長剣と大鎌の魔装姫
大鎌から大鎌に変更しました。
うん。カッターってなんかおかしいもんね。
歯止め役になるまでは、だいたい出来ているので、このペースで投稿して行くと思います。と言ってもあと二、三話くらいだと思います。
「………んっ。 寝てたのか…」
結局あの後、森から抜ける事が出来ずにうろうろしていたが、体力が無くなって木を背もたれにして休憩していたのだが、そのまま眠ってしまっていたようだ。
「さて、と…。 取り敢えず、森から抜けないとな…」
立ち上がり、辺りを見渡してみる。うん、やっぱり知らない所だ。
「やれやれ、どうすりゃいいんだか…」
取り敢えず歩く。歩いていたらその内何処かに出る事は確かだろう。
そう言えば、今まで戦った魔装姫って、この森の奥に逃げて行ったよな。まさか、この周辺に家でも有るのか…?
「………ん?」
なんか周囲から気配がする気が…。でも、見渡しても誰もいないしなぁ。
気配の事はおいといて、森の中を歩く事にした。一応、行く先々で目印は付けてきているのだが、夜になれば効果を発揮しない。なんとかして夜になるまでに森から抜けるか、広い場所に出たい所だ。
だが、歩けど歩けどあるのは木、木、木。一向に森から抜けれる気配が無い。
「ふぅ…。 いい加減疲れて来たな…」
せめて魔装姫の一人でもいてくれたら道が聞けそうなんだけどなぁ…。ま、会ったら戦闘は確実なんだろうけどな。リーファとか言う奴も狙ってきたし…って、広い場所に出たな。
「………おぉ」
その場所だけ木が生えてなく、真ん中に小さめの湖がある。何とも素晴らしい光景だ。携帯かカメラがあったら写真を撮る事は必須だな。無いけど。
「はぁ…。 もう疲れた…。 運動しとけばよかったかなぁ…」
思い浮かぶのは、つい最近までの地球での日常。毎日学校に行って授業を受け、特に何もせずに家に帰りゲーム、小説に没頭する日々。…うん。この世界では気を付ける様にしよう。
…そう言えば、あっちの世界では俺はどうなっているのだろうか。失踪したとか、誘拐されたとか言われてるのだろうか。まぁ、親があんなんだから、誰も心配はしてないだろう。
「あ、でも、剣道の大会で打ち合ったあいつは心配してるかもなぁ…」
大会の後、メールアドレスと番号の交換をしたのを思い出す。こっちから連絡は一切しなかったが、相手の方から何度も連絡くれたっけな…。あぁ、そう言えば何度か遊びに誘ってくれたっけな…。
「あーもー…。 会いたくなって来るじゃないか…」
こんな事を思うのは久しぶりかもしれない。
そうやって感傷に浸っていると……。
「「………呼んだ?」」
「うおぉぉぉ!?」
急に掛けられた声に飛び上がりつつも振り向く。そこには黒髪黒眼、金髪碧眼の少女がいた。ま、まさかさっき感じた気配ってこいつらだったのか…?
「何処まで行くのかと思ったよ…」
「そうね。 このまま行ったら私達の家だものね」
「………」
マジでこの森に家があったのか…。
「で、お兄さんはこんな所まで何の用かな?」
「道に迷った」
「「えっ」」
なんか盛大に驚かれた。
「普通にしてたら迷ったりしないでしょ?」
「あぁ。 リーファとか言う魔装姫を追いかけてたら迷った」
「リーファを、追いかける…?」
「あれだけボロボロにしたのに…?」
「え? そんなボロボロになってたか? 俺が最後見た時は普通に--」
「「えぇい、問答無用! 成敗!」」
「うぉっと」
うん。考え方が単調だ。こいつ等は、「リーファをアレだけボロボロにしたのに、さらに追撃のために追いかけた」と思っているのだろう。
だが、決して俺はリーファをボロボロになどしていない。だって、最期逃げて行く時、服は破けてなかったし、特に怪我をしている様子も………あ、でも鼻血は出てたな。
「お、おい! 落ち着け!」
「「うるさぁい!」」
「ひぃぃっ!」
頭上を通り過ぎる湾曲した刃。紙一重で突き出される刃を横っ跳びでかわす。黒髪黒眼の少女が持つのは大鎌。金髪碧眼の少女が持つのは長剣。
…うん。長剣はまだ解るよ。ナーズが使ってたから。でもさ、大鎌なんぞ誰も使ってなかったぞ…?
