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SF作家のアキバ事件簿202 六ヒル大捜査線

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第202話「六ヒル大捜査線」。さて、今回は元賞金稼ぎのスーパーヒロインが秋葉原で殺されて…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 ヒロインの死

路地裏。突然ドアが開き、真っ赤なコスチュームのスーパーヒロインが現れ、地面に崩れ落ちる。

追っ手に怯え、後ろを振り向く。負傷して路面を這うようにして逃げ、ゴミ箱の影へと身を隠す。


「ロイズ。もう終わりょ」


続いて現れた革ジャンの女は、サイレンサー付きの音波銃を手にしている。難なくヒロインを見つける。


「ロイズ。貴女は関わるべきじゃなかった」

「貴女は、地獄を見るコトになるわ」

「まぁ怖い」


革ジャンの女は、ヒロインの額に音波銃を推し当てる。目を瞑るヒロイン。殺人音波。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


路地裏の殺人現場。パトカーの赤と青の警告燈が明滅し、非常線が張られ、警官と鑑識でゴッタ返す。


「ラギィ警部、帰って。スーパーヒロイン殺しだから、後は南秋葉原条約機構(SATO)が引き継ぎます」

「あのね。私の遺体があったとしても、みんなは見ないで帰る?」

「ラギィ。残念だったわね」


僕のタブレットをハッキングして、超天才ルイナが話に割り込む。車椅子の彼女はラボにいる。


「ルイナ。状況を教えて」

「スーパーヒロインのロイズ・ロイスは、先ず脚を撃たれた。音波は骨を砕いた。彼女は、隠れようとしたけど…ポケットにラギィ宛のメモが入ってたわ。あと地下シャトル便の半券。今日の午後、六ヒル(六本木ヒルズ)から来たみたい」

「六ヒル?スーパーヒロインが何をしてたんだ?」


"リアルの裂け目"の影響で覚醒したスーパーヒロインは、アキバから出るコトが法的に禁じられている。

あ、SATOは突然アキバに開いた"リアルの裂け目"由来の脅威に対抗するための人類側の防衛組織だ。


「秋葉原で賞金稼ぎが出来なくなって、六本木に引っ越したの。彼女は、スーパーヒロインであるコトを伏せ、人生をやり直そうとしてた」

「マジか?ラギィ、最後に彼女と話したのは?」

「私が逮捕した時…お願い。見せて」


誰にも止められない。遺体に近づき、額に開いた音波痕を見る。撫でるように、手のひらを近づける。


「ラギィ!凶器の音波銃を見つけたわ。路地の排水溝に捨ててありました。音波発射痕アリ。カートリッジは、抜いてあった」

「カートリッジには指紋がついてるからね…何処でも買える、安い使い捨ての音波銃だわ。銃口に傷がついてる」

「サイレンサーだな?」


うなずくラギィ。


「YES。だから、白昼堂々とスーパーヒロインを射殺出来たのね」

「ラギィ。犯人は絶対に捕まえる。既に3ブロック圏内で万世橋(アキバポリス)が情報収集を始めたわ」

「ココは秋葉原だ。必ず誰かが何かを見てるハズさ」


口々に強がりを逝う僕達。ラギィは悲しげに微笑みロイズの遺体を振り返る。その額にはポッカリと音波痕。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査の指揮権はSATO側に移行したが、所轄の意地で、捜査本部は万世橋(アキバポリス)に設置される。


「ロイズは、六本木から逃げて来たのね。何らかの事件に巻き込まれていた」

「ラギィ。音波銃口からチタン合金が検出された。お陰で2種類のカスタムサイレンサーに絞り込めたわ。ドチラも100万円近くスル代物」

「おいおい。音波銃は安物なのに、サイレンサーだけカスタマイズしてるのか?」


こだわりの品って奴?


「きっと、犯人もヒルズ間を結ぶ地下シャトル便で来たンだ。シャトルに音波銃は持ち込めない。でも、サイレンサーはただの筒だ。カバンに入れればバレないからな」

「ヲタッキーズ。地下シャトル便のグランクラスの乗客を調べて。彼女を追って六本木から来た人。直前に予約した人に絞って」

「ROG」


天を仰ぎ、つぶやくラギィ。


「ロイズ。何があったの?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のホボ全員がエアリのPCを取り囲む。


「犯人は、この5便のどれかに乗ってるわ。乗客を調べたトコロ、1人、怪しい奴を発見。ニルマ・コリィ。グランクラスを発車の20分前に購入。しかも、IDを見ても信用情報は全くナシ。免許証番号はデタラメとキテる」

「ニルマ・コリィだって?"宇宙女刑事ギャバ子ザ・ムービー"に出した新キャラクターだ」

「ビンゴ!犯人だわ。しかも、ニルマは事件の2時間後に再びグランクラスで六本木に帰ってる」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再び捜査本部。モニターの中でSATOのレイカ司令官が吠えている。誰だ?地雷を踏んだのは?


「ダメょ!確証もないのに、貴女を六本木に行かせるワケにはいかナイわ」

「おいおい、レイカ。アキバに3時間しか滞在してないンだぜ?十分怪しいだろ?」

「ビジネスマンならあり得るわ」


僕はフランス人みたいに両肩をスボめてみせる。


「ビジネスマンは、偽IDやサイレンサーなんか使わナイ。レイカ、ラギィを六本木に逝かせてやれょ」

「確かに、今回は警察との合同捜査だけど、指揮権はSATOにアリます。そう簡単にラギィ警部を所轄から出せないわ」

「レイカ司令官。時間が経てば経つホド、捜査は難しくなります。ご存知でしょ?」


超法規組織の司令官にくってかかるラギィ。


「とにかく!確証を得られたら、私から六本木市警に連絡します」

「六本木市警?事件は秋葉原で起きたンです。そして、担当は私。六本木市警に何が出来ると言うの?私は事件を解決したいだけ!止めないで!」

「傷ついてるの…貴女は」


レイカの一言に絶句するラギィ。


「ねぇラギィ。スーパーヒロイン殺しへの貴女の執念はワカル。貴女とロイズは、嫌な別れ方をした。だからこそ、今回は別の人が担当スルべきなの」

「…その通りです。確かに、私は事件に近過ぎる。ところで、未だ休暇が残っているので、この機会に取らせていただこうと思います」

「ラギィ。まさか無茶なコトは考えてナイわょね?」


死んだ魚の目で答えるラギィ。


「平気です」

「どこへ行くの?」

「家です」


クルリと回れ右をし、足早に歩き去るラギィ。全員の視線が僕に集中スル…何してるの?追って!


