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第6話 ようやく終わりが見えてきた

 法務局の登記相談の日がやってきた。


 この日を待ってたよ、いったいいつまで待たせるんだってくらい待ってたよ。時間があったので登記に必要な書類を全部作って持ってきたよ。だってさ、1回20分しか相談できないんだよ、そんなのあっという間に終わっちゃうじゃない。ってことは全部完成させて足りない部分を指摘してもらうくらいじゃないとダメだと思うんだ。


 なにしろ法務局で門前払いされた時に「1回じゃあ終わらないよ」なんて言われてるし。こうなったら意地でも1回で終わらせてやる。


 作った書類はこんな感じ。



***



【土地の相続に必要な書類】


①登記申請書(指定様式)

土地の情報を記載する必要があるため「評価証明書」の情報が必要になるよ。


②戸籍関係書類(市役所で入手)

被相続人(次男)

・生まれから死亡までの戸籍謄本

・戸籍の附票(転籍履歴)

・土地評価表

法定相続人(父・母・長男・長女・次女・三女・四女・長姪)

・法定相続人の戸籍謄本(死亡している者は生まれから死亡までの全ての戸籍)

・住民票(相続する者だけ)


③遺産分割協議書(書式自由)

全員で話し合って遺産分割を決めたことが分かる内容のもの。全員の署名捺印がいるよ。捺印は実印でね。


④印鑑証明(市役所で入手)

遺産分割協議書で使用された全員分の印鑑証明。


 簡単にまとめると、法定相続人の上位の者から順に生存者につきあたるまで、全ての法定相続人の戸籍謄本が必要になる。死亡していたら死亡の確認と他の相続人(子や兄弟)がいないことの証明のために、生まれてから死ぬまでの戸籍謄本を用意する。



 登記関係の書類はここまでなんだけど、今回もう一つ申請したものがある。



【法定相続情報証明制度に必要な書類】


①法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書(指定様式)

申込書


②相続関係説明図

関係者全員が記載された系図みたいなもの


③関係者全員の戸籍謄本

系図を証明するための資料(登記資料②と同じ)


 相続には必ず相続人全員の戸籍謄本が必要になるんだけど、結構な量の束になるのね。銀行等で相続手続きするたびにそれを提出するのが大変なので、法務局で戸籍謄本と作った系図を突き合わせてもらって「間違いない」ってお墨付きをもらうってのがこの制度なの。つまりそれさえもらえれば戸籍謄本の束を持って歩く必要もないし、複数の証明書をもらえば複数の銀行で一斉に相続手続きが可能になるんだよ。


 今回はもう、土地と株だけだから要らないんだけど、興味があって申請しようと思ったわけ。



【付属資料】


 戸籍謄本などを返してもらいたいときには次の書類が必要。

・返して欲しい書類のコピー(全てのコピーに「この書類は原本と相違ありません」と記載し相続者が押印、ホチキスで止めて全てのコピーに相続者の割印を押す)

・相続関係説明図(法定相続情報証明制度資料②と同じ)


 たくさんの戸籍謄本を手に入れるためにそこそこお金がかかっているし、この戸籍謄本の束は他の相続でも使ったりするので、原本を返してもらうためにコピーを提出する必要がある。



***



 こうして書類を作ってみるとそんなに難しいものでもないと思うんだけど、果たしてどんな指摘を受けるんだろう。


 法務局には、土地の返納についての相談もやっているってポスターもあったけど、やっぱり要予約で1回30分という時間制限があった。2024年の4月から土地の相続が義務化されたので、こちらも忙しそうだったよ。


 父と共に時間まで待ってさあ出陣。だけど出てきた担当者は60歳は超えているであろう……うん、ちょっと遠慮した。70歳は超えているであろうおじいちゃんで、アクリル板越しのマスク越しなもんだから何言ってるか聞こえやしなかった。え? これ窓口対応には向かない人じゃね?


 しかも書類を一つ一つ見ながらイチイチ質問が来るので、これじゃあ1時間あっても終わらないよ。始めて1分で不安が爆発しちゃったよ。予約時間は20分毎だったけど実際のところ担当者2人で回してくれているので、休憩含めて1時間の時間をとってくれてるようだった。でも、遅い。進まない。きぃい~!


