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灯の手が、私の肌に触れるたびに、私は自分の身体が熱を持っていくのを感じていた。
頬に、鎖骨に、胸の曲線に。
彼女は指先で丁寧に、まるで文章を綴るように、私をなぞっていく。
「……くすぐったい、です」
つい漏れた声に、彼女は笑った。
その笑い声は、なぜか涙が出るほど優しかった。
「大丈夫。まだ、なにもしていないわ」
そう言って、灯は私のブラウスを脱がせ、そっとスカートのファスナーに指をかける。
その指の細さ、冷たさ、そして躊躇いのなさが、同時に私を震わせた。
「ほんとうに……きれい。触れるだけで、くらくらする」
「そんな……慣れてますね、灯さんは」
「慣れてる、かもしれない。でも、あなたに触れるのは初めて。だから、怖いくらいに……新しい」
彼女はそう言いながら、私の脚の間に跪き、
柔らかく、しかし迷いのない舌の動きで、私の体に"愛されている"という実感を植えつけていく。
呼吸が荒くなる。指がシーツを握りしめる。
何かがこぼれそうで、でも言葉にできない。
「あ……っ、そんな……そこ……」
「しおり……気持ちいい?」
「わからない……でも、やめないで……」
涙が、知らないうちに頬を伝っていた。
それに気づいた灯は、ふと顔を上げ、私の額にキスを落とした。
「泣いてるの……? つらかったの?」
「……うれしいだけ、です。誰かに、こんなふうにしてもらったこと、ないから」
彼女は私を抱きしめ、私の背中に手を回し、髪を撫でながら言った。
「私もよ。愛したいって思えたの、ずっと……なかったから」
――ふたりは、大人だった。
だからこそ、抱えてきた痛みや、傷つくことの怖さを知っていた。
そしてそれでも、誰かに触れたくなる夜があることも、知っていた。
まるで透明なガラスの部屋で、互いの輪郭だけを確かめるように、私たちは何度も、名前を呼び合った。
しおり。
灯。
交わしたキスは、熱を帯びた祈りだった。