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魔装姫の歯止め役  作者: sirumero
プロローグ~魔装姫の歯止め役になるまで~
7/13

魔装姫の歯止め役

*ラーズとナーズを間違えていた部分を修正しました。ややこしい事をしてしまい、申し訳ないです…。

そして、『~魔装姫の歯止めになるまで~』から『プロローグ~魔装姫の歯止め役になるまで~』に変えました!

そして、この話無駄に長いですが、最後まで読んで頂けると幸いです!

暗い空間にいた。

実体は無く、意識だけがこの空間にいる様だ。思考は出来るが、声は出せない。

…あれ、何があったんだったっけ?確か、魔装姫の…そう、ローザを背後から斬り裂こうとしていた騎士の攻撃をローザの代わりに受けて…。あぁ、その前に勘違いしたローザの攻撃くらったっけ…。あれは痛かったなぁ…。

で、此処は何処かと言う事だが、多分【世界の狭間】とかいう場所だろう。だって、右側に元居た世界、【地球】の映像がある。左側には、二刀流で戦うローザの映像が映し出されてるし。

恐らくだが、どちらかに意識を飛ばすことで、そちらに行く事が出来るのだろう。

普通、小説やゲームの主人公は、異世界に飛ばされるとなんとかして元の世界に戻ろうとする。…まぁ、それが妥当だろう。大切な家族に、友達。または、恋人などがいるからだ。

…だが、俺が行く道は考えるまでも無く決まっていたが…。


--左の映像に意識を向ける。そこには、必死の表情で騎士達を惨殺するローザの姿。右手に自分の魔装である片刃剣シングルセイバー。左手に俺の片刃剣シングルセイバーを持ち、襲い来る複数の騎士を殺して行く。

…ぶっ飛ばせって言ったのは俺だけど、幾らなんでもやり過ぎじゃあないだろうか。まぁ、魔装姫の皆を守るためなんだろうから、仕方ないか。

その、魔装姫の皆を思い浮かべる。


一人目はラーズ。最初に一度会ったっきりだから良く解らない事が多い少女だ。ひょっとしたら、他の魔装姫達とは違って俺と話していても落ち着かないのかもしれない。なにせ、最初っから殺しに掛ってきたくらいだし。

…でも、もし、彼女も少しでも楽になるという可能性があれば?


二人目はリーファ。言えば魔装姫でも解ってくれると確信を持たせてくれた少女だ。話している時は別に殺そうとしてこなかった所を見るに、彼女も話していて本能的な思考からは解放されていたのだろうか?


三人目…、いや、三人目と四人目はネロウとフーザ。あの二人が、話していて落ち着くと教えてくれた。…まぁ、最初っから誤解して話をする間もなく攻撃されたのは抜きにしよう。その後、名前を教え合う程には警戒を解いてくれていたようだし…。


そして、五人目はローザ。今、騎士を全て殺し、重い身体と剣を引きずりながら、恐らく家に向かって歩いている。彼女は、一番魔装の毒に冒されているらしい。だが、それでもネロウとフーザの言っていた事に同意する様な気配は見えた。

俺の身体がローザが戦闘していた場所に無いのは気になったが、あえて思考から除外する。


…さて、此処まで思い浮かべて、俺は何を思う?十七歳、唯の学生が、何を思う?唯の学生が、どうにかできる問題か?なにせ、魔装姫は常に騎士団に狙われる様な存在なのだから。多少技術があるだけの俺が、どう干渉出来る?

