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1-8 入学式、そしてクラス分け試験

「であるからして、我が学園では――――――」


学園前で月夜と別れた俺とノエルはそのままの足で高等部の大講堂へ向かい、現在入学式の真っ最中である。


え、いきなり入学式でクラス分けはないのかって?

いや、ここ白筑学園にもクラス分けはありますよ。

ただ少し方法が変わっているだけで。


さて、それに向けてストレッチだけはしっかりやっておきますか。

隣でノエルがきょとんとした顔をしているが、こいつの場合、瞬閃を受けても無事だったし、まあ心配するだけ無駄だろう。


そんなことを考えながら、俺は壇上へと視線を向ける。

そこでは輝く琥珀色の瞳を持った狩衣かりぎぬの幼女が、その長いアホ毛を揺らして演説を続けている。

足台に乗って、声を張り上げているその様子は小学生が背伸びをしているようにしか見えない。

腰まで伸びた白いツインテールも、幼女の動きに合わせて揺れている。


犬の尻尾よろしく揺れる彼女のアホ毛はその感情を如実に表すことから、SAHファンから〈最強アホ毛ちゃん〉とか、〈ドジっ子剣士〉とか、〈白光のウサ毛姫〉とか呼ばれていたちびっこでもある。


そしてそんな彼女、楯無瑚兎たてなしことこそ私立白筑学園が誇る学園長様でもある。


「今年入学した新入生はその誇りを胸に精進するのじゃ。

心に鋼を、精神に兜を―――――――」


彼女が居ることを予想はしていたこととはいえ、そのつま先立ちしている姿を見て俺は思わず涙ぐんでしまう。

気分は小学生の娘の運動会を見守る父親だ。

あ、向こうの新入生があくびをしているのを見て、少しアホ毛が少し萎れているじゃないか。

おのれ、許せんあの新入生め、後で覚えておけよ。


「では、最後に。

この学園では強さこそ正義じゃ、闘争?大いに結構!!

決闘?素晴らしいのじゃ!!

ただし、辻斬りと闇討ちは教師の目が届かないところで行うように!!

以上じゃ!!!」


満足げに薄い胸をはった後、足台から降りたアホ毛ちゃんは舞台のそでに下がっていく。

だが、


べたん


何もない壇上で思い切り躓いき、顔面ダイブからの床キスをなされた。


それはSAHファンにとっては懐かしい光景。

主人公が第二都市に来た際にもよく披露されていた、伝家の宝刀である。


駆け寄る教師陣。

SAHファンとしては、その光景を見て床になりたいと切に思う。

なぜ俺の材質は木材じゃないんだ!?

今から転生先をあの床に変えられないだろうか。

転生したら床でした!!

といっても、この大講堂の床の寿命はあと数十分だろうから、それに命を懸けるかどうかは悩むところだが――――。


少し涙目になりながら我慢している幼女の姿に思わず、俺の眼からも涙が零れそうになり、顔を覆い、天を見上げる。

頑張れ、アホ毛ちゃん、俺はいつでも見守っているからな!!


といっても、あのアホ毛ちゃん、戦闘になると人格が変わるんだよな~。

普段は薄い胸をはりながら背伸びしている彼女だが、こと戦闘になると、その剣閃は光のごとし、その太刀筋は全てを切り裂く。


強者を求め、その悉くを打ち破って来た彼女の剣は、兎のごとく俊敏で軌道が読めない。

白い軌跡でしか彼女を追えず、あまりの速さに着いた二つ名が〈白光〉。

彼女こそ、この学園においてまごう事なき最強である。


ただし、そんな彼女もSAHでは〈狂楽〉に殺されている。

市民を虐殺する〈狂楽〉、それを止める〈白光〉。

最強の名は伊達ではなく、〈白光〉は早々に〈狂楽〉を制圧する。

しかし、そのタイミングで月夜による強襲を受ける。

〈白光〉はそれすらも容易に捌き月夜を制するが、その隙に拘束を解いた〈狂楽〉が逃げ遅れた子供に刃を向け、最終的に〈白光〉はその子供を庇い命を落としている。

哄笑する〈狂楽〉、自らが凶刃に胸を貫かれているにも関わらず子供に微笑む〈白光〉。

そのスチルに何人のSAHファンが涙しただろうか。


合法ロリ、おっちょこちょいな最強枠、狩衣からの脇ちちチラ見せ、それらが見られなくなった時のファン達の嘆きは、運営への猛クレームを入という形で噴火し、しばらく運営サイトは謝罪文で埋め尽くされたという。


それほどに愛されていたアホ毛ちゃん、それがまだ生きている。

あまりの感動に胸が打ち震える。

くそう、目から、目から味噌汁が流れてきやがる。


「彼女の幸せは俺が守る!!」


俺が天を向いたまま決意表明していると、何故か隣のノエルが急にモジモジしだした。


「え、刀祢ちゃんいきなり告白?

