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【完結】キスの続きを、まだ知らないままで。  作者: 泉水遊馬
【第7章:「名前のない痛みを、あなたと越えて」】
18/32

7-2

 あなたに壊されたい。そう思えるほど、私は今、あなたにすべてをゆだねたい。


夜の静寂に包まれた高層マンションの一室。


カーテン越しに街の灯が滲む部屋の中、灯としおりは互いの吐息に重なるように、ベッドの上で身を寄せ合っていた。


「……灯、指……どうしてほしい?」


しおりの低く囁くような声が、灯の耳元に落ちる。


灯はベッドに仰向けに寝かされ、手首をやわらかいシルクのリボンで束ねられている。


抵抗ではなく、信頼ゆえの拘束。目を伏せながらも、灯の頬は赤く染まり、胸元はすでに荒く呼吸していた。


「……全部、感じさせて……しおり……」


その言葉が合図だった。


しおりの指が、そっと灯の顎を持ち上げ、唇を重ねる。


甘い吐息が混ざり、キスのリズムは次第に深くなる。


舌先が絡み、喉の奥から灯のかすかな喘ぎが漏れる。


──このまま、このまま、私の全部を知って。


しおりの指先は、灯の鎖骨から胸元、腹部へと優しく滑っていく。リズムに緩急をつけながら、触れるだけで灯の身体は敏感に反応していく。


「可愛い……灯のここ、もう、こんなに……」


囁きながら、しおりは軽く言葉を重ね、灯の耳たぶを甘噛みする。


羞恥と快感の境目で揺れる灯は、拘束された手の指を小さく握りしめた。


「……お願い、しおり……焦らさないで……」


「だめ。今夜は、たっぷり、味わってもらうから」


灯の足首をやさしく押さえつけ、しおりは視線を絡めたまま、まるで宝物を扱うように灯の身体を愛撫していく。


胸の頂を唇で愛で、指でリズムを刻みながら、何度も高まりを与える。


──そして、灯のすべてが震えるほどの波が訪れるまで、

しおりは一度も灯から目を離さなかった。


窓辺に、バスローブ姿のふたり。


まだ熱の残る肌のまま、夜景を眺めながら静かに寄り添っていた。


「……しおり。ねえ、どうしてこんなに……私を大事にしてくれるの?」


「大事だから。……誰に否定されても、私は灯を愛してる」


「うん……。私も、あなたに愛されてることが、誇りなの」


灯はそっとしおりの肩に寄りかかり、小さく微笑んだ。


ふたりを包むのは、夜の静寂と、確かな愛。


たとえ世界がまだふたりを許さないとしても──


この夜だけは、すべてを許してくれていた。




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