4-2
鏡の中で、ふたりが重なっていた。
灯は壁際の姿見の前に立たされていた。
しおりはその背後、ぴたりと密着して立ち、顎を灯の肩に預けるようにして囁いてくる。
「……ねぇ、灯。鏡の中のあなたを、よく見て」
灯は震えるまつげ越しに鏡を見た。
そこには、自分の知らない自分がいた。
白いシャツは襟元が大きく開けられ、胸元がわずかに浮いて見えている。
しおりの指が、ボタンの上からシャツの布地越しにゆっくりとなぞっていく。
直接ではない、けれど布越しに伝わる指の動きに、灯の背筋が細かく震えた。
「脱がせないまま、どこまで感じられるか……試してみようか?」
耳元に吐息がかかるたび、灯の鼓動は強くなる。
指は、胸を覆うブラジャーの上から円を描くように動き、焦らすように弾む。
「っ……ん……っ……」
吐息が熱を帯び、太ももがきゅっと閉じられる。
だが、しおりの片手がスカートの上から、ゆっくりと膝裏をなぞり上げていく。
太ももの内側――スカートの裾がめくれ、下着の縁をなぞる。
「スカートの中、濡れてるの……わかる?」
「しおり、さん……そんなの……」
「だって、あなたの体が教えてくれるから。もっと、感じたいって」
鏡の前で、身体の奥の疼きが否応なく浮き彫りになっていく。
羞恥が興奮に変わる。
視線が快楽に溺れる。
しおりの唇が、灯のうなじをやわらかく吸う。
「ねぇ……もっと見て。あなたの顔、今どんな顔してる?」
灯の瞳が濡れて、ゆっくりと鏡越しにしおりを見る。
視線が重なり、心が解けていく。
羞恥の中に愛しさが滲み、快楽と一緒に涙がこぼれそうになる。
「……好き、しおりさん……好き……」
「うん……私も、灯が欲しい。もっと、もっと、深くまで」