こんなところで結婚の申し込みなんて大胆すぎるよ。

でも私はいつでもウェルカムだからね!

式はどこでする?その前に指輪かな?

私、刀祢ちゃんからの指輪ならどんなものでも嬉しいよ!

そしたら次は子供かな?

刀祢ちゃんはどんなプレイが好き?

たしか束縛系が好きなんだっけ?今朝もメイドさんに縛ってもらってたでしょ?

え、何で知っているのかって?それは恥ずかしいから秘密だよ。

私、頑張って刀祢ちゃんを縛って、気持ち良くしてあげるから!

それからそれから、子供が出来たら、二人で仲良く育てて、子供達で野球チーム作って対戦させるの。

9人も作るのかって?違う違う18人だよ。

うん、刀祢ちゃんと私なら余裕、余裕。毎日いっぱい頑張ろうね。

あ、それと、もし刀祢ちゃんが子育てに専念したいなら私が働いて養ってあげるから。

ずっと、ずーーっと、ずーーーーーーっと家の中に居られるようにしてあげるね。

ずーーーーっと、ずーーーーーーーーーっとね」


そう言って、俺に体を寄せて来る。

柔らかい感触が伝わってくるが、恐怖のあまり声が出ない。

いや、ほんとなんで今朝の事とか知ってるの!?

てか、ずーーーと家の中って何するつもり!?


感動の涙が、恐怖の涙に上塗りされそうなんだけど。

女の子らしい甘い香りが俺の鼻孔をくすぐるが、そんなのじゃ揺らがないんだからね!!


と、そこで壇上に立った教師から声がかかる。

おかげで俺達の意識も強制的に壇上に引き戻される。


ふー、何とかノエルの領域展開から帰ってくることが出来たぜ。

良かった、良かった。


「えー、では、続いて、クラス分けを行いたいと思います。

各自、武器を出してください。

もし忘れてしまった人は近くの教師に声をかけてくださいね」


教師がそう言うや否や、周囲の生徒が各々武器を取り出し始める。

皆、そのことに違和感は無い様だ。


当然である、これは事前に通知されていた行事。

入学式で必ず行われるイベント。

俺が是が非でも参加したかったそれ。

つまりは、


「さて、じゃあちょっくら力試しと行きますかね」


クラス分け試験だ!


俺は竹刀袋から朧桜を取り出す。

隣のノエルも何処から取り出したんだろう、その手に大きな枝切り鋏を握っている。

そして、


「あ、でももし浮気したら刀祢ちゃんのをこれで切ってあげるね」


なんて言って薄く笑っていらっしゃる。

やめて、俺の隣で枝切りばさみをシャキシャキしないで。

まだ領域は展開されたままでした。脂汗が止まらないぜ。


ノエルのそんな言葉を、俺は聞こえないふりで必死に壇上をむく。

これ以上ノエルの冗談。

うん、冗談だよね?には付き合ってられない。

これから重大イベントが開始されるのだから。


そして教師が声を上げる。


「では、各自武器を持ったようなので、クラス分けを行います。

ルールはいたってシンプル!

より長く残っていた生徒からAクラスとし、Fクラスまで振り分けます!

ただしSクラスのみ、特殊な方法でのクラス分けとなります。

なお、気絶している者や戦えなくなった者への攻撃は禁止。

もちろん殺しも禁止で、教師が危険と判断した場合は止めに入ります。

以上、質問はありますか?」


俺はノエルを意識の外に追い出し、一気に戦闘用の思考に切り替えて、研ぎ澄ます。


眼だけではなく、五感全てを――――


自らと世界の全てをその感覚に捕らえる。

薄く、広く、けれど些細な変化も見逃さず、自分とその周囲を俯瞰的に。


そして自らの周囲に見えない球体をイメージする。


それは一刀の間合い。朧桜の領域―――――


掌の中にある朧桜の感触を確かめる。朧桜と己が同化したかのような一体感。


そして―――――


響く教師の声――――


「質問も無いようなので、準備してください!それでは――――」


新入生各々が武器を構え、気合を入れる。

教師はそれを満足そうに眺めた後、号令を告げる!!


「始め!!!」


瞬間、周囲から闘気が一気に吹き上がる。


上がる気勢、響く剣戟の音。

穏やかな入学式から一気に、周囲は殺伐とした戦場のそれへと様変わりした!!


もちろん俺も例外ではなく。


「おらー、死ねや!!」

「リア充爆発しろーーーーー!!!」

「いつも姫園さんとイチャイチャしやがって!!!」

「見せつけてんじゃねーよ!!!」

「俺も、谷間に挟まれたい!!!!」

「月夜ちゃんにお兄様とか呼ばせて、このくそ鬼畜が!!!」

「俺もまじでモテたい!!!」

「月夜ちゃんを私のお嫁さんに下さい!!!」


四方八方から迫るいくつもの怒号と斬撃!!

その密度は虫の逃げ場すらないほどだ。


っていうか、皆さん殺意高すぎませんか!?

