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魔装姫の歯止め役  作者: sirumero
第一章 ~六個目の魔装~
8/13

ローザと買い物

さて始まりました第一章。これからもよろしくお願いします。




夏休みが、終わりに近付いている、ぜ………。

歯止め役(ストッパー)になってから三日が経った。

この家に住むにあたっての注意事項をラーズから教えて貰い、それを守りつつ平和(?)に暮らしている。

注意事項の一つ目。 絶対に魔装に触らない事。触れたら最後、毒に汚染されて魔装姫--男だから魔装王かもしれないが--になってしまうらしい。

二つ目は、誰かの部屋には居る時はノックする事。下手に着替えの現場に遭遇するとどうやら天国を見る事が出来るらしい。ローザとは部屋が繋がってるからうっかりしない様に気を付けないといけない。

三つ目は、お風呂の時間を守る事。普段から女子しかいなかったせいで、入浴時間などは無かったのだが、俺が来た事により作ったらしい。朝、昼、夕、晩とそれぞれで時間を分けてくれている。

…ちなみに、お風呂は地下にあり、しかも温泉だ。快適だが、時間帯を間違えると天国ry。


「う~ん…」

「ん、どうしたんだ?」


台所でラーズが唸っていたので声を掛ける。どうやら、腕を組んで冷蔵庫の中身と睨めっこしているようだった。


「いやね、食材が切れて来たのよ」

「あぁ…。 悪い。 食い過ぎてたか」

「いや、お腹いっぱい食べないと辛いだろうから咎めないけど」


前から知ってる事だが、ラーズは優しい。初対面の時は能面被った殺人鬼かと思ったが。


「でも、これじゃ今日の夜はご飯抜きになっちゃうなぁ…」

「まぁ、この中で一番町に出入りしやすいのは俺だし、行ってくるけど…」


ナーザから貰ったお金は結構使ったけど未だに三万程残っている。こっちの世界はそこまで物価が高い訳じゃないから、これだけあれば取り敢えず一ヶ月はなんとかなる。この家の貯蓄分も含めると、数年は生きていける。


「うーん…。 やっぱり働かないとお金は入らんか…」

「当たり前でしょ…」

「行くついでに仕事でも探してくるかな…」

「…解ってると思うけど、帰ってこなかったらローザが貴方を--」

「解ってるから…」


ローザが目を覚ました日以来、凄く懐かれてしまったのだ。まだ三日しか経っていないが、前の日はどうなってたかと言うと…。

まず朝起きると、何故かローザが馬乗りでこっちをじーって見てる。この時点でいろいろおかしいと思う。

朝食は隣の椅子に座って、可能な限りこっちに近付いてこようとする。朝食から昼飯の間は模擬戦やら部屋でごろごろやらしてたから割愛。ついでに言うと昼飯も朝食同様だ。

その後は特にする事も無く部屋で休憩してたりするのだが、その時も何故か常に近くにいる。………手を伸ばせば届く距離に。

挙句の果てに、お風呂に入ろうと誘ってくる始末。そこは他の魔装姫達に事情を説明して協力して貰い、なんとかローザをお風呂まで引きずって行って貰った。俺はその後、皆が上がった後に入った。

そして、寝る。以下ループ。

と、このような事情からあまりローザは俺と距離を作りたがらない。試しにこっちから距離を置いてみたのは今日の朝だが、恐ろしい事に魔装を突きつけて「………どうして、私から距離を取るの? ………どうして? どうして?」と虚ろな瞳で、さらに無感情な声で応えるまで永遠と尋問された。あれは、怖かったな…。

