第二話
時刻は午前5時、俺はソウルへと向かうべく、福岡空港に来ていた。
夏だというのに真昼の陽ざしが妙に冬のような明るさであった。
どうしてか俺は確かめるべく、ちょうどタクシーから顔を出すようにして、外を眺めた。
どうやら雲が雨が降っているかのようにあったのだった。
別にこれに関して、いろいろと、それも何か不吉なことが起こるのではないかと思うかもしれないが、しかし、今の俺にとってはそんなことはどうでもよかった。
こんなFランクの俺に初めて、ソウル地区での任務を指名をされたのだ。
正直、わくわくしていた。
戦いがしたかったというわけでもない。
自分一人がどこまでできるのか試してみたかったのだ。
そんなことを思いながら、福岡空港の正面ゲートについた。
タクシーに料金を払って、中野方へと入っていく。
それが俺にとっての初めての旅行ということもあった。
任務を旅行というのは確かに気が引けるものであるが、しかしやはりわくわくは隠せない。
なんせ俺には、あの機関の養成所から外に出たことがあまりなかったからだ。
あの小さな島で、まあのうのうと、能力者の訓練をしていたのだ。
そんな僕が、こうして、ランク祭に優勝して、そのまま、次の任務へと駆り出された。
ターゲットは、トリックスターズの本拠地、とくに不死身性を発揮させて、敵陣地を占領していけば、勝手に補給物資が送られてくる。
これは、この作戦は、一人の人間が、どこまで大衆を相手にできるかという点において、作戦が決まったのだった。
別に俺は、一人でもどうとなると思っている。
それは俺が死なないからというのもあるが、やはり、能力者はひとりで動くようなものであると、俺は思っている。
とにかくESP所持者は独りよがりの人間が多い。
そんな中でも俺は群を抜いているのかもしれないけどな。
そんなわけで、俺は、次の飛行機が出る便の時刻を確認していた。
対島行の飛行機が、6:30分ごろと表示されていたため、すこしばかり休憩を、どこかで食べに行こうかなとか考えていた。
俺の場合、体は再生力で戻ってしまっても、おなかの中は、普通の人のように、おなかはすいてしまうものだ。
特に不便もないわけで、俺は、一度福岡空港の食堂エリアを歩いていた。
少し歩くと、そばの店があった。
マイがそば好きであるため、俺もまた彼女にならってそばが好きになった。
別にいままでは、そばは好きでもなく、嫌いでもなかったのだが、しかし彼女と、マイと食べていると、どんなものもおいしく思えた。
そんなわけで、ハチマキを巻いているお兄さんの前のカウンターに座ると、テーブルのシートの下に載っている品書きをみて、そばを食べることに決めた。
「そば、お願いします」
気前よく蕎麦屋のお兄さんは返事をした。
すこし待っていて、そして俺は、マイのことを考えていた。
マイと七月のランク祭の一回戦直後に出会って、それから、彼女といろいろ会話をしながら、それなりの日々を過ごしてきた。
右腕を失いながらも、彼女のおかげで、今の俺はあるといっても過言ではないくらいに、それはどうしようもなく、そして俺の中でのあたりまえの真実である。
それからの俺は、ランク祭に一度負けてしまった。相手は、ESP学園最強の能力者、盾田剣志という最強の男だ。あともうすこしのところ、それも目と鼻の先のような試合展開と、決着であった。
あのままやりきってしまった俺は、そのまま、というよりも、突き抜けた。
負けてしまった後に、運よく敗者復活戦のリーグへと進むことができる試合展開だっために、俺のランク祭は終わらなかった。
それから西田アクト達と9人を勝ち抜いて、決勝戦、再度の盾田剣志との決闘であった。
彼の並々ならぬ決意は、確かにすごいものであった。だがしかし、奴は俺にとっては間違えている答えを得ていると思っていたのだ。