 連れて行った父も隣で何やかや言ってるんだけど、その質問に答える余裕はないからガン無視する。だって今日終わらなかったらまた2週間待ちなんだよ? いやだよもう。


 急かすだけ急かしまくって書類を見ていった結果、いくつかの修正点(ちょっとした言葉の違いとか割り印の位置とか)と不足書類(引っ越しを繰り返していた長女と次男だけ、抜けている戸籍があった)を揃えれば手続きできそうだった。


 ようやく終わりが見えてきたよ。



 翌日、法務局から電話がかかってきた。


 電話は相談担当してくれたおじいちゃんからで、気になってたことを調べてくれたらしく、わざわざその報告をくれたんだ。おお、なんて手厚いアフターケア! ありがとうおじいちゃ~ん。


 で、その「気になってたこと」なんだけど。


 兄弟の両親(私にとっての祖父・祖母)はね、実は父親の方が婿入り養子なの。ってことは仮に母親と結婚する前に誰かと結婚していて子供が居たりした場合、その子も相続人になるので、父親の生まれてから入籍するまでの戸籍も必要なんだって。


 うへえ。


 でもこれ、四女の家で見た記憶がある。登記する前に家に寄ってもらっていこう。


 なんかさ、行政書士に頼む気持ちが良く分かったよ。この時間と苦労を考えれば10万くらい安いとさえ思えるけど、もう覚えたから次は楽にできるかな。



***



 そしてついに登記をしにやってきた。


 まるで受験生であるかのような気分。


 受付の職員さんが必要書類が全てそろっているかざっと目を通してくれる。ここで見るのはあくまでも簡易的なものなので、内容の審査とか不足情報の確認はこの後になる。でも一度相談の上修正しているんだからもう勝ったも同然だ。だからこの日はサッと出して終わるつもりだったのにいきなり「これ(系図)が作ってあればコピーは要りません」なんて戸籍関連のコピーを返されちゃったよ。それってこの前おじいちゃん相談員と一緒に割り印押し直したやつじゃん! おじいちゃ~ん!


 おまけに法定相続情報証明制度に申請するなら不足書類があるなんて言うんだ。


「これ、HPを見て作ったんですよね? これを見て作ってもらえればよかったんですけど」


 なんて説明チラシを渡されたんだけどいやいや、HP見て作ったら間違うって、どんなことになってんのよ。しかも証明書は法務局から発行してもらえると思っていたら、申請側が原紙を作って用意したもの(家系図)に法務局が印を押す形なんだって。つまり必要分の原紙を俺が用意する必要があるわけで、じゃあ今日はもう無理じゃん!


 登記完了書類の返信用封筒がいるっていうんでレターパックを買っていったら「本人限定受取郵便」じゃないとダメだからと940円の切手を買わされたし。


 ちくしょう、でも登記するだけの書類はそろってるので、とりあえず登記申請だけ済ますことにする。後日改めて法定相続情報証明制度を申請しますと言うと、そのためにまた戸籍謄本の原紙の束が必要だって言うじゃない。それって今日出す書類だよね、返ってくるまで時間がかかるんだよね。ってことで断念。登記だけなら2週間弱で完了するとのことだった。(ただし、書類に不備がない場合)


 1点だけ親切だと思ったのは、株が「相続者」しか手続きできなかったのに対し、登記は不備があったときに相続者ではなく直接俺のところに連絡してくれるってこと。でもそれだけよ。1番の不満はおじいちゃんと言ってることが違ってたり、HPの情報と違ってたりしたことで、ちょっとこのへんの「統一性のなさ」を何とかしてもらいたいもんだよね。


 でもこれでようやく肩の荷が半分下りた気がするよ。

登記書類と法定相続情報証明制度


相続登記の提出書類

参考(法務局HP):https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html


法定相続情報証明制度

参考(法務局HP):https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html


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― 新着の感想 ―
 終わったと思った後に、故人も忘れていた預金が出て来たり、実体のない会社への不明な支払いなどが発覚したり⋯⋯残された側は面倒で大変だと思いますが、見つけた時に、一つ一つ処理するしかないのですよね。 …
お疲れさまです…。 なんというお役所仕事よ。 おじいちゃん、最新の情報へアップデートして! そしてもっと前、HPのアップデート! なんだよそれ~、利用者のこと何も考えてない感、満々。 大変でしたね~。
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