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007 取ってこい

「それ、シロ、とってこいっ!」

「うぉんっ」


 俺が投げた木の棒を、シロが追いかけていく。

 木の棒は勢いよく真っ直ぐに飛んでいき、目標にしていた木の幹に命中した。

 そして地面に落ちた木の棒をシロが咥えて戻ってくる。


 うん、大分上達をした。これらならそろそろ実戦に使ってみてもいいだろう。

 満足する俺の横で、シロは、早く投げて投げてと云わんばかりに尻尾を激しく振っている。

 まだまだ遊びたい盛りなのだ。

 俺はもう一度、木の棒を構えて投げる。

 それを追うシロ。

 結局、日暮れ近くまでこの遊びを兼ねた訓練を繰り返すことになるのだった。

 

 

 シロを拾ってから、一か月が経過した。

 拾った時と比べると、体の大きさは3倍くらいに成長している。

 子犬が育つのは早い。

 良く食べ、良く眠り、良く遊ぶ。くうねるあそぶが揃っているせいだろう。

 そして、俺もシロもレベルが順調に上がっていた。

 

 今はさらに工夫を重ねようと、最近はいろいろと準備・訓練に励んでいる。

 ちなみに、現在の俺のステータスは、

 

 

『個人名称:ユンデ 種族名称:不明キモい

 レベル 21 HP242/242 MP50/50

 状態:正常


 [固有能力]

 疑似感覚、疑似生命、簡易鑑定、剛力、固着、動物固着


 残スキルポイント:1

 [受動スキル]

 自動回復(小)、柔軟、気配感知、頑強、伸縮、鷹の目、変形

 [能動スキル]

 身体強化、擬装、回復、回復(他)、鋭い爪、平たい爪』


『取得可能受動スキル

 必要スキルポイント1

  気配探知、強靭、烏賊の目


 必要スキルポイント4

  自動回復(中)


 必要スキルポイント8

  分離』


『取得可能能動スキル

 必要スキルポイント2

  身体操作、擬態、鎌の爪、穴掘り

  

 必要スキルポイント4

  回復(複)』


 新しく取得したスキルは平らな爪と変形。

 平らな爪も取得したので、スキルポイント1の能動スキルもコンプリートしてしまったことになる。

 スキルポイントがLV毎に1ポイントしか入ってこない事を考えると、この先のスキルはどれを伸ばすか検討しないといけないだろうなあ。

 どうやら、上位スキルを獲得するために必要なポイントは倍々になっているようなのだ。

 最終的にはスキルポイントが足りなくなるだろう。


 さて、この平らな爪。

 以前、鋭い爪とどちらを取得するかを迷っていたスキルだ。

 結局、武器になりそうな鋭い爪を先に取得したのだが。

 もっと早く取っておけば良かったと思っている。


 このスキルを使用すると、親指を除いた指が一体化し、スコップのような爪になるのだ。

 鋭い爪ほど攻撃力は無いのだが、これでも立派な武器になる。

 さらに、こいつのすぐれた所は道具代わりに使えることだ。

 たとえば、爪の形状通り穴を掘るためのスコップとして使ったり、先端の刃のようになっている個所を利用して木を削ったりすることができる。


 現在、俺達の隠れ家は木の上から地上の穴に変わっている。

 これは シロがでかくなったため樹上での生活が難しくなったのが原因で、このスキルを使って木の根元に空いていた穴を掘り広げて安全な隠れ家を造り上げることができた。

 

 そして、消費MPは鋭い爪と同じMP6なのだが、持続時間は倍近くある。

 一度使うと6分近く持つのが素晴らしい。

 連続使用すると、一時間以上使用し続ける事も出来る。

 効果時間切れは前回の失敗で懲りているのだ。


 そして、受動スキルの変形。

 必要スキルポイント4のこのスキルは、伸縮の上位スキルだ。

 このスキルを取ると、体を更に伸ばせられるようになった。

 ただし、伸ばしかたは伸縮と違う。伸縮の場合は、腕の太さがそのままで長さだけが伸びていたが、変形の場合は伸びた分だけ腕が細くなっていた。

 というより、腕を細く変形させた分の体積だけ腕が伸びるというべきかな。

 指一本だけ伸ばすこともできるし、腕を螺旋状に変形させることもできる。

 とにかく自由度が上がったのだ。

 

 さらに便利なことがある。

 平たい爪を発動した時に、変形の効果で爪の部分のサイズを自由に変化させることに気付いたのだ。

 つまり、爪の部分をスコップサイズから、ノミサイズ、彫刻刀サイズまで自在に変化させることが可能となったのである!

