじめて複数でのライド等経験は無い。巻き込まれてはたまらないと思いながら、遂にMTBが真後ろにつく。速度を上げるが差は広がらない。若宮神社を越した所の信号でMTBに乗っている青年が

「前変わります。後ろについてください」

 と声をかけてくれた。

 行為に甘えながら最後尾に着くと少し体が軽くなった。これがトレイン(※4)の効果か!と少し感動しながら走っていると、先頭が手信号を行い、停車の合図を行う。他の2人がやっているの見て吊られてつい、最後尾の自分も真似をするが何度か行っていたところで、後ろはいらんのかと考えに至る。

 何度か先頭を交換した後、信号に差し掛かりピンディングを外し信号待ちをするが

「あっ」

 と声を出しながら、右手側にこけた。

「大丈夫ですか?」と声をかけながら学生達が自転車のチェックを行ってくれた。自身もその後、「ありがとう。大丈夫だよ」と声を返しながら気を取り直して再度進む。

 

 愛知川を越した所で30人ほどはいるであろう、自転車の大集団に巻き込まれた。

後ろを向き思わず

「お兄さん、何これ??」

「イベントのライド(※5)っぽいですね。国道沿いですし、千切るほどの速度も出せないので途中までこのまま行きましょう。彦根港辺りで休憩兼ねてトレインから離脱しましょうか」

「これが琵琶一ってもんなの??」

「これも琵琶一ですよ。色々あって面白いでしょう」

笑いながら彼は言う。

事故になるよりかは良いかと思い、そのまま走っていく。

途中走行集団への珍しさか、写真を撮られている事に気づく。一人、これも琵琶一かと納得しながら走り続け、彦根港へついた。

学生達と幾つか言葉を交わし

「またいつかどこかで」

と挨拶を交わした。

彼らはここで1時間ほど休憩を取り、先へ進むのだという。

自身は20分ほど休憩をしてから先に進む予定にしていた。


「琵琶一ですか?」

今度はビアンキ(※5)に乗った夫婦に声をかけられた。

彼らは7時過ぎに琵琶湖大橋を超えここまで来たのだという。

「速いっすね滅茶苦茶」

「違いますよ。南湖は走ってないんです。初めてなので北側一周ですよ」


ん?俺初めてで南湖もやっちゃてるよね?

夫婦に伺うと、体力に自信のある初心者はできるらしい。

只、100の位の数字が変わると多くの人間が尻込みするので大体は北湖を一周で琵琶一というらしい。

また琵琶一といっても彦根から船に乗り、ショートカットをするルートもあるのだという。それもしてみたいなと思いながら、夫婦と別れの挨拶をし、出る前にスマホを取り出し、LINEを開き、友人達に位置情報と写真を送る。


「ペースがやばい」


一言だけ返信が来た。


 時間は午前9時40分。そろそろ何か食べたい。じっくり休憩を取りたいなと思いながらもペダルを回し、長浜市に入る。ここからが彼にとっては北湖という感覚だった。20年近く前、父と共にキャンプに来た北湖。

その広さに、その水の綺麗さに感動した場所。奥琵琶湖がもうすぐ近づいてくると思うと心が躍った。自然とペダルを回す足に力が入る。一瞬このまま行ってしまおうかと思うが、先に昼ご飯を食べようと道の駅 湖北みずどりステーションによる事に決めた。時間的にも多くのサイクリストやツーリスト、ドライブを楽しんでいる人達がいた。サイクルラックに自転車を止め、食堂に入る。普段ならガッツリと昼食を楽しむが、残りの距離が75㎞ほど残っていることもあり茶蕎麦を食べる。食器を返却し終えた所で、これから食事をとるのであろう夫婦と目があい、


「あっ」


と声をだし、互いに笑った。先程彦根港で話していたビアンキ乗りの夫婦だった。


「またいつかどこかで」


挨拶をし、彼はまた走り出した。


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