表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星願未遂 ふたりの長いものがたり リマスター版  作者: つくね


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/52

― けじめ ―


 「売ろうと思ってるんだ。このバイク」

 春の風が強く吹く夕方、ガレージの前。

 勇真が、ふいにそう言った。


 大切に乗っていたバイクだってことはわかっていた。暇さえあればバイクの洗車をしていた。

 理由は言わなかったけど、私はすぐにわかった。

 わたしにとっては麗華さんと勇真の想い出が詰まったモノ――

 勇真は一度もわたしを乗せようとはしなかった。

 わたし――知らず知らずのうちに、態度に出てたかな――


 たぶん――

 私に思い出させたくないのかもしれない――

 彼女の影を感じさせないように。


 優しい嘘。

 誰のための嘘か、分かってしまうから、そんな彼が愛おしかった。


 「そうなんだ」

 それだけしか言えなかった。

 止める理由も、責める気持ちも、なかった。

 むしろ、彼がそこまでして私に向き合おうとしてくれていることが、痛いほど伝わってきた。


 私は少しだけ、ずるい女かもしれない。

 彼がまだ、完全には彼女を忘れられていないのだろうということは、薄々感じていた。

 バイクを手放したって、記憶まで消えるわけじゃない。

 でも、それでもいいと思った。


 勇真が、私のために過去と距離を置こうとしてくれている。

 そのやり方が、不器用でも、少し無理をしていても――

 私はその気持ちだけで、十分だった。


 「もし、またバイク乗るなら、次は一緒に選ぼうね」


 そう言うと、勇真は一瞬だけ驚いた顔をして、すぐに笑った。

 それは、麗華さんの記憶ではなく、私に向けられた笑顔だった。


 私は、それをちゃんと覚えておこうと思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