008 VS大角鹿(1)
ストックが・・・
今回、短めです。
魔の森の来た当初目撃した、俺的森の化け物筆頭3種。
それは、四手熊、大角鹿、角縞蛇。
当時はLVを見る事も出来なかった相手だ。
四手熊は、手が四本ある巨大な熊。
ヒグマを一回り大きくして、手を増やした感じの魔物だ。
一度、うっかり手をだして死にかけたことのある相手でもある。
大角鹿は肉食の巨大なヘラジカ。
鹿といっても、体格は熊のように分厚い。
そして、よく(凶化)や(暴走)をしている。
メンタルが不安定な危険な奴である。
角縞蛇は角付のアナコンダ。
但し、胴の太さはアナコンダの2倍はあるだろう。
そして巨体にも関わらず、身を隠すのが非常に上手い。
この中で、四手熊だけは今もLVを見ることが出来ていない。
だが、最近の成長のお蔭で、他の2種はレベルが確認できていた。
『大角鹿 LV36』
『角縞蛇 LV34』
勿論、個体差があるだろうから、もっと上のLVの同種や逆に弱い同種がいる可能性は高いけど。
今までの経験を踏まえると、LV差が15以上あると、簡易鑑定ではレベルが???と表示されるようだ。
このゲームじみた世界では、格上であればあるほど倒した時の成長率が高い。
そして、俺の周囲には既にこの三種しか格上の相手がいなくなっていた。
モンスター配置のバランスが悪すぎると、文句を言いたい。
ちなみに、この周囲にいる魔物では、奴ら三種の他で一番LVが高いのは
『牙猪 LV18』
これも個体差があるけどLV20を超えることは無い魔物だ。
しかも、こいつを狙おうとすると、とにかく奴ら三種に出くわす。
そのたびに逃げている。眼中にないのか、距離を取れば追われることは滅多にないけど。
迂闊に近づくと、おやつ感覚でぱくりとされそうになるが、近寄らなければ狙われない。
シロの場合は、狙われまくるのが不思議だけど。
そういう遭遇を繰り返している内に、俺は大角鹿だけは倒せる可能性があるのではないかと思うようになった。
獲物がいないなら、いる場所に行けばいいと思うかもしれない。
だが、それが簡単にできない理由がある。
今、俺がいるのは魔の森の一角だ。
体のサイズが腕一本分しかない俺にとっては、十分広い場所のつもりでいたのだが。
実際は、この場所は吹き溜まりのような狭い場所でしかなかった。
シロに騎乗することで、いろいろな場所に楽に行けるようになって周囲の地形を把握することができたのだ。
北側・・・切り立った山で塞がれている。唯一通れそうな狭い場所は四手熊の縄張りというか、洞窟の一部。
南側・・・断崖絶壁。通行不可
西側・・・木の密度が薄い。山と断崖に挟まれており通行可能な場所が大角鹿の縄張り。
東側・・・木の密度が濃い。密林という言葉がぴったりくる。ここは角縞蛇の縄張り。
という訳で、この吹き溜まりから外に出るためには大角鹿を倒すしかないのだ。
こっそりと抜けることができればいいんだけど、シロがいるからそれは無理。
なにせ、俺と違ってシロは大人気である。主に捕食者に。
幸いなのは、通路となりそうな個所を縄張りにしているのが大角鹿だということだ。
何度か遭遇を繰り返している内に、俺は大角鹿だけは倒せる可能性があるのではないかと思うようになっていた。
しかも、安全にだ。
うまくいかなくても奴は鹿もどき。偶蹄類は木には登れない。
いざとなったら、俺はシロを連れて樹上に逃げればいいのだ。
それに対して、角縞蛇は、むしろ樹上が生息圏。
樹上では移動がおぼつかないシロを連れて逃げられる相手では無い。
それに密林の先がどうなっているかも判らない。
そちらに進むのは自殺行為だ。
大角鹿でも俺にとってはLV差のある格上の相手であることは間違いない。
しかし、今の俺は遠距離での攻撃手段─投槍─がある。
それに、大角鹿の性格を考えれば…
勝算は十分にある。
これが上手くいけば、大角鹿はむしろ狙い目のボーナスモンスターになるだろう。
そうなるといいなあ。
ということで、俺はシロの背中に乗った。
持つというか、腕で巻きつけて保持しているのは自家製の槍。
槍と言ってもあまり長くは無い。
投擲用の槍だ。
槍の先端には、黒曜石の破片を取り付けている。脆いのが難点だが、投げて使うので最初の一撃だけに効果があれば十分だ。
それを5本用意している。
そして、向かうは丘の上。
何度も通っているので、シロの足取りに迷いは無い。
背中に腕が生えた犬が走っていくって、よくよく考えるとシュールだ。
まあ、その腕は俺なんだけどね!
この辺りを縄張りにしている大角鹿の居場所は判っていた。
丘の下に広がる林。
魔の森の名前には似つかわしくない密度の低い木々が生えている地域。
そこが、奴の縄張りであり狩場なのだ。
俺は最後の準備に取り掛かった。
力が足りないなら知恵を使う。これこそ人の持つ武器なのだ。
準備をして大角鹿が現れるのを待つこと2時間。
俺の気配感知が大角鹿の気配を感知した。丘の下を見る。
奴がいた。
鷹の目のお蔭ではっきりと姿を見ることができる。
冗談のようなサイズ・・・体高2m体長5mを超えた巨大肉食鹿。
日の当たり加減によっては金色に見える薄茶の毛皮。
頭にある巨大な角。
俺のような小生物の事など、眼中にないだろう。
だが、これからは狩の時間だ。
我が力を受けて見よ!
…いかんいかん、緊張のせいでテンションがおかしい。
ここは慎重にいかねば。
もう一度脳内(あるかどうか疑わしいけど)で、手順をシミュレートする。
武器を確認。手元にある3本の槍。
少し離れた所で待機しているシロ。
周囲には、こちらに興味を抱いていそうな他の魔物はいない。
うん、問題無い。
失敗したら逃げるだけだ。俺の背後には、大角鹿の体当たりでも持ちこたえられる筈の大木があるのだ。
俺は槍を構えた。
そして合図を出す。
俺の合図を見て走り出すシロ。
行き先は大角鹿。
こうして、俺達の大角鹿狩は始まったのである。
次回で決着。