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第20話 地鎮祭(じちんさい)とそれぞれの立場(ポジション)

お読みいただきありがとうございます! 第20話です。


【ここまでのあらすじ】

歴史体験(れきしたいけん)パビリオンで、理不尽(りふじん)年貢(ねんぐ)()り立てられる「農民(のうみん)」役になった翔太(しょうた)先輩。(はじ)めて搾取(さくしゅ)される(がわ)無力(むりょく)さと(いた)みを()り、労働(ろうどう)(とうと)さを再認識(さいにんしき)した。


【主な登場人物】

水無瀬(みなせ) みなと

本作の主人公。令和(れいわ)2年生まれの5歳児。中身は冷静な20代。年貢を取り立てる「役人」役を淡々(たんたん)とこなした。


桜木(さくらぎ) 翔太しょうた

本作の先輩。平成(へいせい)29年生まれの小学二年生、8歳。農民(のうみん)(こころ)が分かる男になった。お米は一粒も残さない。


――労働(ろうどう)(とうと)さに目覚(めざ)めた翔太先輩。しかし、キッゾニアは再び「資本(しほん)(ちから)」を見せつける! あのスーパーゼネコンが、巨額(きょがく)のスポンサー料を(とう)じ、さらなる拡張工事(かくちょうこうじ)決定(けってい)! その盛大(せいだい)な「地鎮祭(じちんさい)」で、翔太先輩は一体(いったい)どんな役割を(えん)じるのか!?

 スーパーゼネコン・サイトが、再び拡張工事を行うらしい。

 前回、僕らが近隣対応に苦労した、あの工事の比ではない。今回は、キッゾニア史上最大規模のプロジェクトだという。

 その幕開けとして、今日、ここで『地鎮祭』の仕事アクティビティが開催されることになった。


「地鎮祭か…! 男の仕事って感じがするじゃねえか!」

 翔太先輩は、すっかり農民の心を忘れ、目を輝かせている。

 パビリオンに着くと、そこには様々な役割が用意されていた。


【ゼネコン側】 現場監督、設計士など。

【施主・来賓側】 スポンサー企業の社長、市長など。

【式典会社側】 司会者、会場設営スタッフなど。

【神事側】 神主、巫女など。


「俺は、もちろんゼネコンの現場監督だ! このプロジェクトを仕切るのは、この俺しかいねえ!」

 翔太先輩は意気込むが、くじ引きの結果、彼が引き当てたのは、まさかの『来賓らいひん席に座っているだけの人』だった。


「な、なんだこの役は! ただ座ってるだけじゃねえか!」

 彼は、胸に大きなリボンの飾りをつけさせられ、パイプ椅子に座らされた。その顔は、不満でいっぱいだ。


 一方、僕は『神主』役になった。白い狩衣と烏帽子を身に着け、榊の枝を持つ。

 そして、他の役割を見てみると…


【司会者】 アナウンスが上手な、ハキハキとした女の子。

【ゼネコン現場監督】 あの、名門私立小のジョージアくん。

【施主(スポンサー社長)】 あの、中国人富裕層の少年。

【巫女】 ビューティーサロンのお局様、レイカ先輩。


 なんと、キッゾニアのオールスターキャストが、この地鎮祭に集結していたのだ。

 式典が始まった。


 司会者の流暢な進行のもと、僕(神主)が祝詞を読み上げる。

「…この土地に、末永く幸があらんことを…」

 レイカ巫女が、神妙な顔つきで神楽舞(という名の、簡単な創作ダンス)を舞う。

 そして、式のメインイベント「鍬入れの儀」へ。


 施主の富裕層くんが、金のスコップ(もちろんおもちゃ)で、清められた砂の山を崩す。ジョージア現場監督が「エイ、エイ、エイ!」と力強く掛け声をかける。


 その間、翔太先輩(来賓)は、ただただ座って、その光景を眺め、玉串たまぐしを送るだけ。

式典が無事に終わり、直会なおらいの時間。参加者全員に、お神酒ただのジュースと、お供え物(お菓子)が配られる。ジョージア監督と、富裕層の施主くんが、談笑している。


「このプロジェクト、必ず成功させましょう」

「ええ、あなたに任せておけば安心です」


 彼らの周りには、自然と人の輪ができていた。翔太先輩は、その輪にも入れず、一人、隅の方でジュースを飲んでいた。その背中は、あまりにも寂しかった。僕は、そんな先輩の隣に行き、声をかけた。


「先輩。来賓も、大切な役割ですよ」

「何がだよ…。ただ座ってただけじゃねえか…」

「いいえ」と僕は首を振る。


「地鎮祭は、工事の安全を祈願すると同時に、このプロジェクトに関わる全ての人に『これからよろしくお願いします』と挨拶をする場です。先輩のような来賓がいて、式典を見守ってくれるからこそ、施主も、ゼネコンも、神主も、安心して自分の役割を全うできるんです。拍手も、立派な仕事ですよ」


 僕の言葉に、翔太先輩はハッとした顔になった。彼は、自分がただ座っているだけの、無価値な存在だと思い込んでいたのだ。


「そ、そうか…。俺の拍手が、このプロジェクトを支えていたのか…!」

 彼は、単純なのですぐに元気を取り戻した。


「よし! この後の監督の締めの挨拶では、誰よりも大きな拍手をしてやるぜ!」

 彼は、どんな立場でも、どんな役割でも、自分なりの「意味」と「誇り」を見つけ出せる、特別な才能を持っているのかもしれない。

 まあ、その解釈が、大体においてズレているのが、玉に瑕なのだが。


 盛大な地鎮祭の片隅で、僕らはまた一つ、社会における「自分の役割」について、深く考えさせられるのだった。

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