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降り立つ悪夢
ブオオオォォ……。
警笛を鳴らし、船が遠ざかっていく。
その、雪の降り始めた波止場に立つ三つの人影。
入沢 氷風は船を見送ると踵を返す。傍らにはサングラスを掛けた二人の男。
「……」
一枚の写真を取り出した。
「逃避行はこれまでですよ…。アナタは私が…」
写真に写っている人物を睨むと、口の端を歪める。
コートのポケットにそれをしまうと、
「行くぞ。時間が惜しい」
二人に短く伝え、入沢は街へと歩みを進める。
傍らの男達は音もなく後に続いていった。