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5.初めての敵

 ようやく封鎖から解かれたダンジョンは冒険者でにぎわった。

 オカチの町の冒険者ギルドもここ数年みたことの無い活況。

 ギルドでは色々な噂話を聞けた。


 魔物の暴走でかき回されたダンジョンでは魔物達の住処が変わる。ましてやアンデッド騒動もあったのだから念入りな情報収集は欠かせない。

 今までに無かった沼地の天井を蜘蛛のようにカサカサと動く吸血鬼を見たとかレッサードラゴンを鞭でしばく蛮族の大女を見かけたとかばかばかしいヨタ話しに混じって2、3階層でゴブリンを見かけなくなったという実用的なネタも仕入れられた。アンデッドがエントランスに充満していたのだからそれを避けて奥へとひっこんだのだろう。


「いよいよゴブリン退治ですね」

 小僧は依頼をしっかり覚えていた。


 アンデッド騒動で俺は忘れていたんだけど。


 薬草採取で功績を稼げなくなったからにはゴブリン退治でもしないと無階級からの昇格は難しい。

 初心者を案内する俺からすると1階は薬草、2階はゴブリンといった感じに順にすすめれば楽なのだけど現実はそうもいかない。

 まぁ、同じゴブリンなら多少階が違っていても大きな差は無いとも考えられる。

 楽しそうな小僧から出会った頃のような緊張感が薄れている。油断は禁物だ。ここはひとつクギを挿しておこう。


「魔物の暴走は知っているよな」

「ええ、おかげでダンジョンが封鎖されていましたから」

「暴走はなぜ起きると思う?」

「それは…危険な魔物に狙われたまま上へ上へと冒険者が逃げていく…元凶はおのれの技量を過信して実力以上の魔物と闘うからでしょうか?」


 小僧は出来る子だな。油断はしていないと考えてもいいか。


「合格だ。でも一流の冒険者は間違いを犯し逃げなければならない場合の対処法も考えておくものだ。どうすればいい?」

「逃げるのを止める…と殺されますよね。どうすれいいのでしょう」

「一つ目はダンジョンに隠れる技術を身に着ける。魔物の特性を知り臭いを消したり苦手なものを撒いたりまぁ色々だ。かなりの高等技術になる。二つ目は隠れる場所をあらかじめ確保しておくこと。あちこちに枝分かれしているダンジョンの通路の中には魔物が来ない場所もたまにある。いざという時はそこに逃げ込み魔物が諦めるのを待つんだ」

「一流の冒険者への道はむずかしいものですね」



 小僧にとって初めてのダンジョン内部。

 俺に小僧にアイシャにサンチェス、そして護衛役のムコーセの5人。

 ハンスは御者なのでふもとに停めた馬車に待機している。

 サンチェスはいつもの戦斧を背負いながら大きな盾も持ってきている。

「ゴブリン退治はマクシミリアン様の仕事ですからサンチェスは盾となりお手伝いいたします」

 こいつらとんでもないことやらかすけどクソ真面目だ。

 ムコーセの声はまだ聴いたことがない。



 地下3階へ降りるためサンチェスが偵察に降りている時に奴らが現れた。

「ようよう、くたびれたおっさんよぉ可愛い坊ちゃん嬢ちゃんを連れているなぁ。…よく見ると上玉のねえちゃんもいるじゃねぇか」

 ダンジョンでの初めての敵は人間だった。


 ダンジョンの中にある魔物の来ない隠れ場所は盗賊の拠点になる場合もある。

 こちらの戦力は二人と見たのか5~6人の男たちがゆっくりと近づいて来る。

 舌なめずりはしていないものの美味しい獲物を前にニヤニヤ笑いがこぼれている。


「プベー!」


 ムコーセが動く前に男が一人吹っ飛んだ。

 男がいた場所には戻って来たサンチェスの姿。

 サンチェスはダイアウルフのような素早い踏み込みで次々と男たちを盾でぶっとばしていく。


 シールドバッシュ。盾って、守るだけじゃないんだよな。知ってた。



 けっきょくその日はゴブリンに出会えないまま砦へと帰った。


 俺たちの前には縄でしばり上げられた盗賊。


 ダンジョンが活況になれば盗賊も増える。当然の理屈だがゴブリン退治を邪魔された小僧は機嫌が悪い。

「ゴブリン退治の討伐証明は耳をそぐそうですが盗賊の場合はどうすれば良いのでしょう?」

「鼻ですかな」

 サンチェスの言葉に盗賊たちがふるえあがる。

「盗賊に討伐証明は不要だ、襲ってくる奴等が悪いのだから捕まえた俺たちが好きなようにすればいいんだがギルドに突き出しても嫌がられる。どうしたものかな」

 小僧には言わないがギルドに突き出すもなにもギルドで見かけた奴もいる。冒険者と盗賊に明確な区別なんてない。

「早くゴブリンを退治したい」

 うなだれる小僧。


「ハ~ンス!」

 いつものようにサンチェスが声をあげる。

 金貨の入った袋を持ってサンチェスがやってくる。

「掃除はサンチェスにお任せ下さい。盗賊たちはとりあえず牢屋に入れましょう。ブリッジスならばすぐに建設できるはずです」



 金貨を撒く。盗賊が釣られてやってくる。捕まえる。


 縄でしばり上げられた盗賊が次々とダンジョンから引き出されて砦へと連れていかれる。


 何も悪い事していないんだけど、縄うたれた盗賊たちの行列を見るとなにかもやもやとした。



 冒険者たちの間では盗賊を『一週間砦』に連れて行くと金貨が貰えるという噂が広まった。

 さすがに金貨じゃなく銀貨10枚なんだけど小僧は気前よく払っている。

 盗賊というか囚人たちが増えすぎて牢屋に入りきらなくなってきたので強制労働に使役し始めた。

 十分な食事を与えて建築作業を教えると良い労働力となった。

 商人からは囚人たちを売って欲しいという声もきくようになった。


 売っちまったら奴隷商人じゃねぇか。

 盗賊たちの行列を見て感じたもやもやはこれだったのかと気づいた。

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