彼にも、そして彼が大切にしていたという女性の考えをしっかりと、尊重して、解決策を投げた。
――というわけで……
俺が持っているのは、盾田剣志と、彼が好きであるという、エフカという女性との2ショットのしゃしんであった。
昨日俺が泊っていたホテルにこのはがきが送られてきたのだ。
どうやら、二人はどこか南国の海にバカンスに行っているようで、盾田とエフカが両者とも、水着で写真を撮っていた。
盾田の襟元をひっぱるようにして、エフカが大胆不敵な笑顔を見せていた。
どうやら盾田は一緒にとられるのがあまり、気が乗らなかったのか、それとも、エフカという女性のの尻に引かれている人間ではないだろうか。
なんともまあこれも盾田なのかもしれないと、俺はそう思うことにしていた。
しかし盾田が、彼女とまた仲良くなったというだけでも、俺があのとき言った意味があったんじゃないかと思った。
となると、俺って結構いいことしたんじゃないか……
俺は自分のしたことに、まあ胸を張るようなことにどうしてもうれしくなった。
本当によかったなと俺は、その写真に笑顔を見せて、内胸ポケットの中へと入れた。
「ハイお待ちー!」
店員のお兄さんが、俺のカウンターへとそばを置いた。
そばのおいしそうな匂いが、俺の鼻を刺激して、そしておなかのなかの満腹ケージがとんでもなくすれすれではないかと思っていた。
だから、あつあつなのにも関わらずに、一気に口の中へと押し込みながら、そばを啜った。
口の中で、そばの腰と、良い感じのダシがあるスープがちょうどいいハーモニーを醸していた。
なかなかうまいとただひたすらに、食べた後に、なんだかむないし異様な気分が、襲ってきた。
どうせならマイも一緒に、このそばを食べたかったなとおもったのだ。
悲しくなりながらも、一生懸命に、そばを口の中でおしこんだ。
マイに申し訳なくなった俺は、できるだけ急いで食べることにした。
できるだけ、のどに詰まらないように、細かく、区切りながら、のどの音を鳴らしながら、飲み込んでいった。
と、一気に食べてしまったおかげなのか、のどにつっかえてむせた。
慌てて水が汲んであったコップを口の中で流し込んで、そしてスープをひたすらすべてを飲み込むと、ポケットのなかにあった財布を開けて、お駄賃を置いて店をでた。
店員のおにいさんが、げんきよく挨拶をしてるところがどうも、もし変えに無くなっていた。
朝食を食べた俺は、あと30分も何をして過ごすべきが考えてみた。
しかし、暇つぶしをするのにも、いまの俺には暇をつぶすような書物は持ち歩いてはいなかった。
ここで煙草を買いに売店へと足を運んだ。
今の俺は煙草を吸っていた。それは多分だけれど、俺は剣先生に影響をされてしまったと思っている。
他人に影響をされたからといって、たばこを吸うのはどうなんだろうかと問われると、俺はどうしようもなくイエスと答えなければならないのかもしれない。
しかしいちいち僕は、また、他人に影響されるような人間でもないのだ。
なぜ吸っているのか、それはどうしようもなく、この平和な世界に慣れてしまって、何かに依存しなければならない俺にとっては、戦いに依存していたいままでのような俺は、その依存先が、たばこに移り変わったというだけでもある。
吸っているのは、マイルドセブンのカプセル入りのメンソール。
いろいろ、たばこにも種類があるが、あるていど一巡をして、マイセンのカプセルに落ち着いている。
セブンスターを吸ってもいたが、いかんせん、値段が少々高いということもあり、味の飽きが来るのが早い。
何よりも、マイセンは、名前の通りにマイルドな味わいであり、そしてカプセル入りというのが大きかった。
たばこを、マイルドセブンの絵柄をしている、たばこをとった。そして売店のレジへと歩いていく。
おまけに、500mlの飲料水を買った。