一つだけある。魔装姫と、その相手になる者の間に割り込むのではなく、魔装姫に割り込めばいいんだ。

ネロウは話していて落ち着くと行った。殺す気は起きないとも。

なら、俺の立ち位置はもう決まっている。この世界で生きるには、この選択をしなければ恐らく後悔するだろう。

五人の少女を、切り捨てる事は俺には出来ないからだ。

なら、俺が武力行使をしないための--。


歯止め役(ストッパー)になってやる!」


今まで出なかった声が出て、身体の感覚が戻る。

チラリと背後の地球の映像を見る。そして、一言。


「じゃあな」


俺は迷う事も無く、左の映像に飛び込む。これで、恐らくあっちの世界に戻れるはずだ。…めっちゃ重傷負ってるだろうけど。



波に揺られるような感覚。まどろみの中にいるのか…。


「うっ…」


身体に走った痛みに思わず呻く。い、痛い…。

目を開けると、知らない部屋にいた。…うん。実によくある展開だ。近くに誰かいたりだとかは…無いな。

ボロボロになった灰色のコートを包帯代わりにして止血したらしい。代わりに、制服の上が掛けられている。


「薄暗いな…」


取り敢えず立って、最初に思った事がそれだった。明かりが無いのだ。窓から差し込む太陽の光だけが部屋を照らしているのだろう。

………太陽であってるのか?良く似た別の恒星って可能性が。

窓から外を見上げていると、背後で扉が開く音がした。


「うん? 起きたんだ」

「えーっと、ラーズだっけ?」

「リーファかネロウかフーザかローザが教えたのね」

「もう俺を殺そうとはしないのか?」

「ローザを助けてくれたらしいからね」


ネロウが説明してくれたの、と補足しながら部屋に入ってくる。

…そうか。取り敢えず、「この前はよくも! 野郎、ぶっ殺してやらぁぁ!」とかならなくて良かった…。


「…なんか、失礼なこと考えてない?」

「気のせいだろ」


これが良くある女の勘と言う奴か。…恐ろしいな。


「…で、貴方はこれからどうするの?」

「どうする選択肢があるのかをまず教えてくれないか?」

「そうね…」


暫く俯いて目を閉じる。十秒くらいそうやっていたかと思うと、不意に顔を上げる。


「此処の事を忘れて帰って貰うか、此処に拉致されるか、かな」

「…なぁ、その一つ目の物騒な選択肢ってなんの意味が…?」

「帰って騎士団に言われたら面倒くさいんだもん」


冷や汗が流れる。一体、どんな方法で記憶を消すというのだろうか。


「あ、ちなみに記憶の消し方は--」

「解った。 その巨大なハンマーを見ただけで何をするのか解った」

「あらそう」


つまらなさそうにハンマーを直すラーズ。一体、何処に出し入れしているのだろうか…。


「で、どうするの?」

「…ん、取り敢えず他の奴とも話をしたいんだが」

「あー…。 うん。ローザ以外ね」

「なんで?」

「あの子、まだ起きないの」

「それって、あの後帰って来てからってことか?」


無言で頷くラーズ。

なるほど。…まぁ、二刀流って無駄に神経使うからなぁ。


「それじゃ、行こっか」

「あ、そうだ。 行く前に一つ」

「何?」

「魔装姫って、下手に人と話してると本能的に殺したくなる…であってるっけ?」

「…ん。 そうだね」

「じゃあ、俺と話していてどうだ?」


そこでラーズはキョトンとした様な顔になり、続いて物珍しそうな顔になって答える。


「不思議ね。 特に殺したいという衝動は出て来ないわ。 それに、理性的な判断もできる…気がする」

「なるほど」


これでラーズも若干だが効果がある事が解った。

…というか、なんで俺だと魔装姫にこんな症状が出るんだ?謎だ…。


「もしかして、これからそれを確認しに行くの?」

「あぁ。 それによって回答をしようかと」

「…一つ、聞いておくね。 もし、一人でもそうならなかった場合は?」


もし一人でもそうならなかったら。そんなの簡単だ。俺がいて、殺人衝動が出るのなら俺が此処にいる意味は無い。

だから--。


「痛いの我慢して記憶無くして帰るよ」

「…そう」


まぁ、そんなことないと思うんだけどなぁ…。あの時の反応から察するに、だが。

どうやら、一軒家でもかなり大きな家らしく、複数の部屋があり、さらにリビングまであった。流石に此処には電気が付いている…が、どうやって電気を送っているのだろうか。

まずはリビングに訪れる。そこには、フーザがいた。


「フーザ」

「あら、ラーズ。 そしてハジメさんもおはようございます」

「おう。 で、時間掛けるのもなんだからさっさと聞いとくが、お前は俺と話していて殺人衝動は湧くか?」

「まだハッキリとは言ってませんでしたね。 ネロウとローザと同じように、特に殺人衝動は起きません。 ネロウと同じで、寧ろ落ち着きます」

「アタリ、ね」

「そうだな」


ラーズに続いてフーザもどうやら俺といても大丈夫らしい。後はリーファに確認するだけで済むのだが…。


「あれ、お兄さん起きてる」

「ネロウか」

「やっほー」


リビングに入ってきたのはネロウ。軽く挨拶をしてくる事から、特に殺そうと思っていない事は何となく伝わってくる。


「ネロウ。 貴方はハジメさんと話していて、他の人と同じような衝動が出ますか?」

「前にも言ったよね。 起きないって」

「なら、いいのです」

「なになに? もしかしてお兄さん、此処に住むの?」

「あのハンマーで殴られたくないからな…」

「あー…」


ネロウは一瞬で察したらしく、顔を青くする。


「ふふっ。 ネロウって、アレで叩かれた事あるものね」

「あれは、痛いよ。 本気で」

「…? 貴方をこれで叩いた記憶は無いけれど…」

「「え?」」


ラーズが不思議そうに、巨大なハンマーを取り出す。それを見たネロウは気絶。フーザは真っ青で固まっている。


