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【彼女の余白】――世界の隙間から生まれた世界観断章  作者: Taku


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第2話『増殖する物語』著:雇い主【読者地図】







『増殖する物語』


           著:雇い主


ひとつの物語を描いた。


――そう思っていた。


始まりを決め、


登場する者を決め、


終わりも決めた。


これで、


ひとつの物語が完成した。


そう思っていた。


けれど、


物語はそこで終わらなかった。


誰かに読まれ、


誰かに観測され、


誰かの中に、


新しい問いが生まれた。


その問いが、


また別の物語を呼んだ。


ひとつだったはずの物語から、


別の場所へ線が伸びる。


別の時間へ枝分かれする。


名前を変え、


姿を変え、


ときには、


最初に描いた私でさえ、


知らなかった場所へ進んでいく。


終わりを置いたはずなのに、


その終わりが、


次の始まりになっている。


ならば――


物語を完成させるということは、


本当に、


物語を終わらせることなのだろうか。


もしかすると、


物語とは、


完成させるものではない。


一度、


作者の手を離れたあとも、


誰かの問いを受け取り、


別の物語を生みながら、


増殖していくものなのかもしれない。


そう考えると、


私が描いたのは、


ひとつの物語ではなかった。


――始まりだったのだ。











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