この、マイルドセブンは、あと数年もすれば、名前が変更されると、ネットの記事を見たことがる。
なんとも自分が慣れ親しんでいるものが、変わってしまうというのは、悲しいものでもあった。
しかし、たばこがもう少しで、人前でも吸えなくなるのは、どうも、なんとも悲しいものであった。たった数十年前は、普通に施設でも吸っている人間が多かったが、どうも国際化というわけのわからないルールに日本がのっとられて、たばこが吸えなくなってしまったのは、嫌なものであった。
たしかに、たばこを吸わない人間からすると、俺らのような人前で煙草を吸っているような人間は、考えられないようなものだろう。
このまま禁煙者には厳しい世の中になるのは、居た堪れない気持ちになった。
なによりも、たばこの料金が、二倍近くになるのは、とても耐えられないものだ。
いくら今の状況が、この200円という金額のこのご時世で、いきなりにも400円という金額になるのは、どうも許せないものであった。
それならば、自分で煙草の葉を栽培するほうが安くつくのではないだろうか。
レジに金を払った。
いや…… いいか、いろいろと調合やらがめんどくさそうだ。
歩いて、自動ドアを抜けて、外に出た。
というわけで、メンソールのそう快感を味わいながら、フィルター近くにまで火がついていたので、消して、すぐさま二本目をジッポで火をつけよう。
まったく、なんでこんなにも世知辛いのだ。
俺は、ジッポを手に持って、慣れた手つきで先端に火をつけた。
一度だけ、たばこをやめてみようかとしていた時期があった。
しかし、結果は、菓子をたくさん食べるような人間になってしまった。どうやらこの依存先は、簡単には変えられないようだ。
元から、超再生の能力がある俺は、たばこの害は無いだろう。
だから、いつも新鮮な気持ちで、たばこが吸えるのは他人よりも優れている長所であると、自分に言い聞かせるように、無理やり考えるのをやめた。
外は秋だというのにも関わらずに、真夏のような真昼まであった。
ここで俺は、ポケットの中にあった、端末をみた。
マイからのメールが届いていないか、確認をしようと思いついたからだ。
メールアプリで新着を確認すると、どうやら、何度か送ってきているようだった。
メールの題名には何も書いておらず、相変わらずにマイらしいなと、メールを開いた。
どうやら、メールは、付属のファイルが、画像のファイルがついていた。
その画像ファイルを開いた。
どうやらマイは、俺にはわからないような像のマスコットキャラのなかに人間が入るような着ぐるみをローアングルで撮っていた。
どうやらかなり近い距離で写真を撮っていたようだった。これまた、ツーショットとかではなく、よくわからないようなアングルで、それもいい感じにかわいい着ぐるみが、こわく映ってしまうような、絶妙なアングルで撮っているところに、マイらしさを感じたのだ。
その画像で、すこしだけさみしかった気分が紛れた。彼女がしあわせに過ごしているだけでも良かった。
そしてメールの本文を見た。
)かわいいでしょ、このマスコットキャラの名前は、幸せを運ぶぞうさんだって。
わたし幸せになれそうかな?(笑)
というものだった。
幸せか…… 彼女は今しあわせなのかな。
確かに彼女は、あのランク祭が終わった後に、俺と一緒に、彼女の家へと、俺を連れて帰ってきた。
そして、いまは、不登校であった学校に通っている。それもいままでとは違うように、自分の足でだ。
また、ともだちも新たにできたようだった。
ならば…… 幸せだよな。
そうだ今彼女は、マイは幸せだ。
俺はマイにメールを返そうと少しだけ考えて、送った。
それは、幸せだなんてのは、マイにしかわからないものだ。
でも他人から見た、それも俺から見たマイは、以前よりも生き生きとしているように見える。
〉だから、マイは今までよりも、しあわせじゃないのかな?
