― エピローグ ―
【勇真・モノローグ】
気づけば、俺の人生の真ん中にはいつもあいつがいた。
がむしゃらに走って、転んで、また走って。
そんな俺を、黙って見ていてくれた。
(子供のころ、川で溺れかけた幼馴染の手を掴んだ。その子が、いまじゃ俺の妻だ――)
言葉にすると、大したことじゃない。
だけど俺の青春なんて、その一言で全部説明できる。
俺は、あの日の手を離さなかった。
そしてこれからも離さない。
凜の手も、この古びたペンダントも。
俺の想いも、過去も未来も。
――絶対に、離さない。
【凜・モノローグ】
あの日、私は流れに呑まれていた。
冷たくて、怖くて、声さえ凍りついてしまうようで。
世界が薄れていく中で――ただ一つ、暖かいものがあった。
掴まれた手。
大きくて、力強くて、必死で。
あの瞬間から、きっと私は救われていたんだと思う。
(子供のころ、川で溺れた私の手を掴んでくれた幼馴染。その子が、今の私の夫……)
言葉にすれば、たったそれだけ。
でも私にとっては、あの一瞬が人生の向きを変えてくれた。
ずっと見ていた。
転んでも前に進もうとする横顔。
人のために駆ける背中。
その背中を、私はいつも追いかけていた。
すれ違って、遠回りして、泣いて、笑って。
ようやく、また隣に戻ってこれた。
胸元のペンダントは、今も小さく輝いている。
願えば叶うって信じていたけれど――
勇真が教えてくれた。
願いは、掴みにいくものだって。
あの日のぬくもりも、今抱えている想いも、そしてこれからの未来も。
私は絶対、勇真の手を離さない。
この古びたペンダントも。
――何があっても、離さない。




