7-3
静寂の中に、熱が溶け込んでいく。
灯の髪が枕に散らばり、しおりの指が、その黒髪を丁寧に梳いていた。彼女の目は、愛おしげに灯の輪郭を追っている。指先が、首筋から鎖骨へ、そして胸の曲線をなぞるたび、灯の肌が細かく震えた。
「どうして……こんなに、優しいの?」
灯の声は掠れていた。目元が涙で滲み、恥ずかしさと幸福に頬を紅潮させている。
「灯が、綺麗だから」
しおりはそう言って、また唇を重ねた。何度目か分からないキスだった。だが、そのすべてが違っていた。最初は確かめるように、次は味わうように。今は、ただ一緒にいたいという気持ちがすべてに変わっていた。
その夜、部屋の灯りは落とされたままだった。
カーテンの隙間から漏れる都会の街灯が、ぼんやりと輪郭を照らす。
灯の手は、柔らかくベッドの上で縛られていた。真っ白なシルクのスカーフ。苦しさはない。ただ、自由を預ける安心と、羞恥の高まりが、彼女をいつもより素直にさせていた。
「動かないで。今夜は私が全部、灯を愛す番だから」
しおりの声が、濡れた空気を裂くように響いた。
官能の波がまた、ふたりを深く沈めていった──。