チートな家
俺が目を覚ますと青空が見えた。つまり、地面に寝転んでいるようだ。俺はそのまま周りを見渡すと木々が生い茂っておりここが森の中だとわかる。そして、少し離れたところに家が建っていた。
どうやら、あれが神様の言っていた家なのだろう。木造の少し大きめの家なだけで普通の家のように見える。
「森の中に家があるって錬金術師っぽいな」
街の中の家をくれるのではなく森の中の家をくれるとは神様もわかっている。神様に感謝だな。俺は家を確認するために立ち上がり家の方へと近づく。
そして、家の玄関の前に来るとあるものを見つけた。
「手紙?」
玄関の扉には手紙が貼られており、『神様より』と書かれていた。俺は扉から手紙を取ると中を開いた。
『無事に転移できたようでなによりじゃ。この家が儂からお主に送る家じゃ。それで、この家は儂がいろいろと手を加えておって多くの機能がついておる。その説明をしようと思う。まず、この家から半径10mのところに結界が貼ってある。この結界は悪意ある存在を通さんようになっておる。強度は儂以外は壊せんほど強い。そして、もし悪意ある存在が中に入ってきても自動的に迎撃される。ああ、外におる敵も任意で攻撃できるぞ。お主が攻撃したいなっと思えば攻撃する。この迎撃システムも儂以外には効くから安心するがよい。ただ、これらの辺の機能は結界内でしか発動しないから注意するんじゃぞ。他の機能も紙にまとめておいたから読んでおくのじゃぞ。それと家の間取りじゃが紙に書いてあるからそれを見て確認するのじゃ。お主がいた世界の家を参考に作ったから使いやすいようにはなっておると思う。それでは、楽しい錬金術生活を
神様より 』
そう書かれた手紙のほかに3枚の紙が入っていた。2枚は家の機能の説明、1枚は間取りが書かれていた。
「え、この家チートじゃね?」
神様からの手紙を読んだ俺はそう口にした。攻撃も守りも最高神である神様以外には有効であるならこの家に勝てる存在はいないのではないだろうか。
「でも、まあ便利だからいっか」
だが、俺は誰にも邪魔されず生活できると考えありがたく使わせてもらうことにした。
「神様、ありがとうございます」
こんないい家をくれた神様に届くと信じ感謝を込めて空に向かってお辞儀した。
「じゃぁ、早速家を拝見しよっかな」
神様への感謝を終えた俺は扉を開け中に入る。
「・・・なんかあんまり違和感ないな」
家の雰囲気というのだろうかそういうのが元の世界の家と似ているのであまり異世界であることを感じさせなかった。
「えっと、間取りは・・・」
神様から貰った間取りの書かれた紙を見つつ俺は家を見て回った。
この家は2階建てで地下にも部屋がある。2階は主に個人用の部屋で1階はリビングとキッチン、キッチンはオープンキッチンになっていた。そして、和室もあり8畳ほどの広さがあった。そこには縁側もあった。地下は物置と工房があるようだ。
「・・・これ一人で住むには広すぎるな」
この他にも小さな畑を作れるくらいの庭があり敷地が高級住宅と同じくらいの広さがある。さらに、冷蔵庫やクーラーといった電化製品なども置いてあったがコンセントにつながれていなかった。しかし、冷蔵庫もクーラーも使えた。多分、魔力か何か、電気以外を動力にしているのだろうと予想した。
「食料と錬金術に使う素材も置いてあるし神様に感謝だな」
家を周り終えた俺はリビングのソファーに座った。ここまでしてもらったら神様に足を向けて眠れない。
「・・・そろそろご飯作らないとな」
時計がないので時間がわからないが外が暗くなり始めているのとお腹が減ってきていたこともあり俺は晩御飯を作ることにした。
キッチンに移動した俺は何を作るか少し迷った。そして、俺は異世界にきて一番最初に食べる料理は自分の好物がいいだろうと考えた。
「ハンバーグかな」
ハンバーグ、それは俺が一番好きな食べ物だ。子供っぽいと思われるだろうがハンバーグといえば子供向けのものから大人向けのものまで幅広く存在する料理である。だが、子供向けといっても懐かしさなどからたまに食べる大人までいる最高の料理だと思っている。
作る料理が決まった俺は早速材料をそろえた。
「こんなものまで置いてあるのか」
置いてある食材の中にひき肉がなかったのでどうしようか悩んでいると調理器具の中にミートチョッパーがあった。これは肉をひき肉にする道具であるが普通の家庭にあるものではない。そんな珍しい器具があったことに驚いたがこれでハンバーグが作れるので助かった。
まず、玉ねぎをみじん切りにしてそれをあめ色になるまで炒める。炒めた玉ねぎをボウルに取り出しボウルごと氷水に入れ冷やす。玉ねぎを冷やしている間にひき肉を塩コショウを入れ軽く混ぜる。混ぜたひき肉に冷えた玉ねぎとつなぎのパン粉を入れ混ぜる。そして、手ごろな大きさを手に取り空気を抜くためにパンッパンッと空気抜きをする。形を整えたら油を引いた熱したフライパンに入れる。ここでハンバーグの真ん中にくぼみを作る。片面を強火で焼き反対を蓋をして弱火で熱すれば出来上がりだ。
「上出来だな」
出来上がったものを皿に移しテーブルに置く。
「いただきます」
早速ハンバーグを一口食べる。
「うまい」
それから黙々とご飯とハンバーグを食べた。ご飯はハンバーグを作る前に炊飯器に入れていた。異世界にきて最初に口にするものが自分の好物であることに幸福を感じつつ味わって食べた。
「ごちそうさま・・・ふわぁ~」
ハンバーグをきれいに食べ終えた俺はご飯を食べたことによるとたぶん疲れによる眠気で今にも寝てしまいそうであったため片付けと風呂は明日にすることにした。
「部屋は一番奥の部屋でいっか」
2階に向かいつつ自分の部屋を一番奥にある部屋に決めた俺はそこに向かって足を進める。
そして、部屋のドアを開けた。そこには、机といす、ベットしか置かれていなかった。多分、自分好みにアレンジしろということなのだろう。
「おやすみなさい」
俺はベットに飛び込むと目をつむった。ベットはちょうどよい硬さですぐに眠気が押し寄せてきた。
こうして、異世界初日は家の探索で終わった。そして、明日からの異世界生活に胸を躍らせながら俺は眠りについた。