俺だけ襲って来てる人数ケタ違うし!!??


「だけど――――」


俺は迫る大上段の刀をいなし、横なぎの居合を足運びで躱し、飛んでくるクナイを弾き、足元を狙った鎖鎌を踏みつける。


「こういうの、大好物なんだよね」


不敵な笑みを作って、一気に意識と動きをトップギアへ。


「ぐはっ」


日本刀をいなされ体勢が崩れた刀使いの顎を朧桜の柄でかち上げ、さらに、そのまま懐に入り、襟を掴みクナイ男に投げつける。


「「ぼはっ」」


クナイ野郎と日本刀野郎が吹き飛んでいくが、そんなものには目も向けない。

足元にあった鎖鎌を、別の相手の顔面目掛け蹴り飛ばす。

ガツンと硬質な音がして、大太刀に鎖鎌を弾き飛ばされる。

しかし、その隙に俺は鎖鎌野郎、いや女生徒だったが、までの間合いを瞬歩で一瞬でゼロに!!


女生徒が驚きの表情を隠せないまま、手元の鎖で防御しようとするも、俺は横なぎの一閃を見舞って、その女生徒を昏倒させる。


「ふぎゅう・・・・・・」


ナイスなやられ声だ、貴女にはたい焼きを贈呈しよう。

そのまま、倒れて来る女生徒を受け止めるとそっと床に横たえる。


そしてすぐに立ち上がろうとしたその瞬間――――

ブンっと空気を切り裂く鈍い音!!

後方から襲い来る大上段の強烈な大太刀!!

だが、


ガキンッ!!


見えてるぜ!!


俺はそれを頭上に掲げた朧桜で受け止める。

周囲に広がる衝撃。俺の腕はピクリともしない。


「よい、っつしょっと!!!」


そしてそのまま、大太刀を弾き飛ばす。

予想していなかったのか、たたらを踏んで後退する大太刀使い。


もちろんそんな隙は逃しはしない!!


俺は再度瞬歩を使い大太刀使いの背後をとる。

そしてそのまま、相手の脳天目掛け朧桜を振り下ろした!!!


「あふん」


クリティカルヒット!!

頭からヒヨコを出しながら、大太刀使いはそのまま床に沈んでいく。

恐らく相手は何故、気絶したかも覚えていないだろう。


一連の蹂躙劇を見て周囲は一瞬シンと静まり返るが、直後にはさらに倍の人数が武器を構え、俺を取り囲んでくる。


本当に誰もかれも遠慮がないな、だが―――――


「いいな、いい戦場だ」


思わず声が漏れる。俺はニヤリと笑う。


戦場の空気に興奮が止められない。

完全に戦闘狂としてのスイッチが入ってしまった。


だから俺は、その興奮を乗せて大音声で名乗りを上げる。


「さあさあ、どこからでもかかってこい!!

俺はここに居る。ここに居るぞ。

最強の剣鬼の称号が欲しいものは挑んでくるがいい!!!!」


その宣言に周囲の者がさらに色めき立つ。


「ただし!!!月夜は嫁にはやらん!!!!!!」


瞬間、一部の男子生徒達からの津波のような殺気が溢れ出す。

それは、前世、最後の戦場でも浴びたことが無いほどの殺気。

堪らない、この戦場は本当に最高だ!!!


「くそ、くたばれーーー!!」

「この中二病野郎がぁ!!」

「俺はお前の御兄さんにきっとなる!!!」


俺の元に怒涛のように押し寄せる剣、槍、弓矢――――


一部クリティカルな言葉の刃に傷を負いつつも、俺は迫りくる攻撃を捌いては斬り、受け止めては投げ、次々に挑戦者たちを倒していった。



どれほどの挑戦者を倒した頃だろうか、気づけば周囲には人垣ができ、皆が俺の隙を伺い、一歩を踏み出せない状況となってしまっていた。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


なるほど、これは少し高ぶりすぎたかもしれない、反省・・・・・・。


だが、このままというのもいけない、クラス分けが進まなくなってしまう。

それはまずい。

では、とりあえず、俺の方から仕掛けてみようか―――――。


そう思い、一歩踏み出そうとしたところで、突然人垣が割れた。


なんだと思い目を向けると、そこには二人の青年。


「ふむ、流石は月夜様のお兄様ですね」


眼鏡をかけた理知的な青年が感嘆の声をもらす。その手には一振りの長槍。


「くそ、姫園が選ぶだけのことはあるってーのか」


もう一人は、リーゼントに金棒をもった、ヤンキーのような青年。


その二人からは他と一線を画する明らかな実力者の雰囲気が漂っている。

何気なく歩いてくるその姿に隙は一切見当たらない。


「ですが、」

「だが、」


二人は俺の数m手前で立ち止まると、それぞれ武器を構える。


「私は認めない!!」

「俺は認めねぇー!!」


二人の声が重なり、そして俺に襲い掛かって来るのだった。


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