マネキン野郎
チャリ置きに向かって歩いていた。
ここからは校庭も、職員室も、プールも見えない。
あるのは寂れたゴミステーションと、ボロボロになったそれぞれの部活の備品、そして猫の死骸だけだった。
今日は、すげえ暑い。
ギラギラした6月の太陽と、西の方には裏に天空の城があるんじゃねーかっつーくらいの入道雲。今日も夕方、ひと降り来そうな感じ。洗濯物とっとと片付けなきゃな、俺はそんなことを考えていた。
中学からずっと愛用してるマイカー、赤チャリのハンドルを握る。
今日も1日長かった。
そんなことを考えてチャリ置きから離れようとしたそのとき、俺の目にあるものが留まった。
あ、脚だ
ゴミステのゴミの山に、脚が見える、
白くて、細いー…。
俺はチャリを止めて、その脚に近づいていった。
やっぱり、脚だ。
ゴミ袋とゴミ袋の隙間に、脚が挟まっていた。太ももからつま先に掛けて、緩やかなカーブを描くように、刺さっていた。脚が。膝下までの、紺の靴下を履いている。靴は見当たらない。
人形…かな?
俺はそれを抜いてみようと、足首にあたる部分に手をかけ…
られなかった。
脚が、動いてそれをよけた、のだ。
そして掴もうとした足首の下の、膝の、さらに下の太ももの、そのさらに下から、ゴミが、むくむく、むくむくと動き始めた。
…生きてやがる…!人形…!
そして…
「ふ、んあああああああああああ」