「何やってるの? ネロウ虐め?」

「人聞きの悪いこと言わないで」


緑髪の少女がリビングに入ってくる。時間が解らないが、集まりだすという事は昼くらいだろうか。


「あ、あの時の…」

「そ、そうだ。 あの時ボロボロで帰ってきたって聞かされたんだけど、大丈夫だったか…?」

「うん? あれは帰り道、追われてないか後ろ向いた時に思いっきり木にぶつかって、フラフラしてたら足を踏み外して小さな崖から落ちただけだよ?」

「「えぇぇ!?」」


気絶しているネロウ以外はその衝撃の事実に驚いている。なるほど、リーファをボロボロにした記憶が無い訳だ。


「で、さっきからなんか魔装姫である私達に聞いて回ってるみたいだね?」

「あ、あぁ…」

「私も聞いてたけど、答えは起きない、だよ」


ふむ…。となると後はローザだけだが、起きないのならば仕方が無い。ローザ以外は大丈夫なんだから、此処に止めて貰おうか…。


「ローザは、貴方を心配していたようだから多分大丈夫だと思うけれど…って、ちょっと待って………」


ラーズが気絶しているネロウを引きずって、リーファとフーザを連れて俺の傍から離れる。…ひそひそ話だろうか。…あ、ネロウが起きた。


『…ねぇ、もしかしてローザに同じ効果があるなら、あの子もこれで落ち着くんじゃない?』

『『『な、なんだってーっ!!』』』

『よし、そうと決まれば早速拉致監禁!』

『フーザ。 それは駄目よ。 仮にもローザを救ってくれたんだから』

『なら、願うしかないのね…。 ローザ、お願いだから…』

『『『『衝動が起きないと言って…!』』』』


…あ、戻ってきた。なんか、凄い晴れやかな笑顔なんだが、どうしたんだろうか…。


「さぁ、ローザの部屋に行きましょうか。 ひょっとしたら起きてるかもしれないし…」

「「「賛成!」」」

「お、おう…」


一体何があったんだ…?気持ち悪いくらい晴れやかなんだが…?

そんな事を考えている内に、ローザへ部屋--どう見ても俺の寝てた部屋の隣の部屋--の前に連れて来られる。


「様子を見てくるわ」


ラーズが扉を開けて中に入る。俺とネロウとフーザとリーファは外で待機だ。

一分位でフーザが顔を出す。


「起きてるから、入って良いよ」

「「「はーい」」」


魔装姫の皆は抵抗なく入って行くが、俺は足を止めてしまう。何故か?…女子の部屋とか、入った事無いから緊張するからだ。


「ん、どうしたの? ローザが待ってるよ?」

「あ、あぁ…。 行くよ…」


ラーズに呼ばれ、若干抵抗がありながらも部屋に入った。そこにはまさに今起きました、と言う顔のローザとそれを囲み、起きた事を喜ぶ魔装姫の少女達がいた。

…良かった。俺がぶっ飛ばせって言って、それでローザが死んでたらそれは俺の責任だ。


「………あ、ハジメ」

「よう。 無事そうでなによりだ…」

「……それは、こっちのセリフ。 せめて、私の剣だけでも避けてくれれば良かったのに…」

「あのスピードの突きとダッシュで、どう避けろと?」

「………むぅ」


話している分には大丈夫だろう。特に殺そうと言う意志は伝わってこない。

そこで、ネロウが恐る恐るローザに尋ねる。


「ねぇ、ローザ。 貴方は、お兄さんと話していて他の人と同じ衝動を感じる…?」

「………感じない。けど(、、)

「「っ」」


一斉に息を呑む。別の衝動が起こってしまうのなら、それはそれで意味が無い事だ。


「…なんだかよく解らない気持ちになる」

「そ、それって」 「不快な」 「気持ちに」 「なる事…?」


なんか四人の魔装姫さん達がリレーの如く質問をする。だが、その答えは俺も知りたい事だった。

はたして、ローザの回答は--。


「………うぅん。 不快、じゃない」

「「はぁ~…」」


その場にいた全員で安堵の息を吐く。俺も同様だ。


「…さて、皆に対する質問は聞き終わったけど、どうする?」


何かを期待するような声色でラーズが尋ねてくる。声には出していないが、他の皆も期待の眼差しを向けてきている。


「えと、皆が良ければ、ここにいたいとと思う。 んで、魔装姫の本能的衝動の歯止め役(ストッパー)になろうと思うんだが…」


これで、彼女達の期待に応えられるかどうかなんて解らない。ただ、自分の思った通りの事を言う。

すると、周りの皆は安堵と驚きの表情になり、最終的には笑顔になった。

…むぅ。最初は感情の無い魔装姫だと思っていたラーズも笑っている。普通に笑えるんだな。


「………私は、いいよ」

「私達も、問題ないわ」


ローザとラーズが代表して言ってくれる。そして、ラーズがとてもいい笑顔で、もう一言付け加えてくる。


「ローザをよろしくお願いね」

「「………え?」」


俺とローザはキョトンとする。


「あー。 前にも言ったよね、ローザが一番毒されてるって」

「あ、あぁ…」

「だから、簡単にいえば私達よりも一段と考え方が単純なの」

「………酷い」

「だから、ローザをよろしくね。 部屋に関しては--」


何処からともなく取り出した斧槍ハルバードで、綺麗に扉の形に壁を切り刻む。


「これで問題ないでしょ? あ、貴方の部屋はそっちね。 こっちがローザ」

「………別に、私は文句ない」

「………どうせ文句言っても、此処から放りだされるだけなんだろうから何も言わないよ」

「それじゃ--」


その先言う事は読めていた。だから、俺も一緒に言う事にする。ローザも苦笑いしながらも息を吸って--。


『これから、よろしく!』


こうして俺は、魔装姫の歯止め役(ストッパー)になった。

プロローグを全て読んでいただき、ありがとうございます!

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