第32話 除霊師(じょれいし)と『憑かれやすい』先輩(せんぱい)
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【ここまでのあらすじ】
マルチ商法の誘いを友情のために断った翔太先輩。その高潔な精神が認められ、キッゾニアを影から操るという秘密結社『イルミナティ・キッズ』への入会を果たした。彼は、自分が「選ばれた存在」になったと信じ、自信に満ち溢れている。
【主な登場人物】
水無瀬 湊
本作の主人公。令和2年生まれの5歳児。中身は冷静な20代。秘密結社の活動が意外と地味なことに気づきつつ、先輩の勘違いを静かに見守っている。
桜木 翔太
本作の先輩。平成29年生まれの小学二年生、8歳。自分はエリートだと信じている。最近、なぜか肩が重いらしい。
――秘密結社の一員となり、大きな使命感に燃える翔太先輩。「大きな力には大きな責任が伴う…その前に、まずはこの身を清めねば!」と彼が向かったのは、キッゾニアで最も怪しいと噂の、あの場所だった…。
秘密結社『イルミナティ・キッズ』の一員となり、ますます行動が謎めいてきた翔太先輩。
ある日、彼は僕を連れて、パークの最も寂れた和風家屋のパビリオンへ向かった。
看板には『スピリチュアル・カウンセリング 浄霊庵』と書かれている。
「湊くん、最近どうも肩が重い。これは、何か良からぬモノに憑かれているに違いない」
「ただの寝違えでは?」
「違う! イルミナティ・キッズの活動で、俺は多くの念を浴びているんだ! 選ばれし者の宿命だな!」
中に入ると、線香の匂いが立ち込めていた。奥には、巫女のような装束を着た、ミステリアスな雰囲気の少女(高学年)が座っている。彼女が、今日の除霊師らしい。
「…見えます」
除霊師の少女は、翔太先輩を見るなり、目を見開いた。
「あなたの背後には…無数の霊が…! おそらく、あなたが過去にマウントを取ってきた子供たちの、生霊でしょう」
「な、生霊だと!?」
「特に強い念を感じるのは…『昔はもっと凄かった』という言葉に縛られた、古い時代の地縛霊と、『俺のやり方が絶対正義』と叫ぶ、頑固な武士の霊ですね」
(それ、全部先輩自身の性格では…)
僕が冷静にツッコむと、除霊師の少女は「シッ!」と僕を制した。
「このままでは、あなたは霊たちの重みで、運気が下がる一方。お祓いが必要です」
彼女は、おもむろにお祓い串(大幣)を取り出し、翔太先輩の頭上でバッサバッサと振り始めた。
「悪霊退散! 悪霊退散! 承認欲求、霧散! 懐古主義、滅散!」
その様子は、真剣そのもの。しかし、その光景はあまりにもシュールだった。
お祓いが終わると、除霊師の少女は一枚のお札を差し出した。
「これは、あなたの魂を守る、特別な護符です。肌身離さずお持ちください。お代は、50キッゾになります」
翔太先輩は、すっかり信じ込み、ありがたそうに50キッゾを支払った。
「ありがとうございます! なんだか、肩が軽くなった気がします!」
(それは、50キッゾ分、財布が軽くなったからでは…)
帰り道、翔太先輩は護符を大事そうに胸ポケットにしまった。
「いやー、危なかったぜ。俺は、どうもこういうのに憑かれやすい体質らしいからな」
「ええ。先輩は、色々なものに“取り憑かれやすい”ですからね。カルトとか、マルチとか、見栄とか、プライドとか…」
僕の皮肉は、晴れやかな顔の先輩には届いていないようだった。
キッゾニアの闇は、僕らが思うよりもずっと深く、そしてずっと、身近なところに潜んでいるのかもしれない。




