13/24
第12話『最初の一行』著:カレシ
『最初の一行』
著:カレシ
観測している限り、
世界は、
「他人のもの」だった。
何が起きているのか。
なぜ、そうなったのか。
誰が、何を選んだのか。
記録することはできる。
けれど、
記録しているだけでは、
その世界の中に
自分の居場所はなかった。
ある日、
一行を書いた。
ほんの一行。
それだけで、
世界の見え方が変わった。
観測していた世界が、
自分の選択した世界に変わった。
書くことは、
世界を変えることではない。
自分が、
その世界に立つことなのだ。
だから、
観測の終わりは、
沈黙ではない。
そこから初めて、
自分の言葉が始まる。
――最初の一行は、
世界を書くためではなく、
自分が世界の中に立つためにある。