「待てょラギィ!」

「テリィたん。ロイズは、私の大事なヲタ友だった。今は私を1人にさせて。ヲ願い」

「ラギィ…」


引き止め失敗w


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"ラギィ。この手紙、何度も書き直してる。でも、いつかは送ろうと思ってる。私は、許されないコトをしたわ。でもね。今は、正しい道を歩んでるの。いつか貴女も許してくれると思ってるわ…"


メモを小さく折りたたんでポケットにしまい、キャリーケースを引いて部屋を出る。ラギィは私服だ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


地下シャトル便は、グランド末広町ステーションを定刻で発車スル。

3人掛け座席の真ん中で、ラギィは左右をヲ相撲サンに挟まれてるw


「やぁ悪いね」

「六本木場所に巡業ナンだ」

「え。お2人とも六本木まで乗るの?」


途端に後ろで赤ん坊が泣き出す。最悪w


「失礼。ラギィ警部?」

「はい」

「アップグレードになりました。グランクラスの3Cです」


左右のヲ相撲サンからも歓声が上がる。


「良かったね!」

「姐さん、警察の人だったのか」

「ごめんなさいね。失礼」


苦難の末に通路に出たラギィは、髪と服を整えるとグランクラスへ。だが、途端に怖い顔に豹変さ。


「シャンパンは?」


僕がグラスを差し出したからね。


第2章 真っ赤なケッテンクラート2人乗り


ヒルズがメトロポリス化した今日、ヒルズ間を結ぶ地下シャトルは重要な交通インフラとなっている。


中でも秋葉原ヒルズ〜六ヒルはドル箱路線。


「何なのコレ?昔は虎ノ門ヒルズとか満員の地下鉄で通ったモノょ?」

「ヤメてくれ。僕はヒルズ族だぜ?セレブらしく振る舞う義務がアル。実は"仮面の女忍者 桃影"の撮影現場に誘われてるんだ。でも、まさかラギィ

と同じシャトルになるとは思わなかったぜ」

「私は…テリィたんを巻き添えには出来ないの」


怖い顔で睨む。でも、何処かウレしそうw


「あれ?六ヒルには休暇で行くんじゃないのか?」

「六ヒルでは、私は警部じゃない。権限もなければ応援もいないわ」

「だから、応援は僕だ。何しろ僕は警察のルールを守る必要がナイからな」


ラギィはフッと微笑。僕とは、彼女が前任地で"新橋鮫"と呼ばれてた頃からの長い付き合いなのだ。


「私の元カレの中でも、テリィたんの慎重さの無さはピカイチだモノのね。わかったわ。捜査に参加したいなら、なるべく目立たないようにしてね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


六本木交差点。アマンダ前に真っ赤なケッテンクラート(オートバイ型半装軌車)が停めてある。歓声を挙げて乗り込む僕。


「テリィたん!目立たないようにしてって言ったのに忘れた?」

「え。思い切り街に馴染んでるょ?ケッテンクラートは、六本木じゃママチャリさ。さ、どこへ行く?」

「麻布十番。私のホテルへ」


のけぞる僕。


「え。坂を下るのか?僕のホテルからも現場からも遠過ぎる。また登るのも厄介」

「仕方ないでしょ?一緒に行動するつもりなかったんだから」

「テレビ夕日が用意してくれた六ヒルの僕のスイートに泊まれょ。2部屋あるから1室をラギィが使えば良い」


大胆なお誘い。


「冗談でしょ?」

「モチロン部屋は別だ。一応、ミユリさんにも話してある」

「姉様もグルなの?でも、一緒なんて嫌よ」


からかってゴマかすw


「自分を抑えられなくなっちゃうんだな」

「いいえ、心配なのはテリィたんの方」

「下心皆無の人畜無害がウリさ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ハイアットのスイートは、秘密のレセプションがあり、専用エレベーターで登って逝く。

コンシェルジュのモリズ自ら、瀟洒な木製のドアを開けて部屋の前で待ってくれている。


「テリィ様、ようこそ!前回同様に、レトロフューチャーをコンセプトに部屋をリセット致しました」

「ウレしいね」

「では、カップルマッサージは7時からです」


ソレが余計ナンだょ目を剥くラギィw


「カップルマッサージ?直球ストレートな下心ね」

「モリズ、キャンセルしてくれ。あと花とシャンパンも下げて。仕事をしたい」

「かしこまりました」


モリズの目配せ1つでボーイ達が片付ける。

花やお酒を下げる彼等へのチップを弾むw


「まぁ!ピンクの寝室にダブルベッド。コチラも下げてもらえるかしら」

「前回は、夏コミ帰りのスーパー(コスプ)レイヤーを連れて来たから、こんなコトになっちゃって…」

「さっさと捜査を始めましょ」


僕は渋い顔だ。


「せめてルームサービスとか」

「私は捜査のために六ヒルに来たの。ルームサービスを頼みに来たワケじゃナイわ」

「六ヒルに着いたばっかりなのに、韓流ドラマ張りの臭いセリフだ。六本木の空気にやられたんだね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「免許証の住所によると…ねぇホントにココにロイズが住んでたの?」


