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Bloody I  作者: ライト
8/9

絶望への足音

 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

ミオの絶叫が響き渡る。僕はガールフレンドとしてミオの肩に手をかけ、落ち着かせる言葉しかかけることができなかった。

「赤眼殺しなんてしなければ、こんなことにならなかった!」

「先代の起こしたことを責めたところでどうにもならない!」

「シュレンは分かってないの!何も分かってない!」

「分かるよ…。僕は特待生だから」

「どうせ政府のコネでしょ!」

「それは違う!ちゃんと勉強したんだよ!これでも」

そんな言葉は今のミオには全く耳に入っていないようだ。そしてついに彼女は近くにあった先端が鋭く尖った瓦礫を手に取った。

「もう…。嫌だ…」

そう言うと彼女は先端を自分の胸に向けた。今から彼女は自殺する気だとすぐに分かった。

「おい、バカ!」

僕は咄嗟に彼女の頬を叩いた。一度は倒れて横になったが、すぐに体勢を戻し再び先を向ける。

「シュレン…。邪魔しないで…」

震えた声でミオが言った。僕は一か八かの賭けに出た。彼女の後頭部を瓦礫で殴った。するとミオはそのまま倒れた。幸い息はしている。僕は一瞬の安堵感に駆られたあと、彼女を抱え病院へと向かった。

 政府管轄の病院。そこには現在、誰も入院していない。政府の人間が入院するときにしか使わない部屋を特別に使わせてもらった。

「大変だったようね」

「はい。で、ミオの状態は?」

「あなたの話から考えると、彼女は錯乱状態に陥ってしまったのでしょう。それもかなり深刻な。シオンという名前の女の子による精神攻撃などで彼女は耐えきれなくなり、あのような行動を起こしたのだと考えられます」

ブルネッタ女医は淡々と述べる。もっと早くミオの異常に気付いてあげていれば。そんなことを考えてしまう。

「このまま、あんな状態になることは?」

「ないとは言い切れないですが、普通にしていれば元のミオさんには戻るでしょう」

「言い切れない?」

「ええ。少なくともシオンさんには会わせないほうがいいでしょう」

「そこまでミオは…」

「今だって両足両腕を手錠で固定しているみたいですし」

「何だって…」

僕は初めて聞いたことに驚いた。四肢を固定しなくてはならない理由があるのか?

「どうしてそこまで」

「彼女の精神崩壊は私たちも経験したことがないレベルです。目を覚ましたとしても、すぐに鋭利な物あるいは紐みたいなものを探して自殺を図る可能性が高い。ですから念のため」

「そんなに酷いんですか…」

僕はさらに自分を責める。そして彼女をそんな状態になるまで追い込んだシオンを許せなくなっていた。

「ですから、しばらくシュレンさんは―」

ブルネッタ女医がそう言おうとした時、病院内に絶叫が響き渡った。

「ミオの声…」

僕は診察室を飛び出し彼女の寝ている病室へと向かった。彼女はベットの上で暴れていた。

 「今すぐあいつを殺して私も死ぬ!あいつを絶対に殺してやる!」

「落ち着けミオ!」

僕はミオの上に乗っかった。そして彼女の腕を押さえる。それでもなお彼女は暴れようとする。

「うるさい!私は生きてる意味がないの!置き土産としてあいつを殺すの!だから離してよ!」

「すべての罪を背負うつもりか?それは間違ってる!」

「間違ってない!何もかも全部私が!」

僕はとうとう彼女の頬を殴ってしまった。それも三回。

「ミオをこんな状態になることに気付けなかった僕が悪いんだ…。そしてこんなことになるまで追い込んだシオン。僕は彼女が憎い…」

ミオは僕が殴ったことによる困惑のせいか目を開いたまま何も言わない。

「だからミオ、もうそんなことは考えるな」

僕は彼女の手を強く握る。元のミオに戻ってくれ。その一心だった。

「い、痛い…」

ミオのか細い声が聞こえて僕は彼女の上から

降りた。僕の体重が腹部にのしかかっていたんだ。しかも3発も頬を殴ってしまった。無理もないだろう。よく見ると彼女の目からは涙がこぼれていた。どうやら正気に戻ったのだろうか。

「ご、ごめん。つい…」

「痛い!」

ミオは声を張り上げて叫んだ。そして今度は執拗に左腕だけを激しく動かした。外見では特に異常は見られないとなると内部で何か起こってるのだろうか?そう思っていた時ブルネッタ女医が病室へやって来た。

「左腕が痛いって…」

「レントゲンで確認しましょう」

ミオの左腕をなるべく触れないように手錠を外し、彼女を背負った。走ってレントゲン室へ向かい、彼女を台へ乗せた。彼女は苦しそうな表情を崩さない。僕は部屋を出て廊下のイスに腰掛けた。

「やっぱ、僕が悪いのか…」

僕は俯き、小さい声で呟いた。そして自分の太ももを何度も叩いた。ミオの次は僕が精神崩壊しそうな気がした。でも崩壊する訳にはいかない。たとえミオが言う『監視のため』だとしても、彼女のガールフレンドなんだ。今彼女を支えられなくてどうするのさ。そう自分に言い聞かせた。そうしていると足音が聞こえてきた。その足音は次第に大きくなっていく。そして廊下しか映し出さなかった僕の視界に黒い筋が割り込んできた。

3.29をもって19歳となりましたライトです。10代ラストイヤー、楽しく生きていければなと思います。

さて、ミオの精神崩壊と身体の異変という不穏な空気が流れ始めた今回。はたしてミオはどうなってしまうのか。そしてその現実をシュレンは受け入れることができるのか、次回はそんなお話。もう10話まで書き進んでいますが終わりがまだ見えないですね。20話以内で完結させたいですけど…。

pixivでも小説投稿を始めまして、そちらに載せる作品と同時進行となるので、今回は多めにみて5月上旬までには投稿したいと考えています。9話はちょっとアレな表現があるのでこれ載せちゃって大丈夫なのかなと今現在不安なので9話の査定及び書き直しをしてますね。

もしダメなら表現に規制を加えたうえでの再投稿になると思います

ではまた次回。

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