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第24話 VIPくんの正体と企業の社会的責任(CSR)

お読みいただきありがとうございます! 第24話です。


【ここまでのあらすじ】

先日(せんじつ)地鎮祭(じちんさい)(おこな)った場所(ばしょ)に、あっという間に完成(かんせい)した「接待(せったい)ゴルフ場」。キャディとして働いた翔太(しょうた)先輩は、因縁(いんねん)相手(あいて)であるジョージアくんや、お(つぼね)様のレイカ先輩と再会(さいかい)。レイカ先輩の完璧(かんぺき)な「おもてなし」の(まえ)完敗(かんぱい)し、ライバルを素直(すなお)(みと)めることで、また一つ成長(せいちょう)した。


【主な登場人物】

水無瀬(みなせ) みなと

本作の主人公。令和(れいわ)2年生まれの5歳児。中身は冷静な20代。好敵手(ライバル)存在(そんざい)が、先輩を成長(せいちょう)させると分析(ぶんせき)している。


桜木(さくらぎ) 翔太しょうた

本作の先輩。平成(へいせい)29年生まれの小学二年生、8歳。ライバルを(みと)める(いさぎよ)さを()()れた。


――接待(せったい)ゴルフで出会った、もう一人の少年(しょうねん)…VIPくん。翔太(しょうた)先輩は、彼の正体(しょうたい)をまだ()らない。そして、その衝撃(しょうげき)事実(じじつ)が、意外(いがい)(かたち)(あき)らかになる!

 接待ゴルフでの敗北から数日。翔太先輩は「俺も“気づかい”のプロになる!」と意気込み、僕を連れて、ある特別な仕事アクティビティに参加した。

 それは、キッゾニアの運営会社が主催する『未来の街づくりワークショップ』。子供たちが、新しいパビリオンのアイデアを出し合うという、意識高い系のイベントだ。

 僕らが会場に入ると、そこには見知った顔がいた。


 あの、VIPくんだ。彼は、僕らに気づくと、静かに会釈した。

 ワークショップが始まり、子供たちが次々と夢のあるアイデアを発表していく。

「空を飛べるジェットパック体験がしたい!」

「お城を建てて、王様になりたい!」

 しかし、主催者である運営会社の大人たちは、難しい顔で首をひねるばかり。

「うーん、素晴らしいアイデアだけど、スポンサーを見つけるのが難しいかな…」

「安全基準をクリアするのに、コストがかかりすぎるね…」


 大人の「できない理由」の前に、子供たちの夢は、次々と打ち砕かれていった。

 会場が、諦めムードに包まれた、その時。

 それまで黙って話を聞いていた、VIPくんが、静かに手を挙げた。


「一つ、提案があります」

 彼の声に、会場の全員が注目する。

「新しいパビリオンを作るのではありません。今あるパビリオンを、もっと良くするために、予算を使いませんか?」

 彼は、そう切り出した。


「例えば、先日のゴルフ場で働いていたキャディさんたち。彼らの休憩室は、とても狭くて暗かった。彼らがもっと快適に働ける環境を整える。快適なユニフォームを新調する。そういう、表からは見えない部分にお金を使うべきです」


 彼は続ける。

「あるいは、先日訪れた『スカベンジャー』のパビリオン。あそこで働く子供たちは、最も低い賃金で、最も過酷な労働を体験しています。彼らの労働環境を改善し、得られるキッゾを少しでも増やす。それこそが、キッゾニアという“企業”が果たすべき、『社会的責任』ではないでしょうか」

 その言葉は、キラキラした夢物語ではなかった。


 しかし、誰よりもこのキッゾニアで働く「人」を見て、その本質を考えていなければ、決して出てこない、深く、そして温かい提案だった。

 会場は、シーンと静まり返っていた。

 運営会社の大人たちも、彼のあまりに大人びた意見に、言葉を失っている。

 やがて、運営会社のトップらしき人物が、マイクを握った。


「…素晴らしいご意見、ありがとうございます。…失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

 VIPくんは、静かに答えた。

「はい。父が、いつもお世話になっております。キッゾニア最大のスポンサー企業、『オモチャー・インダストリー』の、者です」


 その瞬間、会場がどよめいた。

 運営会社の大人たちは、さっと顔色を変え、一斉に立ち上がって最敬礼をした。

 翔太先輩は、その場で固まっていた。

「お、オモチャー・インダストリーの…ご子息…!?」


 あの、物静かなVIPくんが、実はこのキッゾニアの経済を裏で支える、超大企業の御曹司だったのだ。

 翔太先輩は、自分が接待ゴルフで、どれだけとんでもない人物に「ごますり」をしていたのかを思い出し、顔面蒼白になった。


 ワークショップが終わった後、VIPくんは僕らの元へやってきた。

「桜木さん。先日のゴルフ、楽しかったです。あなたのような、情熱を持った人がいるから、この場所は面白い」


「は、ははは…光栄の至りです…」

 翔太先輩は、完全に恐縮しきっていた。

 彼は、資本力や学歴とはまた違う、生まれながらの「格」というものを、まざまざと見せつけられたのだ。


 そして、本当の「エリート」とは、自分の立場をひけらかす者ではなく、その力を、自分より弱い立場の人々のために使おうとする者なのだということを。


 翔太先輩は、また一つ、自分の小ささを思い知り、深く、深く、頭を垂れるのだった。

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