六ヒルのレジデンス棟。しかも、ペントハウスだ。アラブの大富豪と同棲中か?とりあえずピンポンw


「誰だ?」


何処か聞き覚えのある声だ。


「ロイズの友人です」

「ロイズの?裏に回ってくれ」

「裏?」


横のヤタラ立派な勝手口?が開き、中に入ると広い部屋の先にあるプールサイドで、男がスマホ中だ。


「悪いがツアーは出来ないょ。じゃ切るぞ…いや、どうも。ロイズがどーしたって?」


振り返った彼を見て僕達は絶句スル。か、彼は…


「や、山田省吾…さん?」

「そうだ。サングラスしてないのに良くわかったな。おやおや、コチラの美人さんは?」

万世橋警察署(アキバポリス)、警部のラギィと申します。あ、貴方はモノホンの…」


ラギィもレジェンドを前に声が出ないw


「アキバポリス?ロイズが何か問題を?」

「殺されました」

「おい!大変じゃないか」


今度は山田省吾が驚く番だ。サングラスがないと、意外に几帳面でマジメな感じ。折り目も正しいw


「ロイズは省吾さんのお知り合い?」

「何ヶ月か前にトラブルになった時に助けてもらった。以来、ココに居候させてる」

「彼女がトラブルシューターを?六本木で?」


まさか愛人として囲ってるワケでは…


「トラブルシューターの腕は確かだった」

「最近はどんな仕事を?」

「2日前に綺麗な女優の依頼を受けてたょ」


綺麗な女優の依頼!受けたいw


「その女優の名前は?」

「確か宣材写真(アー写)を置いてった。ちょっと待っててくれ」

「ありがとう」


山田省吾は、アー写を探しにペントハウスに戻る。


「うーん超変な感じだ」

「テリィたん、何が?」

「彼のコピーバンドをやってた。ホンセクで」


すると、ラギィも笑い出す。


「私ナンかコスプレしてたわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


数分後。山田省吾からアー写を渡される。


「女優…の卵か。バイヲ・レッド。出演作品は"奇跡の美ゾンビGカップ"…ってコレ、AVじゃないか?」

「とにかく!ロイズと逃げ出すほどのトラブルを抱えてたのね…テリィたん、何やってるの?」

「"奇跡の美ゾンビGカップ"のダウンロード…何スルんだ!」


ラギィにスマホを取り上げられるw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


一方、万世橋(アキバポリス)には捜査本部が立ち上がる。


「殺人現場近くに落書き対策用の防犯カメラが設置されてたわ。後ろ姿だけどコレが犯人ょ」

「真っ白なケッテンクラート?ホント、今、流行ってるょね。でも、惜しい。顔もナンバーも見えないわ」

「逃し屋は黒ギャル。そして、犯人はお姉系の白ギャルだわ」


ケッテンクラートに乗り込む、白黒ギャルの画像に見入る、ヲタッキーズのエアリとマリレ。


「鉄ヲタご主人様は元気?秋葉原にいたのは6時間程度でしょ?この時と同じ服装で行動してた可能性が高いけど」

「なるほど。ヒルズ間を結ぶ地下シャトルのターミナルの画像をゲットしてみる。あーゆー"小さな鉄道"ってマニアが多いのょ」

「どーやら御尊顔が拝めそうね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「バイヲ・レッドは、CF撮影で"テレビ夕日"のゼニススタジオにいるわ」

「"テレビ夕日"?"仮面の女忍者 桃影ザ・ムービー"と同じ局だ。コレは運命だな…地上波ってAVも始めたンだね」

「バイヲのオフィスで聞いたら、ステージ7で撮影してるって」


ところが、ココでイキナリ"テレビ夕日"社長以下の撮影クルーによる歓迎委員会に取り囲まれるw


「テリィたん!ようやく来てくれたか!」

「ユーヒ社長!トニロ監督!どんだけ儲けるんだょコイツ!"仮面の女忍者 桃影"の撮影は?」

「順調さ!続編をさっさと描きやがれ」


監督と軽口を叩く。傍らの"新橋鮫"を御紹介。


「トニロ監督。コチラはラギィ警部。"仮面の女忍者 桃影"のモデルさ」

「わぉ!こんな美人じゃ直ぐ(AV)女優になれるぞ」

「警部で満足よ」


ステージ7のバイヲを探しに逝くラギィ。


「ホットだな。だから、あんな濡れ場が描けルンだな?もうあんなコトやこんなコトも…」

「彼女は元カノだ。ソレより桃影役のナタリは?」

「うーん間違って薬を飲んじゃった、とでも逝っておこうかな」


溜め息をつく監督。どうも"リハビリ中"らしい。

ソコに華やかなメイド服の女子2名が通りかかるw


監督のトニロが呼び止める。


「おい!原作者のテリィたんだ。御挨拶しろ」

「テリィご主人様?モノホン?貴方のSFの大ファンなんです」

「え?あ。何だコレ?」


握手し、拳の上と下を叩き合い、指差し合う。何?


「時間があったら、エアリの役について、少しお話を伺いたいわ」

「例えば、どんなコト?」

「例えば…彼女の内面とか、何に抱えてるか、なぜメイドになったか、とか」


女優版ヲタッキーズのメイド服姿の2人に突っ込まれてると、ラギィが戻って来て…ヤハリ面食らうw


「テリィたん!バイヲは撮影に来てナイそうよ。AVから抜け出すチャンスの撮影だから、休むハズは無いのに…え?この2人、何?ヲタッキーズにソックリw何か不気味ナンですけど」

「だょな」

「住所は聞いたから行って見ょ?何かトラブルに巻き込まれ、かなり危険な状態なのカモ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。超天才ルイナのラボ。


「ロイズを撃った音波弾道を分析しなきゃ。ソレから音波弾カートリッジも…あら?どうなってんの?コレ」


シャーレの中のカートリッジが溶け出してるw


「コレが音波カートリッジ弾?何で溶けてるの?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「溶けるカートリッジ?ルイナ、何を言ってるの?バイヲ!バイヲ・レッド!」

「そんな話、聞いたコトないな。サイトの描き込みにもなかったし」

「バイヲは不在みたいね」


バイヲは六ヒル低層階、通称"貧民窟"住まいだ。ドアを叩くのをヤメ、鍵穴にヘアピンを突っ込むw


「おいおいおい。ラギィ、ピッキングしてんのか?一応、警官だろ?」

「今、休暇中で警官じゃナイから」

「そーゆー問題?」


難なくドアは開くw


「誰か?いないみたい」

「とりあえず、死体の匂いはしないね」

「あら?彼女は秋葉原だわ」


サイドテーブルの上に地下シャトル便のメモ。


「コレはロイズが乗ってた便だわ。2人は一緒に行った?ロイズは彼女を守るために秋葉原へ連れて行ったのかしら」

「守るって誰から?」

「この人かしら。バイヲは誰かを監視してたみたいだけど」


歪んだようなユニークな形のビルの前に立つ女。


「この写真の建物、何か見覚えがアルな」

「彼女は、何かを調べていたみたいね。コーギーとサーフィンとワインの資料が山積み…何がなんだかワカラナイわ」

「AVの役作りかな」


女優1人住まいのワンルーム。何だかウキウキだ。勝手にICレコーダーの音声を再生とかしてみるw


"音の力でマネーが動く"