そう送った。
そしてすぐさま返信が返ってきた。
〉しあわせだよね。
うん、気づかせてくれてありがろう。
でもね、マイはタスクと一緒にいたい。
タスクと一緒にいてマイは、幸せだと思う。
だから、元気で帰ってきてね。
無理だけは、無理はしないで。
そう返ってきた。
無理だけはしないで、そう彼女は言っていた。
急に、彼女がいとおしくなった。
だけれどあの地で、任務をしてそれからだ、と自分に言い聞かせた。
〉俺もだ。無理せずに頑張ってみる。
俺が壊れないのはいつもマイのおかげだ。
ありがとう、大好き。
大好きだなんて送ってしまった。
変身中のテキストが画面の真ん中に移っているあたりで、頭の中が熱くなってきた。
)マイもタスクのこと大好き。
文化祭までは、帰ってきてね(ピースの手文字)
文化祭でマイは、バンドメンバーで演奏をすると聞いた。
だからこそ、早く帰る動機ができた。
彼女のためにも頑張らなければ。
〉ああ、頑張ってくるよ。
絶対に間に合わせてくる。
じゃあ、そろそろ飛行機に乗る時間だ。
と、メールを返信して、待機所への列へと向かった。
あと数時間で対島についたのちに、船であの暗黒の半島へと向かう。
そこには数々の、能力者がいると聞いたことがある。なによりも、いちど焦土と化してしまった土地であるために、完全に、文化がちゃんとある日本とは別世界なのだ。
そこで俺は、やれるだろうかと、考えてみた。
まああの機関で、能力者育成機関で一番をとった俺ならばできるだろうと自身が沸いてきた。
絶対に敵勢力を壊滅させて、マイのもとへと帰ってくる。
唇をかみながら、俺はそう決意した。
作戦内容は、敵勢力の壊滅を第一に、そして一人の少女を連れ出すというものだった。
一人の少女というものが、俺にはどんな恩案おこなんてのはまったくと、わからない。
どうやら、最重要人物《ランクS》に指定されている、その女の子の行動で、国家間の争いが暴発してしまうほどの人物と、作戦司令を行っている男が言っていた。
初めての現場投下作戦ということもあるため、俺にとっては、緊張するものだ。
盾田剣志や、ほかのAランクから上の連中は、少なからず、実践というものを経験している。
Bランクからは、国による自衛のための人間が、多数を占めている。
北の、ソビエト連邦構成共和国。
西の、旧中華人民共和国にうって変わって、大東亜連合国。
南の、オーストラリア合衆国。
そしてなによりも、世界各国に、ネットワークを構築しているようにして成樹している反社会組織トリックスターズ。
終わらない国家間の戦いによって社会主義国家、共産主義国家は、規模そしてテリトリーを着実に伸ばしていた。
もしこの世界が、平和に満ちていたら、社会主義の国などは、放っておくだけで、簡単に体制が崩れてしまう。
だが、しかし、戦争という名の略奪という目標を与えてしまえば、どこまでも伸びていく竹のように、成長はずっと続いていくのだ。
なによりもアメリカが第二次世界大戦の後に、弱小国となりさがったために、このような惨事となっているのだった。
壮大な大国、敵対勢力が、日本を囲っている今、俺たちのような、能力者がどうしても必要となっていた。
かつての日本のように、アメリカがどらえもんとのび太の関係のように、どうにかしてくれと言ってくれといって、どうにかしてくれるような状況であった。
だがしかし、いまは、暴君の誕生によって経済破綻。
北の旧カナダ、新帝ブリテン国によってアメリカは属国となって、浸食されるように、すこしずつ破滅を迎えている。
いまさらにして、こんな話をしても仕方ないのだけれど、しかしこの状況は、どうしようもないことであったのだ。
結局のところ、自身の安全は、自分でしか確立させていかなければならないのだ。
血なまぐさい戦闘から、一般人を、能力を持たない連中を、俺たちは何事もなかったように守っていくというのが、能力者の運命、宿命ということである。
そして俺は、能力者育成施設で、トップを取った俺は、それから特別任務を与えられることとなった。
向かう先は、もとは朝鮮人民共和国という国である。ゆいいつ、大東亜連合国の隣近であるにも関わらず、連合国にたいして対立した国である。