「えぇい、リーファの敵!」
「え!? あいつ死んだのか!?」
「勝手に殺すなぁ!」
どうやら生きているらしい。焦った…。もし死んでたら俺も自殺するところだったよ…。
というか、避けてばかりじゃ埒が明かない。荷物と一緒に置いていた片刃剣を手に取り、構える。その時、一瞬だけ二人とは違う気配を感じた様な気がした。が、直ぐに目の前の二人に視線を合わせる。
呼吸を整え、集中力を高める。最大限意識を向けるのは、長剣と大鎌。
中でも、一番注意すべきが大鎌だ。軌道によっては避けずらいし、何よりも刃を止めることが難しい。仮に止めれたとしても、逃げる方向が限定されてしまうのでそこを長剣でやられるのは確定だ。
「………っ」
振り抜かれる大鎌その軌道は左斜め下から、右斜め上。個人的にだが、何とも避けにくい位置だ。おまけに、背後から殺気を感じる。避けた所を狙うつもりだろうか。
大鎌の刃は槍の様な柄から、湾曲する様に伸びている。ならば、前に進めば刃は当たらない。
「う、おぉ…!」
「「なっ…!」」
流石に予想外の行動だったのか、二人が驚きの声を上げる。前に進めば長剣のリーチと、大鎌の刃逃れられる。だが、引き戻されたら終わる。
だから--
「よっと」
「くっ!」
相手の背後に回る。こうする事で引き戻すと、斬れるのは自分だけだ。大鎌は中距離武器だから、相手する時は近距離に持ち込めばいい。…これぞゲームで得た知識。
「これは、ますます捕獲--」
なんか不穏な言葉が聞こえた気がするけど気のせいだろう。こんな少女が捕獲なんて言葉を使う訳が無い。
それよりも、今は目の前の大鎌使いだ。
「くらえっ!」
「ぐ、あ…」
柄尻の部分で鳩尾あたりを狙って全力と手抜きの間の力で打つ。すると、堪えたのかその場に蹲る。
「ネロウっ!」
「余所見してんなよ!」
「しま--ぐぅ…」
同じ用法で、長剣使いも無力化する。後、どうでもいいけど黒髪黒眼の大鎌使いはネロウって言うのか。
「「うぅぅ………」」
二人して蹲って涙目で此方を睨んでいる。…無力化とはいえ、やり過ぎたかな?
「っつぅ…」
何時の間に斬られたのか、左腕から血が出ていた。鞄をあさり、念のために買っておいた包帯で止血する。
「あぁ、なんでこんな疲れてる時にさらに疲れる様な事をしなきゃいけないんだ…」
可笑しいな。俺、魔装姫に恨まれる様な事したっけ…?
「う、うぅ…。 ごめんね、皆。 私達は此処まで…」
「おい。 別に殺したりしないから。 帰り道教えてくれればそれで良いから」
「教えなかったら?」
「自力で帰る」
「「………殺さないの?」」
「お前ら馬鹿か?」
「「馬鹿じゃない!」」
なら、なんで殺さないかくらい解れよ…。
「いいか? 俺は、お前等を殺した所でメリットは無い。 なのに、何故殺す必要がある?」
「え? 騎士の差し金出来たんじゃないの?」
「いや、魔装姫の話を聞いて会ってみたくてうろついてたらリーファに会って、それで追いかけたら迷って此処に」
「嘘、吐いて無い?」
「いや、吐いてどうする?」
怪しげな眼で此方を見つめ続ける二人。警戒心がヤバいな。まぁ、元から俺を倒しに来た奴だしな…。
「まぁ、取り敢えず名前だけ言っとくか…。 俺はハジメって言うんだ。 …よろしく、は可笑しいよな」
「…私は、ネロウ」
「私はフーザです」
やっと少し警戒を解いてくれたのか、言葉にトゲは感じられなくなった。
「………私は、ローザ」
「っ!?」
真後ろ。それこそ後一歩で密着するくらいの近さから新た名前が出てきて驚く。
「………ハジメ。 ずっと、貴方と戦ってみたかった」
そこにいたのは、最後の魔装姫。ローザと名乗った、赤髪赤眼の片刃剣使いがいた。
本小説を読んでいただき、ありがとうございました。