何だコレ?ラギィと顔を見合わす。その時、窓の外で物音…やや?パトカーだ!警官が降りて来るw


「ヤバい!警察だ。逃げなきゃ」

「誰かに通報された?待って。この女の写メだけ撮っておくわ」

「裏口から逃げよう!」


慌てて裏口から飛び出したら、いきなりステーキ、じゃなかった、イキナリ目の前に音波銃の銃口だw


「動くな!NHKだ。受信料、払ってるか?」


ちゃんと払えょ美ゾンビGカップ。


第3章 六本木市警の女


「ごきげんよう!私はカルア・シガー。六本木市警の強盗殺人課」

「シガー刑事、聞いて。コレは誤解なの」

「じゃ鍵をこじ開けて、不法侵入してナイのね?」


ヘアピンが刺さった鍵穴を指差すシガー。


「ラギィは万世橋(アキバポリス)だ」

「そんなコトは知ってるわ。仲間を殺されたコトも知ってる。でも、うちの街に来て、訳ワカンナイSF作家と強盗してもらっちゃ困るの」

「強盗?まさか逮捕する気?」


ムキになるラギィ。


「逮捕?もっとキツいわ。貴女と話したがってる人がいる…スピーカーにします。どうぞ話してください」


シガーはスマホをテーブルに置く。


「ラギィ!強盗が貴女のバカンスなの?!」

「レイカ司令官…説明させてください!」

「しなくて良いから、次の地下シャトル便で戻って来て!」


僕の出番だ。


「レイカ、明日の朝でも良いか?もう夕食の予約をしてしまって」

「テリィたん、笑いのネタになるとでも思ってるの?ラギィが明日から商店街(モール)の警備員になっても良いの?2人共今すぐ秋葉原に戻って来るの」

「あーら六本木市警の目の前で恥ずかしいコト」


スマホを胸ポケットにしまうシガー刑事。


「もう用はないでしょ?失礼スルわ」

「さよなら。で、探し物は見つかったの?」

「家が違ったわ」


鼻で笑うシガー刑事。


「六本木にようこそ。さっさと帰って」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ラギィ!マジでクビになるぞ!」

「きっとね」

「じゃ帰ルンだな?」


振り向く。ラギィの視線は僕の眼底を貫く。


「まさか。帰らないわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。エアリにスマホ。


「エアリ?今、話せるか?」

「テリィたん?あのね。レイカ司令官は、マジでカンカンだから。ヲタッキーズに仕事が来なくなるカモ」

「あのさ。頼みゴトがあるんだけど、断っても問題ないから」


ヲタッキーズは僕の推しミユリさん率いるスーパーヒロイン集団でSATO傘下の民間軍事会社(PMC)なのだ。


「わかった。でも、テリィたんじゃイヤ。ラギィに代わって。ラギィの言うコトなら聞く。ソコにいるンでしょ?」

「はい、ラギィょ。ロイズは、バイヲ・レッドというAV女優と秋葉原に行ったわ。事件と何らかの関係がアル。バイヲは、未だ秋葉原で、きっと危険な状態にアル。彼女は、秋葉原のミュージカル学校に通ってた。学校時代のお友達に連絡取って欲しいの」

「ROG。任せて。あ、マリレが何か言いたそう」


ヲタッキーズ側も話者交代だ。


「ラギィ。お天気はどう?」

「最高だけど、それドコロじゃナイわ」

「あのね。犯人の写真をゲットしたわ。グランド末広町ステーションのカメラに写ってた。今、メールするから」


ラギィのスマホに頬に傷ある女賞金稼ぎの顔。


「コレがニルマ・コリィ?」

「YES。モチロン、本名じゃナイ。殺人現場の映像と同じ服装でグランド末広町ステーションにいた。ソレで拾えたの」

「なるほど。無駄カモだけど顔認証にかけてみて」


マリレがスマホを切る。僕の番だ。


「いたぞ」

「ニルマ・コリィ?」

「違う。バイヲの家の中にあった写真の女さ。あの建物に見覚えがあると思ったら"仮面の女忍者 桃影"のロケで使われてた建物だ。ネットで調べたら、外資系のコンサルらしい。彼はケルン・コルビCEOだけど、趣味は何だと思う?」


僕は、ラギィにスマホの画像を示す。


「ワイン、コーギー、サーフィン?バイヲは、彼のコトを調べていたの?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田リバーの河口は、サーフィンの名所だ。砂浜をボード片手にユックリ歩くケルン・コルビ。


「ケルンさん!この時間、アシスタントが貴方はココにいると」

「今は、サーフィンの時間ナンだ。話は終わってからにしてくれ」

「待てません。私は、万世橋警察署のラギィ警部。コチラは国民的SF作家のテリィたん。この女性に見覚えは?」


ラギィが示す画像を覗き込むケルン。諦めたのか、ロングボードを砂浜に刺す。


「先週コーヒーショップでナンパした子だ。デートは上手くいってたのに、トイレに行ってソレっきりだ。その子に何かあったのか?」

「コレって何のセリフかな」

「何?」


僕がICレコーダーを再生すると、ケルンは身を乗り出す。"音の力がマネーを動かす"…


「コレ、君の声か?」

「あの女め!」

「どうしたの?」


激しく動揺するケルン。


「金庫の解錠暗号だ。ウチの金庫は音声認証ナンだ。彼女は、デートに見せかけて俺の声を録音してたんだ!金庫が危ない!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ケルンのスタートアップは、六ヒルのオフィスタワーにある…金庫はモヌケのカラだ。


