第5話 戦闘!? 頑張れニーターくん!
秘密結社サイアークの首領であるサイアークさんは、次に都合の良い日を私たちに聞いてきた。その日にまたもや同じ公園で撮影許可を出すという。そうして迎えた本日は晴れ。絶好のお散歩日和と言える。
「気持ちいいね」
「気持ちいいエロ」
前回来た時は不安もあったが、一度来た場所という安心感と、彼らニーターくんが思っていたよりも優しさに満ちあふれていたので、安堵した私。
(でもあの服装はないよね…… はぁ……)
男性がホットパンツを履いているだけでも違和感があるのに、上半身が裸なのだ。年頃の娘としては大変に気になってしまう。
(それにあのサスペンダーとハイソックス……)
上履きやマスクに至るまで全身が白。色だけで見れば正義の使者のようにも感じるが、いかんせん格好が格好なだけにそうは思えなかった。
「着いたね」
「いくエロ」
「うん」
(今日は変身するのかなぁ?)
「待っていたぞ!」
「たぶんバイト代が入って飯がちゃんと喰えたエロ」
「くっ」
「お身体は大丈夫ですか?」
「心配をかけたな。もう大丈夫だ」
「もしかしてフルローンの支払いなんとかなったエロか?」
「あぁ。ファミレスで契約したことが幸いして、クーリングオフ出来た」
「よかったですね」
「ありがとう魔法少女よ」
「ふふっ」
「ははっ」
「なに和んでるエロ!? こいつはエロを留置場に導いた極悪人エロよっ!?」
「でもそれってエロちゃんが持ってた、有害指定図書がいけなかったんだよね?」
「そうだ。逆恨みも程々にな」
「エローーーっ!?」
(ニーターさん達の姿が見えないけど、また公衆便所で待機させられているのかな?)
「もう謝っても許さないエロ」
「謝って許してくれるとも思えないがな」
「……」
「……」
「平行線のようエロ」
「平行線もなにも触れ合い存在だ……私たちはな」
「なら奇襲万歳だエロで、変身ヤンキー魔法少女エロっ!」
「なっ!? 卑怯だぞっ!?」
「……」
「……」
「……」
「……ちょっと待ってエロ」
「……あぁ。こっちも公衆便所まで、ここからだと離れてるから呼んでくる」
「分かったエロ」
「行ってくる」
エロちゃんは何か呟きだして小さい魔方陣をいくつか展開する。その光景に見とれていると、サイアークさんとニーターさんがこちらに向かって歩いてくる。
「待たせたな」
「いえ」
「……もうちょっと待ってエロ」
「……」
「……」
(緊張感がないのは良いことだよね?)
「(やっぱり見間違いじゃない…… 知り合いだ…… はぁ……)」
「(えっ!? もしかして付き合ってるっすかっ!?)」
「(オデェ!?)」
「(……)」
「(それはない。ただ、嘘をついているんだ)」
「(嘘っすか?)」
「(オデェ?)」
「(……っ)」
「(大丈夫か?)」
「(す、すいません。だ、大丈夫です。が、頑張ります)」
「(みんないるから安心っすよ?)」
「(オデェ!)」
(まだ一人の方は元気なさそうだけど、大丈夫なのかな?)
「お前達! 準備はいいか!?」
「「「「 ニー!!!! 」」」」
「前から順番にコードネームを授ける! シンシ! チョリ! バグ! オデ!」
「「「「 ニー!!!! 」」」」
「(俺はシンシか…… ふふっ 社会派紳士としては最高のネーミングだな)」
「(チョリ-ッス! チョリっす!)」
「(ぼ、僕、無視されてたから…… そ、それで…… バグにして、も、もらったんだ…… ハハッ)」
「(オデェ…… オデ?)」
秘密結社サイアークの戦闘員ニーターさん達を眺めていると、エロちゃんからお呼びがかかった。
「待たせたエロね」
「うん」
「ふっ どこからでもかかってくるがいい」
「いくエロ! 変身! ヤンキー魔法少女エロ!」
「うん!」
「……」
「……」
「……何も起こらないけど?」
「……こないだはエロ、初回限定版で魔法使いまくって変身させたエロ。だから今回からちゃんとした手順を踏むエロ」
「……うん」
するとエロちゃんは先ほどのように何かを高速で呟き、小さい魔方陣を手のひらに展開する。その小さい手のひらに浮かび上がってきたのは、お父さんの会社で見たことがあるタイムレコーダーだった。それとタイムカードが一枚。そこには藤堂麗華と名前が記載されていた。
「この魔法タイムレコーダーに、このタイムカードを入れるエロ」
「……うん」
言われるがままに、タイムカードをタイムレコーダーの上から差し入れた瞬間、私の身体が光に包まれていく。
(すごい! 光が私を支配してっ!?)