以上の理由で、下手にローザから距離を取る事が出来なくなったのだ。実は、会話に参加してないだけで今も俺の隣でぼーっとしている。


「んじゃ、俺は食材買い出しとついでに服でも買ってこようかな…。 俺のコート血まみれのボロボロになってたし…」

「それが良いんじゃないかしら。 私達の服はあるし…」

「なぁ、それどうやって手に入れたんだ…?」


気になった事を聞いてみると、隣にいたローザがポン、と肩に手を載せてラーズの代わりに答える。


「………知らない方が、良い事も、ある」

「お前ら何やったんだーっ!?」

「でも、これからは貴方がいるからあんな事しなくて済むから」


絶対ロクなことしてないな、と思いつつも準備を整えて家から出ようとすると、ローザが当たり前の様について来ていた。


「ローザ…? ………あ、そうか。 ローザって町には行った事が無いんだっけ」

「ん、そうなのか?」

「………ん。 行った事無い…と言うか、皆が行かせてくれなかった」

「………」


何となく、皆の気持ちが解った。欲しいものを力尽くで手に入れると言うローザを町に連れて行くのを躊躇っても仕方が無い事だ。


「うーん。 俺がいれば大丈夫なんじゃないか?」

「………多分」

「そうか。 ハジメが連れてってくれれば、皆町に出れるんじゃ…」

「複数は止めてくれ…」

「解ってるわ。 今回はローザね」

「………ん。 準備してくる。 ………先に行ったら、どうなるか解ってる?」

「解ってるから…」


その返事に満足したのか、ローザは部屋に駆けて行く。その間に、ラーズからメモを渡された。

暫くして戻ってきたローザは、なんかいろいろと違った。目の色とか、格好とか。


「目の色は青で、フード付きコートね…」

「………あれ、驚かないんだ」

「目になんか入れてんじゃないのか?」

「………うぅ、驚かせようと思ってたのに」


しょんぼりとするローザを連れて外に出る。

…今更だが、此処は森の中と言うより、森の奥地にある家だ。来る手順を間違えると、森の前に戻されるという謎の結界が張ってある。どうやら、魔装が関係しているようだが詳しくは教えて貰えなかった。

町までの道のりは、ワザと手順を間違える事によって瞬時に森の前に出る事が出来る。


「………わぁ。 広い平原…」

「此処にも来た事無かったのか?」

「………殆んど家から出てなかった」

「なるほどな…」


ローザに「あれは何?」と質問されるので、それを解る範囲で答えながら歩いていると、直ぐに町が見えて来た。

ローザはフードを目深に被り、背中に背負っている魔装の片刃剣シングルセイバーをしっかりと背負い直す。


「あ、そういや、この子誰って言われたらどう答えればいいんだろうか…」

「………お嫁さん?」

「なんか違うと思うぞ?」

「………恋人?」

「それも違うと思うぞ?」

「………むぅ」


なんか、不機嫌になった気が…。なんか機嫌を取る様な事を言わないと、この後が怖い…!


「そ、そうだ。 妹で良いんじゃないか?」

「………妹? 妹…。 ………うん。 良いよ」

「よし、ならそれで行こう」

「ん」


ふぅ…。なんか良く解らんけど機嫌は直ったな。フード被ってるから良く見えないけど、若干覗く表情は至福の笑みが広がっている。

町に入る。見周りの騎士がいたが、特に何も聞かれることなく町には居る事が出来た。…ただ、背負っている剣は見ていたが。


「…そういや、なんでそれ持ち歩いてるんだ?」

「………魔装の毒に冒されてから、これを遠くにやる事が出来なくなったの。 具体的には、近くに無いと体調不良になったりする」

「ほえー。 そんな事もあるのか、面倒な…」

「………ほんと、迷惑」


そんな会話をしながらも、買い物は着々と進んでいく。持ってきた鞄の中が食料でいっぱいになる。

全て買い終わったので帰ろうかとローザに言うと、


「………ハジメ。 服、忘れてる」

「あ…」


自分で言って忘れるとか、悲しくなって来るな。

前にも言った衣類の店に入り、今度は赤茶色のフード付きコートを購入。それを羽織って外に出る。


『魔装姫だぁ!!』

「「っ!?」」


俺たちに向けられた言葉では無かったが、その声に、思わず俺もローザも動揺してビクリと反応してしまった。

読んでいただき、ありがとうございます!


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