「ウ、ウソだろ…全てが消えた」

「何が消えたの?」

「ソレは言えない。機密情報なんだ」


僕はフロアに落ちてたカートリッジを拾う。


「コレ、溶ける奴か?」

「どうしてソレを知ってるんだ?アンタ、まさか情報機関の人間か?」

「殺人に使われたの。秋葉原で」


驚くケルン。


「実は、超軽量の音波弾カートリッジを開発していたんだ。だが、失敗してなぜか溶けるカートリッジが出来てしまった。クライアントからは要らないと言われたんだが、それを欲しがる筋もいて…全く何でこんなコトに…」


肩を落とすケルン。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


黄昏のアキバ。西陽の差す捜査本部。


「ラギィが言ってたバイヲ・レッドの件だけど…」

「いたの?」

「いいえ。そこまではワカラナイ。でも、昨夜の行動がバレた。怯えた様子で、元カレの家に現れたそうょ」


ガールズトーク的に盛り上がるw


「一緒に秋葉原に来たハズのロイズがいないと言うので泊めたら、次の日の朝、バイヲは消えていた。彼の財布と共に」

「ヤルわね。行き先は?」

「知らないけど、その2時間後、黒ギャルがバイヲを探しに来た」


出たな、黒ギャルw


「ソレ、きっとニルマ・コリィの相棒だわ」

「えぇかなり暴力的だったそうょ。元カレはボコボコにされたンだって」

「よっしゃ!AIに似顔絵を描かせましょ!」


見事な似顔絵が出て来る。胸を張るマリレ。


「とっくに量子コンピューター衛星の"シドレ"に描かせたわ。この黒ギャルもバイヲを追ってる。彼女より先に見つけなきゃ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ほとんど水着みたいな宇宙服を着た美女がタコみたいな怪物の触手から逃げ回る壁画のホテルの部屋←


「バイヲ・レッドは、女優として成功したいと必死だった。ソンな彼女はクラブで男と出会うの」

「うん。ソイツはプロデューサーを名乗り、ケルンの金庫の音声暗号の入手に手を貸せば、有名にしてやると持ちかける…」

「マンマと解錠暗号をゲットしたバイヲだけど、彼女は犯罪に加担したと気づき、巷で有名なトラブルシューターのルイズに連絡を取る」


僕とラギィで"妄想ハレーション"中だ。


「ところが、その動きはニルマ・コリィが知るトコロとなる」

「ソレでロイズは土地勘のある秋葉原にバイヲ・レッドと逃げるワケか」

「さすがロイズらしいわ…ロイズと出会った当時は驚くコトばかりだった。全部吸収しようとしたわ。もう彼女に2度と会えないナンて」


寂しげな横顔。ふとラギィを抱き締めたくなるw


ニュー新橋シティ(NYC)でラギィと出会った頃、僕は思った。この人の謎は解けないって。今もさ。ラギィと長い時間を過ごしたが、長い間、一緒にいるけど、今も驚かされる。君の強さ、優しさ…そして、セクシーだし」

「テリィたんも悪くないわ。私の元カレNo.1」

「そっか?」


上目遣いで僕を見るラギィ。何だか妙な雰囲気が漂う。見つめ合う。ラギィの方から視線を落とすw


「もう遅いわ。おやすみなさい」

「ラギィ」

「え。」


振り向くラギィ。何かを期待してる?


「…ヲやすみ」


ドアを閉めるラギィ。地団駄を踏む僕。部屋の中ではラギィは両手で顔を覆ってる。外ではドアを見つめる僕w


ラギィは、ドアノブに手を伸ばす。思い切ってドアを開けるが、ちょうど僕は部屋に消えるトコロだ。


ラギィは再びドアを閉め、目を閉じ溜め息をつく。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


朝焼けに染まる六ヒル。朝早くからホワイトボードに熱心に描き込みをしているラギィは…彼シャツw


「ずいぶん早起きだな。ホワイトボードまで持ち込んだの?」

「ルームサービスで頼んだら10分で持って来てくれたわ。コンシェルジュのモリズは優秀ね」

「そうだ。彼女は優秀さ。頼めば聖なるアークだって用意してくれる」


彼シャツのラギィはとびきりの笑顔だ。


「アークを開けたら顔が溶けちゃうわ」

「いや。溶けるのはアフリカ軍団だけだ。ラギィ、ホワイトボードに描いてるのは、ケルンのスタートアップ?オフィスの見取り図だな?」

「YES。犯人がどーゆー風に侵入したかを考えてるの。金庫が開けられたのは、火曜の夜11時46分ょ」


女子の彼シャツ姿の妄想は良くスルが、彼シャツ姿の女子と妄想スルのは貴重な体験だが…素敵だw


「その時、溶ける音波カートリッジ弾は盗まれた」

「全弾で400kg近くあるから搬入口からしか運び出せないわ。台車が必要」

「でも、そこには警備員(セキュリティ)がいるよな。内部に協力者がいないと、とても搬出は不可能だ」


ラギィは調査済みだ。彼シャツでもヌカリなし。


「そーなの。だから、警備会社に聞いたら、その夜の担当はレジウ・ヲルシだって」

「そいつが怪しいな」

「次の日も出勤をしてるの」


ココでピンポン。誰だょ妄想中だぞ?


「お客さん?まさか…別の元カノ?」

「まさか」

「待って待って待って」


ラギィはパンツを履き、僕はホワイトボードを隠す。髪の毛をグシャグシャにしてドアを開ける。


「シガー刑事?」

「テリィたん。お邪魔スルわ」

「あら。所轄の刑事さん?おはよう」


スラックス姿のラギィがソファから声をかかる。


「コレはリッチね。格が違うわ。ベストセラー作家がおまけにつくと」

「わざわざ私達を地下シャトル便まで送りに来たのね?助かるわ」

「実は、ケルン氏の会社の盗難事件も担当してるの。で、レポートに貴女の名前があったワケ。音波カートリッジ弾の盗難とスーパーヒロイン殺し、どういう関係があるの?説明して」