 つまり、俺の手は刃物限定の工具セット。

 これで、道具を作ることが簡単に出来るようになったのだ。

 それで早速作ったのが、槍である。

 以前、木の棒を槍のように使おうとして挫折したことがあるのだが、今度は長さもばっちりと邪魔にならないサイズに調整したうえ、余計な枝なども全て払った真っ直ぐな棒を造り上げ、さらに先端には溝を掘って黒曜石の欠片を嵌め込んだ。

 細かい細工が出来たのは、彫刻刀サイズにまで変化させた平たい爪のお蔭である。

 

 また、槍を持つと移動する時に邪魔になるという問題も解決した。

 LV20になった時に自動取得した固有能力の動物固着。

 こいつの効果は、今まで木や地面にしかできなかった固着を、動物相手にも出来るようになることだった。

 つまり、俺はシロに固着して背中に乗ることが出来るようになったのだ!

 肩口でしっかりと固着できるので、手でシロを撫でることもできる。

 俺を乗せても、シロは問題ないほど成長していた。

 

『個人名称:シロ  種族名称:森犬(変異種)

 レベル 15  HP180/180 MP15/15

 状態:正常

 特性:従魔

 残スキルポイント(付与分):1

 [付与スキル] 

頑強、自動回復(小)、気配感知、身体強化


 [固有能力]

 嗅覚、早足、持久力向上


 [受動スキル]

 搭載』


 シロもLVアップしている。

 俺から付与できるスキルに用いるスキルポイントは、どうやら2LV毎に1ポイントのようだった。

 MPが少ないので、受動スキルを中心に付与している。

 そして、シロが固有能力と受動スキルを持っていることも判明した。

 以前は、ここまで判らなかったのだが。

 ある日、シロのブラッシングをしていると、いきなりインフォメーションが流れたのだ。


『従魔:シロの親愛度が上昇しました。

    開示情報が増加します』


 そして、シロの事をもっと知ることができるようになったのである。

 この先、親愛度が上昇したら何か起きるのだろうか。

 俺とシロの間の親愛度が下がることはないだろうから、きっと何かあるのだろう。

 楽しみだ。

 

 シロの固有能力や受動スキルが、森犬という魔物共通の物なのか、俺の従魔となった影響なのかは判らない。

 固有能力が森犬共通で、受動スキルがシロという個体専用の気もしている。

 だって、受動スキルの搭載って


『搭載:生物を背中に乗せても、制限重量を超えない限り、運動能力の低下が発生しない』


 どう見ても、馬とかの能力で犬の能力じゃ無い。

 きっと、シロが俺の為に取得してくれたのだ。さすが、シロ。

 可愛いだけじゃなくて気も使える。

 

 こうして武器と機動力を手に入れた俺が次に目指しているのは、長距離での攻撃である。 

 伸縮と変形で遠間の距離を攻撃できるといっても、所詮数メートル。

 LVアップのためには自分と同じくらいか上のLVの相手を倒した方が良さそうなのだ。

 つまり、より強い相手を倒さねばならないのだ。

 しかもできるだけ安全に(ここ重要)


 人間と動物の違いは、遠距離攻撃能力の有無だ!


 俺が、今も人間かどうかと言われると自信が無いけど。

 そういうわけで、俺は格上の魔物を相手にするために投槍を使うことにしたのだ。

 弓とかはさすがに無理。

 

 投槍を使おうと思うようになった切っ掛けは、シロと遊んでいる時だった。

 犬と遊ぶ時の基本の一つ、”取ってこい”。

 シロも大好きな遊びだ。

 小さい時は、何かを転がすだけでよかったのだが、大きくなるにつれて物足りなさそうになっていくシロ。

 それを見て、俺は一念発起して遠くまで棒を投げる訓練をしたのだ。

 棒を投げるだけで訓練が必要なのが、今の腕だけの俺の状態だったのだ。

 何しろ、何かを遠くまで投げるという行為は、人間の体があったからこそできる動作である。

 左腕だけの生物である俺には、物を投げるための方法から考案する必要があったのだ。

 

 そして、訓練と思考を重ね、遂に俺は遠くまで物を投擲する方法を身に着けたのだ。

 

 その方法は

①固着で地面に肩口を引っ付ける。

②棒を掴んで後方に腕を伸ばす。

③腕を縮ませながら、撓るように腕を振り、最後に腕を伸ばして加速させる。


 というものだった。

 スリングと投石機を合わせたような投げ方だな。

 これに、身体強化を発動させると、槍を100m以上飛ばすことが出来る。

 もっとも、最初はどこに飛ぶか判らないので大変だった。

 主に棒を探すシロが。

 今では、50m以内なら90%以上の確率で狐程度の的になら当てることが出来る。

 特訓をしながら、シロと遊ぶこともできたので飽きることも辛くなることもなかったのが幸いしたのだろう。我ながら素晴らしい成果だ。

 

 これなら、いけるだろう。既に作戦も立てている。

 今回、俺が狙うのは、今まで手出しが出来なかった森の怪物の内の一匹。

 大角鹿である。

フリスビーでも面白いですよね。

齢を取ると相手にしてくれなくなりますけど…

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