しかし二〇一〇年に最新の撃墜回避型である戦術核によって、焦土となってしまった。
そして、その朝鮮半島に、一人の少女を救出しなければ、ならない。
二〇一五年のいま、無法地帯となっている地域だった。
その地域はそれなりに栄えていたが、大東亜連合国に反旗を掲げたのちに、終焉の鐘〈Bell of demise〉によって跡形もなく、木っ端微塵に、塵となった。
終焉の鐘の性能は、最新の索敵回避能力と、最小で最大の打撃を与えることができる小型核弾頭の用法が兼ね備えている、殺戮という一つの行動に対して最高の効果を発揮することができる兵器だった。
それらの核は、戦術核と呼ばれ、一つの大陸をいとも簡単に壊滅状態へと、変化させることが容易にできる。
しかし、近年の能力者によって、その核自体の影響は、まったくと意味がないものとなっていた。
拒絶系統のAランク以上を10人も集めれば、簡単に無力化が、戦術核に対してできてしまう。
戦術核を押さえる防御策である、拒絶系能力者が一人残らず”何か”によって死滅させられて、その国は消えてしまったのだ。
表での見解は、何者かによる暗殺ということらしい。
実際は、どうなのか、今の俺には、まったくとわからずしまいだ。
なによりも、当時現地にいたわけでもない。
何があったのか、わからないことだらけである。
一つ言えることは、戦術核によって世界から消えてしまったというくらいだった。
次の便の時間が迫っていた。
待合の待機所では、20人くらいの人が集まっている。
テレビが前にあった。
一人の女性アナウンサーが日本地図に、棒をしめしていて何かを紹介しているようだった。
どうやら放送されているのは天気予報であった。
天気予報によれば、正午からは快晴になるとのことだった。快晴ならば、洗濯物を干しておきたいな。
俺が住んでいたトタンハウスのすぐそばには物干しざおがあって、そこでよく洗濯物を乾かしていた。
だけれど、今俺は、あの島にはいない。
あの俺が住んでいたトタンハウスはどうなるのだろうか。
俺の唯一帰る場所であった場所だ。
マイとユウとで、時折ちいさな喧嘩などをしながら楽しく過ごした場所。
だけれど、あれらは過ぎた過去であった。
だからこそ振り返らない。
いまは、マイの護衛役として、彼女と行動をともにすることとなっている。
しかし、今は、本部の特別指令によって、例外的な対応を取るために、護衛任務ではなく、ソウル地区への強襲任務が俺に任されている。
そして無性にマイに会いたくもなった。
そんなナイーブになった思考を切り替えるために、周りの人たちを見渡した。
彼らは、俺と同じように対島で降りていく人々だった。周りを見ると、スーツを着た男性。妊婦、そしてお年寄りが何人か。
初めて、歳が違っている光景を目にした。
あの養成学校では、俺のような若い人間しかいなかった。養成学校というよりも、あの島といったほうがいいのかもしれない。
手にした紙、電車で言うところの、切符というものを見た。対島行きと書いており、本当に旅に出ている(作戦中ではあるが……)という実感が湧き出ていた。ここまで浮かれているのはさすがにダメだなと自信を試みて、浮かれている心を律する。
だけれど、それも仕方のないくらいに、胸の高鳴りは収まらなかった。
そうしていると、津島行きのアナウンスが流れてきた。そろそろ、この日本本土から出る。
何もかもが初めてで、新鮮に見えた。あのいつも同じ光景だった、あの養成学校とはまったくと違う、景色がだんだんと移り変わっていく感覚。
真新しい、一つの映像作品を見てるような。
切符を、機械に通して、飛行機へと乗り込む通路を歩いていく。
長い廊下が何度か続いて進んでいくと、今度は階段を数段ほど登る。
そしてまた廊下があって、その先には、飛行機へと乗り込む入口があった。
キャビンアテンダントの二人の女性が、一人一人に挨拶をしていき、中へと手を差し出して案内していた。
俺はその二人に軽くおじぎをして、中のほうへと入っていく。
四つの席が、左右両方にあった。
一人一人に指定されている席があるために、俺の席へ奥のほうに進んでいった。
一番端のところへと、つまりは飛行機の一番うしろで、右側端の席に着いた。