すっとボケるラギィ。


「あら。私はその殺人の捜査から外れて休暇中なのょ?電話、盗み聞きしてたでしょ?忘れちゃった?」

「貴女、捜査妨害罪も着たいの?」

「とにかく、カートリッジ弾の盗難については、何もわからないわ。せっかくだから秋葉原まで送ってくれる?」


シガー刑事は、苦虫を噛み潰したような顔w


「秋葉原に着いてから何か思い出したら、必ず連絡して。じゃ私は失礼スルわ」


バタンと音を立ててドアを閉め、出て逝く。


「ラギィ。所轄とは、協力して捜査した方が良くないか?」

「わかってる。ただ…」

「ただ何だょ」


不貞腐れてるラギィ。


「彼女を見てるとイライラするの!テリィたんに"新橋鮫"とか呼ばれてた頃の自分を見てるみたいで…とにかく!先ず警備員のレジウ・ヲルスと会わないと」

「どーやって会う。六本木じゃラギィは警察権がナイぞ。そもそも休暇中だし」

「あら。捜査じゃなくて映画の撮影でしょ?エキストラを集めて頂戴」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「待ってくれ!俺は何も知らないんだ!ソレにホントに秋葉原じゃ刑事がメイドの格好してるのか?」

「知らないの?アンタ、マジ冗談は顔だけにして。この良いトコなしのネズミ野郎」

「俺だって制服を着てる。なぜ後部座席ナンだ?」


撮影用パトカーの後部座席で、ヲタッキーズ女優ver.に左右を挟まれモノホンの警備員はビビってるw


「ソレはね、アンタが地上波TVに映える顔だからょ。おめでとー」

「TV映え?今どき地上波ナンて特養の老人しか見ねぇぜ」

「とにかく、署の前にはマスコミが待ち構えてる。特養に入ってるアンタの田舎のお婆ちゃんが引きつけを起こしても困るから、今回は特別に私の上着で顔を隠すと良いわ。はい、どーぞ」


僕のバンド営業用の白ジャケw


「取調室に入るまでそのママょ。署内にもマスコミがいるから」

「わ、わかった」

テリィたん(運転手さん)、ソコ左折」


けやき坂を左折、テレビ夕日の地下スタジオに入るw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


取調室。僕は取調官役だ。似合わないw


「君。警備員というのは、蔵前橋(けいむしょ)の中では最も蔑まれる商売ナンだ」

「…ソレってロリコンじゃなかったっけ?」

「あ、そうか。いや!警備員だ。君が囚人仲間からどんな扱いを受けるかわかってるか?地獄だぞ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


調整室では、監督のトニロ達が固唾を飲んで"演技"の様子を見てる。今どきの監督は現場にいない。


「コレ、リストレットじゃナイぞ!俺は、スタパのチャイティリストレットショートしか飲まない。どんだけ俺の下で働いたら覚えてくれるんだ!またまたやってくれちゃって」


アシスタントに理不尽な文句を逝って、日頃のウサを晴らす監督。コレだけは、今も昔も変わらない。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕の"取調べ"は続く。


「あの日、警備の担当はヲタクだった」

「あぁもうわかったょ。黒白2人組の女に言われたんだ。0時に休憩しろと。そうしたら5万円やるとな。断りたかったけど、2人の迫力にヤラれて、断れない状況だった」

「黒白2人組って、この2人?」


AIが描いた黒ギャルの似顔絵と、グランド末広町ステーションで撮った白ギャル画像を示すラギィ。


「ああ。この2人だ」

「名前は言ってなかった?」

「そう言えば…白ギャルはガンヌとか呼ばれてた」


ココで一声!


「カットォ!みんな、御苦労さん!」


するとシャッタードアが開き、セットを仕切る壁が競り上がって逝く。奥から撮影クルーが姿を現す。


「な、何なんだ?コレはどーゆーコトだ?」

「とても良い絵が撮れた。やっぱり彼女、女優が向いてるな」

「私、AVはやりませんから」


呆気にとられる警備員レジウ・ヲルス。


「俺は…もう帰っても良いスか?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部から桜田門DBの照合結果が届く。


「ラセル・ガンヌ。ここ5年で派手な手口の強盗を繰り返してる。軍用のサーキットボードも盗んでるわ。かなり頭も切れるし、とても凶暴。稼いだ金でセレブみたいな暮らしをしてる」


マリレから連絡を聞きながら、衣装を返し、細々した小物を係に返却しながら忙しなく歩く僕達。


「溶ける音波カートリッジ。対スーパーヒロインのテロ組織とかに、かなり需要がありそうだわ。ガンヌの住所や仲間の情報は?」

「残念だけど住所は無いわ。仲間はほとんど蔵前橋(けいむしょ)ね…待って。コイツは違うわ。ドナル・マナス。バイヲ・レッドを追ってた黒ギャルじゃナイ?」

「間違いナイわ。マナスの写真を万世橋(アキバポリス)の全警官に配布して。必ず探し出して」


休暇中のラギィからバンバン指示が飛ぶ。


「ROG!黒ギャルのマナスは秋葉原で捕まえる。白ギャルのガンヌはソッチでお願いね」

「ガンヌも早く見つけなきゃ。カートリッジ弾の買い手が見つかったら、ガンヌも直ぐ逃亡スルわ」

「大丈夫。金持ちセレブにヤタラ詳しい人がいるんだ。任せろ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ラセル・ガンヌ様でしたら、私どもの業界では有名な方です。常に五つ星ホテルに宿泊されます」

「今、どこにいるかしら?」

「インターポンチネンタルのプールサイドです。ホテルのプールサイドで水着の幼女に囲まれながら、お仕事をされるのがお好きなので。先ほども、電話で商談中とのコトでした。ウェイターからの情報ですが」