気がつくとこないだの特攻服を着ている。胸の部分はサラシである。なんだかとても恥ずかしい。
「そこで叫ぶエロっ!?」
「や、ヤンキー魔法少女! 見参っ!?」
「おー エロ (パチパチ)」
「……」
「(……)」
「(……)」
「(……バタッ)」
「(……バタッ)」
(えっ!? 二人がもう倒れちゃった!?)
「ま、魔法少女よ…… あ、ありがとう…… い、いや…… ありがとうございます!」
「え?」
「(なぁ…… あの娘さぁ…… 中学二年生なんだけど…… まだ……)」
「(そんなもんすよ! 個体差があるっすよ!)」
「(は、はだか…… ふ、婦女子の…… は、はだか……)
「(オデェ…… もう死んでも…… オデェ…… 女神様オデェ……)」
「え?」
「なにしてるエロか!? 今がチャンスだエロ!」
「で、でも……なんで二人倒れちゃったの? そ、それに、サイアークさんがありがとうございますって……」
「気がつかなかったエロか?」
「……うん」
「変身する時に一時的に全裸になってたエロ」
「えっ!? いやぁーーー!?」
「駄目エロっ!? 気合いを入れ続けてエロっ!?」
「いやぁーーー!?」
私は恥ずかしさの余り、公衆便所にダッシュし引きこもった。
(なんで? なんで私がこんな目に…… うぅ……)
するとエロちゃんが私に声を掛ける。
「麗華ちゃんエロ」
「……」
「大丈夫エロ。あいつらを倒した暁には、記憶すらも吹き飛ばしてあげるエロ」
「……ホント?」
「本当エロ。それくらい任せるエロ」
「……絶対?」
「絶対エロ。エロは魔法の国で最高の魔法士エロだエロ!」
「……うん」
「理解してくれて嬉しいエロ。麗華ちゃんエロ? 今はものすごい魔力がエロから流れ出てしまっているエロ。だから気合いを入れてくれないと困ってしまうエロ」
「……うん。分かった。記憶を抹消させる為に本気になる」
「お願いエロ」
(でも…… みんなの前に出るの恥ずかしい…… 全部…… 見られちゃったんだよね…… うぅ……)
「わ、私は何も見ていないぞっ!? ヤンキー魔法少女よっ!?」
「ありがとうございますって言いましたよね?」
「うっ……(バタッ)」
「「「「 ひっ!? 」」」」
秘密結社サイアークの首領であるサイアークさんの鳩尾に一発綺麗なのを入れた。私はヤンキー魔法少女として絶大な力を持っている。そしてそれは世界平和の為に使うのではない。彼らの記憶を抹消する為にあるのだ。
「並んで下さい?」
「「「「 いやぁーーー!? 」」」」
「うっ……(バタッ)」
「「「 いやぁーーー!? 」」」
「うっ……(バタッ)」
「「 いやぁーーー!? 」」
「うっ……(バタッ)」
「 いやぁーーー!? 」
「うっ……(バタッ)」
「エロちゃん?」
「ひっ!? エロっ!?」
「出来るよね?」
「で、出来るエロっ!? ま、ちょ、待って!?」
「早くね?」
「サー!」
タイムレコーダーとタイムカードを出した時のように、魔方陣を展開する。今回は指先にだ。その展開された魔方陣を脳へ直接入れ込むようにしている。
「お、終わったエロ」
「終わった?」
「終わったエロ! 本当エロ!」
「終わってないよね?」
「終わったエロ! 本当エロ!」
「まだ終わってないじゃない? ね?」
「え、エロ?」
「エロちゃん? 見たよね?」
「エローーーっ!? 嫌ぁエロっ!? こんな魔法式の魔方陣を脳内にブチ込みたくないエロっ!?」
「じゃあ……物理的に忘れさせてあげるね?」
「え、エロ? うっ……(バタッ)」
そうして秘密結社サイアークとの今回の戦いは、幕を引くことになるのであった。
★ 次回 最悪!? 悪の幹部だゲハラドさん! 前編 ★