7-2
あなたに壊されたい。そう思えるほど、私は今、あなたにすべてをゆだねたい。
夜の静寂に包まれた高層マンションの一室。
カーテン越しに街の灯が滲む部屋の中、灯としおりは互いの吐息に重なるように、ベッドの上で身を寄せ合っていた。
「……灯、指……どうしてほしい?」
しおりの低く囁くような声が、灯の耳元に落ちる。
灯はベッドに仰向けに寝かされ、手首をやわらかいシルクのリボンで束ねられている。
抵抗ではなく、信頼ゆえの拘束。目を伏せながらも、灯の頬は赤く染まり、胸元はすでに荒く呼吸していた。
「……全部、感じさせて……しおり……」
その言葉が合図だった。
しおりの指が、そっと灯の顎を持ち上げ、唇を重ねる。
甘い吐息が混ざり、キスのリズムは次第に深くなる。
舌先が絡み、喉の奥から灯のかすかな喘ぎが漏れる。
──このまま、このまま、私の全部を知って。
しおりの指先は、灯の鎖骨から胸元、腹部へと優しく滑っていく。リズムに緩急をつけながら、触れるだけで灯の身体は敏感に反応していく。
「可愛い……灯のここ、もう、こんなに……」
囁きながら、しおりは軽く言葉を重ね、灯の耳たぶを甘噛みする。
羞恥と快感の境目で揺れる灯は、拘束された手の指を小さく握りしめた。
「……お願い、しおり……焦らさないで……」
「だめ。今夜は、たっぷり、味わってもらうから」
灯の足首をやさしく押さえつけ、しおりは視線を絡めたまま、まるで宝物を扱うように灯の身体を愛撫していく。
胸の頂を唇で愛で、指でリズムを刻みながら、何度も高まりを与える。
──そして、灯のすべてが震えるほどの波が訪れるまで、
しおりは一度も灯から目を離さなかった。
窓辺に、バスローブ姿のふたり。
まだ熱の残る肌のまま、夜景を眺めながら静かに寄り添っていた。
「……しおり。ねえ、どうしてこんなに……私を大事にしてくれるの?」
「大事だから。……誰に否定されても、私は灯を愛してる」
「うん……。私も、あなたに愛されてることが、誇りなの」
灯はそっとしおりの肩に寄りかかり、小さく微笑んだ。
ふたりを包むのは、夜の静寂と、確かな愛。
たとえ世界がまだふたりを許さないとしても──
この夜だけは、すべてを許してくれていた。