僕(とラギィw)はマジで感服スル。


「コンシェルジュのモリズ。君は、決して顧客の期待を裏切らない人だな」

「光栄です。では失礼」

「プールサイドで商談ってコトは、きっとガンヌは電話で溶ける音波カートリッジ弾を売る相手を探してルンだわ」


そして売れたらトンズラだ。


「先ず彼女がカートリッジを盗んだと言う証拠をつかみたいわね」

「ラギィ。そろそろ六本木市警に連絡しろょ」

「待ってょ。やっと私の出番ナンだから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


インターポンチネンタルホテル。プールサイドにはビキニ美女達の中で幼女をハベらせた白ギャルの姿。


「今夜はお祝いね。準備を頼むわ」

「わかった。お姉ちゃん、じゃホテルの人に言って来るね」

「フフ。萌えるわ」


プールサイドを走り去る幼女に目を細めるガンヌw

サングラスをかけ傘付きトロピカルドリンクを1口。


「あら?」


プールの水面から姿を現すラギィ。ガンヌに真っ直ぐ視線を飛ばし肩に手を当て水から上がって来る。

陽光に、まぶしそうに目を細め、誘うように薄く唇を開いて吐息を漏らすラギィは…スクール水着だw


「大人のスク水…どストライクだわ」


息を飲み、立ち上がってナンパに逝くガンヌ。


「お見事。貴女は、自分の登場の仕方をよく心得ているようね。見ない顔だけど、インターポンチの常連客?」

「いいえ。待ち合わせょ」

「ビジネス?遊び?」


ニッコリ微笑む(スク水のw)ラギィ。


「両方出来たら素敵ね…ガンヌさん。私は、ロラブ・ロックょ」


近くのデッキチェアを腰を下ろす2人。ガンヌは、サングラスを取る。とっくに微笑は消えている。


「ロラブさん。御用件は?」

「私は、半島の北半分で有力な方の代理人なの。彼は貴女に興味を持った。ソレは貴女が面白い品を持っているからょ」

「うーん悪いけど、ロラブさん。誰かと間違ってないかしら?」


さっさと切り札を切るラギィ。


「そうかしら?秋葉原でスーパーヒロイン殺しに使ったわょね?アレは実に効果的なプレゼンだった。

断ったらどうなるかしら。私の半島のクライアントはワガママでね。断られるコトに慣れてナイの」

「惜しいわ。でも、あの品なら、つい20分ほど前に買い手が見つかったの。諦めて」

「ちょっと待って」


立ち去ろうとするロラブの袖を引く(スク水のw)ラギィ。視野の片隅に僕の怪しい挙動を認めるw


「200万ドル。1時間で用意出来るけど」

「?…感心した。危かったわ。危うく騙されるトコロだった」

「何?どーゆーコト?」


ガンヌの顔にユックリ微笑が広がる。僕は、彼女のサイドテーブルの上に放置されてるスマホを発見w


「貴女、警察ね?こんな幼女体型の警察がいるとは驚きだけど、潜入捜査(アンダーカバー)は初めて?貴女には余裕がない。まだまだ甘いわ。じゃねロラブ」


立ち去るガンヌ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


プールサイドにある花壇の横で(スク水のw)ラギィに叱られてるが…実に萌えるシチュエーションだw


「もう!何てコトをしてくれたの?」

「え。何が?ソッチは上手く行ったのか?」

「テリィたんが勝手なコトをスルから、強引にヤリ過ぎて失敗したわ。甘いなって言われたのよっ!何なの勝手に」


必死に弁解スル僕。


「だって、奴のスマホが放置してあったんだ。重要な証拠になるだろう?」

「ええっ!盗んだの?」

「いいや。通話履歴の写真を撮った」


ラギィの顔に無邪気な笑顔が広がる。萌え。


「ねぇソレ何処?」

「もうぶつなょ」

「ぶたないわ。お兄ちゃんって呼んであげる」


約束だ。スク水のママでだぞ!


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。万世橋(アキバポリス)の捜査本部。レイカ司令官がメイド2人を呼び止める。


「ヲタッキーズ。バイヲ・レッドの件はどうなったのかしら」

「母親によるとルームメイトがいたそうです。そのルームメイトは、神田佐久間河岸に住んでるそうです。だから、今から会いに行こうかと」

「頼むわ。後で報告してね…ねぇラギィから連絡なかった?」


振り向いたママ顔を見合わせるメイド2人。


「ありません」

「私もです」

「そう…スマホに出ないのょ」


即座に口が動くメイド達。


「今、地下シャトル便で移動中でしょ?」

「うん。だから、電源を切ってるワケですね」

「ふーん今日のウソつき大賞は誰にしようかな。悩むわ。貴女達はウソがヘタ過ぎて…とにかく!ラギィのためにもバイヲ・レッドを探して事件を解決して!」


スゴい剣幕。飛び出して逝くヲタッキーズ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


レトロフューチャースイート。またまたシガー刑事が乗り込んで来る。いや、今回は呼んだンだけど。


「何なの?散々勝手なコトをして、今度は頼みゴトですって?なかなか良い度胸してるわね。ヲタクのくせに」

「シガー刑事。貴女の街、この六本木で犯罪者が野放しでも良いの?」

「シガー刑事!このバスローブ、あげるよ。ウルトラふわふわで超柔らかいんだ!」


瞬間、妙な間があったが即座に首を振るシガー。


「いや。要らないわ」

「貴女も事件を解決したいんでしょ?協力して解決しましょ?」

「私のやり方に従ってもらうわ」


うなずくラギィ。


「OK。で、状況は?」

「ガンヌのスマホもテリィたんが盗撮した履歴の番号も全てプリペイドだったわ」

「身元は不明ってコトね」


今度はシガーがうなずく。


「ただ、ガンヌが秋葉原にもスマホしてたコトがわかったわ」

「きっと相棒の黒ギャル、マナスだ。バイヲ・レッドを殺したかを聞きたかったんだ…シガー刑事、マナスは何処へ通話してたか特定出来た?」

「秋葉原ヒルズ」


ラギィと僕とで畳み掛ける。


「マナスに電話しましょ。マナスがガンヌに電話するような噂を流すわ。ガンヌは報酬を一人占めスルつもり。貴女に金は渡らない」

「すると、マナスは怒ってガンヌに電話。どちらかが受け渡し場所についても話すかもな」

「ソレを盗聴するのね?なるほど。令状を取るわ」


シガー刑事はスマホを抜く。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


夜の秋葉原ヒルズ。ペデストリアンデッキ。


「探したわ。バイヲ・レッド」

「逃げちゃいけないってわかってたけど、怖くて警察には行けなかったの。まさか、スーパーヒロインのロイズが殺されるなんて」

「もう大丈夫ょ」


バイヲはベンチに腰掛けている。囲むようにして立つヲタッキーズのエアリ&マリレ。


「とりあえず、捜査本部まで来て」

「話を聞くわ。さぁ」

「カンコロリン」


最後は空き缶が転がる音だ。音波銃を抜き振り向くメイド達。瞬間遅れて短機関銃を構える黒ギャル!