右手上にあった窓を開けて、外の様子を眺めていた。いまだに発信することはない。
どうやら準備には時間がかかるようだった。
この定席している飛行機は、中型のプロペラ機だということで、普通の一般的なジェット機とはサイズが小さいらしい。
何度か、養成学校のカリキュラムでヘリを操縦したことがあるけれど、これほどまでにおおきなものに乗ったのは初めてだった。
最初はすこしだけ緊張をしていたけれど、だんだんと慣れてきて、リラックスしている状態で、離陸するまでの時間まで、ずっと瞑想というよりか、目をつぶっていた。
意識がぼおーっとしてきたあたりで、そろそろ動き出すというアナウンスが流れてきた。
さきほどの入り口で案内していた、キャビンアテンダントのお姉さんの声であった。
そうして俺は対島へと向かったのであった。
対島から朝鮮半島に向かうためには、船に乗る必要があった。しかし今は船の航路はない。
なので対島に、組織の一人が来ることになっていた。
俺は対島へと着いた。
時刻はちょうど正午あたりをさしている。
福岡とはちょっとだけ、田舎のような雰囲気を醸し出していて(島民の皆さんごめんなさい)、気候はすこしだけだけれど、ひんやりとしている。
福岡の大都会にあったような、コンクリートビル群はなく、古ぼけた印象がある。
だからひんやりとしているのか。そこのところはわからなかった。
さび付いた鉄製の網が空港を取り囲むようにしてあった。
どことなく、雰囲気的に哀愁を漂わせてもいるのだ。
田舎というもは、失礼であるが、風がほほを掠って、そのまま、どこにたどり着くはずもなくして、空へと帰っていくようなさみしさ。
たしか、それなりに多い朝鮮人が、この島へと難民として来たようなことを歴史で教えられた。
だからだろうか、日本でありながら、異国のように感じてしまうのは。
ここ、津島という目標地点までのタイムリミットは、残り17時間とかなり余裕があったのだった。
まず、飛行機に降りてから、俺は、そそくさと、空港を出て、ホテルに向かう歩道を歩いていた。
いかにも、俺のような外の人間が、きたことに、島の人たちは、あきらかな疎外感を出している。
あははと、いかにも人が好さそうな演技をすると、一人の女性(何かしらの受付の人)が、こんなところになにをしに来たのかと聞かれた。
観光ですと答えて、それから注意事項を教えてもらった。
島の南のほうには、難民街となるものがあり、あまり難民が来て、5年経った今でも、治安はよくはないそうだ。
不審なことはしないと、心配性である彼女に、口酸っぱく告げて、この空港エリアをあとにした。
看板に、海鮮物は不作ではないとまるで神経に訴えてくるような赤字のペンキで書かれていた。
このような海鮮物だよりの、島で、近くの海域をめちゃくちゃにしてしまうような、あの大陸ごと焦土と化してしまった、あの出来事で放射線が海の生態系を破壊して、この島の経済状況は壊滅的であるとわかる。
いわゆる二次被害というものだった。
だからこの島には活気がないのだろうか。
それから街を歩いて行った。
対島という島は、俺が住んでいた近くにある島、奄美諸島と同じくらいの街の設備であった。
しかしながら、南北と、位置が違うために、すこしばかりの街並みの様子や、文化圏などが、違うものとなっていた。
言うならば、異国の影響を受けている日本と言ってしまったほうがいいんじゃないだろうか。
レンタカーを借りて…… なんてのんきなことをしているような俺でもなかった。
しかし、制限時間までの目的地移動までは、それなりに自由に過ごせるとなってしまうと、俺のような、どうしようもないほどの田舎者は、時間をつぶす要領は持ち合わせてはいない。
2キロすこしのところに、民宿があるとのことだったので、歩いて移動した。
ところどころ、自然があふれており、日々の荒れた精神が、それなりにキレイになってしまうんじゃないかというくらいにキレイな自然だった。
しかし、ここまで、何もないようなところであると、福岡で滞在したほうがよかったのではないかと考えた。
まあいいか……
それよりも、この島、高低差が激しくないか。