「銃よっ!」

「伏せて!」

「死ねっ!」


黒ギャルは短機関銃を乱射スルが、ホボ同時に音波銃で撃たれて崩れ落ちる。エアリが突進して黒ギャルを組み伏せる。すると何と彼女のスマホが鳴動w


「もしもし?」

「エアリ?」

「ラギィなの?もしかして、今、黒ギャルのマナスと一緒?」


率直に応答するエアリ。


「えぇ。今、撃っちゃった。何か用?」

「音波カートリッジ弾だけど、いつ何処で受け渡しをするかを知りたいの」

「ROG…ねぇカートリッジの受け渡しは?」


黒ギャルは目を見開く。


「撃たれたのょ!血が出てるわ!救急車を呼んで!撃ったのは貴女ょ!」

「だから今、マリレが呼んでるから」

「えっと、神田消防(神田ファイア)ょね?119?あれ?991だっけ?」


のたうつ黒ギャル。


「マジ苦しい。助けて…」

「ソレより、貴女に耳寄りな話がアルの。受け渡しはいつどこでやるかを歌えば減刑になるわ。さ、歌って」

「ぎゃー!」


最後は六ヒルにいるラギィのスマホだ。スピーカーにして聞いてる僕とシガー刑事は顔を見合わせる。


「エアリ。貴女、まさか弾痕に音波銃とか突きつけてナイわょね?ジュネーブ協定を遵守…」

「嫌だわ。拷問は"時間(タイム)ナヂス"のマリレのお墓、じゃなかった、お箱だし」

「ヤ、ヤメて…6時。六ヒル暴利庭園に6時よっ!出血多量だわ。救急車を呼んで!」


そーは逝かないw


「あーら未だょ。ねぇロイズを撃ったのは誰?もしかして、貴女?え?どーなの?」

「ぎゃー!銃口で傷をエグるのヤメて!歌う!歌います!スーパーヒロインを撃ったのはガンヌ!ガンヌよっ!」

「…だって。聞こえた?ラギィ」


第4章 決戦!暴利庭園


「元麻布27から森タワ。ターゲットは、全身刺青のチャイニーズ。右手に黒いアタッシュケース。暴利庭園に入った」

「シガーから全ユニット。手を出すな。奴は、私とラギィ警部で片付ける…警部、OK?」

「私のターゲットはガンヌだけ」


平日の昼間だが、インバウンドで溢れかえる暴利庭園。全身刺青のチャイニーズが大して目立たないw


飛び出すシガー刑事。


「六本木市警ょ!動くな!」


チャイニーズはホールドアップw


「アタッシュケースを置いて。手は頭の後ろ!」

「ガンヌは何処?言いなさい!何処なの?」

「シガー刑事、ビンゴです」


近くのバンの後部ドアを開け、中の木箱のフタをナイフでこじ開ける警官隊。中はカートリッジ弾だ。


「あぁシガー刑事。貴女、少し早まったわ。ガンヌに逃げられた!」

「森タワから全ユニット!白ギャルを探せ!暴利庭園を全面封鎖」

「シガー刑事、無理です。インバウンド団体が…」


今も大型バスからアジアンな人々が続々庭園に入って来る。焦るラギィ。目を凝らすと葉巻の吸殻が…


アイツだわ…


何気に歩き去る人影。ピタリと後を追うラギィ。突然インバウンドを突き飛ばし、走り出すガンヌ!


「止まりなさい!」


319号線に飛び出すガンヌ。たちまちクラクションの嵐だ。ラギィが音波銃を抜き冷静に構えて撃つ。


「動くな。もう逃げられないわょ!」


4車線のアチコチに急ブレーキをかけた車が止まる中、這って逃げるガンヌ。楽々追いつくラギィ。


「やっぱり。貴女、警察だったのね」

「万世橋警察署の警部、ラギィ。貴女が額を撃ち抜き、遺体をゴミのように放置したロイズは、私のヲタ友だった…コレは当然の報いょ」

「ロイズに言われた。アンタは地獄を見るコトになるってね。まさか、地獄が貴女だとは」


額に音波銃を推し当てるラギィ。目を瞑るガンヌ…


「ラギィ!」


警官隊を引き連れ、シガーが駆けつける。唇の端、数mmで笑うラギィ。銃を構えたママ立ち上がる。


「ラセル・ガンヌ。ロイス・ロイズ殺害容疑で逮捕スル。シガー刑事、後は任せるわ」

「ラギィ、大丈夫か?」

「思ったより。テリィたん」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


黄昏の六ヒル。レトロフューチャースイートを訪れ、逮捕の顛末を語るシガー。黙って聞いてる僕達。ラギィとシガーは握手をスル。フト気がつき、僕はホテルのガウンを持って来て彼女に差し出す。


初めて見る、シガーの戸惑うような微笑。萌える。うれしそうにガウンを抱え、片手を挙げ出て逝く。


「見て。夕陽がきれい…」

「ラギィ。ガンヌを殺そうとしたのか?」

「…秋葉原に帰りましょ。テリィたん」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


秋葉原ヒルズに向かう地下シャトル便。口を開けて寝ている僕の横で、ラギィは手紙を読んでいる。


"ラギィとテリィたんは、明らかに惹かれ合っている。ところが、元カノの貴女は、自分で自分の気持ちを縛ってる。でも、一言言っておくわ。屁理屈より気持ちを優先して。でないと、生きる意味がない。ラギィには後悔するような人生だけは送って欲しくない。私みたいに"


ラギィは、横で寝息を立てる僕をチラ見スル。

そして、読み終えた手紙を小さく折りたたむ。



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"殺された友人の敵討ち"がテーマです。いつもの超天才やヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました(なお、初めてヒロインが登場しない作品となりました)。


というワケで、主人公と元カノ警部との微妙な恋愛感情などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、すっかりファミリー海外旅行の街となった秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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