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プロローグ



 いつものように指定された場所に行き、何も変わらないような毎日を送る。

 そして誰もいない家に帰り、ただ当たり前に時が過ぎるものだと思っていた。

 ――それはある日を境に変わっていった。




 ある晴れた日、僕はいつものような日常を過ごしていた。

 何かが変わらなくとも、何かが失うというわけでもなく、それでも確かに日常というにはそれは全うに当てはまるようなそんな日だった。


「ただいま」


 誰もいない家に上がる。これもまた僕にとっての一つの日常だった。

 数年前におかあさんは、僕とお父さんを置いてどこかへ消えてしまった。

 だから僕は、小学六年生にして一人暮らしというわけである。


 たまたま今日は、久しぶりに父さんが家に帰ってきた。


「ひさしぶりだなタスク」


 その時のお父さんの顔は、どこかはるか先の未来のような、遠くを見ているように、その目は今の僕を写してはいなかった。


「お父さん、今日はお仕事おわったの?」


 まるで無邪気を装うようにして彼に、お父さんにそのような質問を投げかけていた。

 でも、僕は、あのときの僕は、お父さんが久しぶりに家に帰ってきたということが、うれしくてうれしくてたまらなかった。

 だからだと思う。僕が彼に演技をするような言葉使いであったのは。


 だけれどそんな僕を脱ぎ払うかのように、お父さんは、僕の腕を引っ張った。

 むりやり彼の車へと投げられるようにして引っ張ってこられた。

 その時の僕は、何かサプライズがあるのかという期待と、いつもはしっかりと僕に対して受け答えをしてくれるお父さんとは全く違うような様子に、なにかこれから始まるのかという戦慄に似た感情が幼きながらに駆け巡っていた。

 そして車のなかでの会話は一切無く、僕は大きな病院のような施設へと連れてこられたんだ。


「お前を救うためなんだ…… 許してくれ」


 その言葉と共に、気づけば俺は、見知らぬ医療施設の手術室のようなところに横たわっていた。

 そしてその現状に理解すらできなくなっていた、僕をよそに現実は進んでいく。

 次の瞬間、頭を鋭い何かで切り付けるような痛みと共に、暗闇が僕の視界を覆い包んだ。


「父さん……?」


 たしかそんなことを思いながら、僕はお父さんが暗闇で見えなくなるまでしっかりと彼の顔を見ていたような気がする。





 長い時間眠っていたのか、重いまぶたを開けてみると、僕の周りに広がっていたのは、辺り一面炎の海だった。

 一大事と言わんばかりに誰かの声が悲鳴が、ここまで聞こえてきた。

 僕はベットにシートベルトのようなもので縛られていて、身動きができないでいた。


 火は僕の全方角を一歩づつ進んでいく、まるで炎が僕の存在を否定しているかのようでもあった。

 もちろん動けなくなった僕は、身を焼かれる感覚を、脳がしびれるくらいにずっと味わった。


 するとこの世のものとは言えないほどの爆音が僕を襲った。

 意識はあった。体が砕け散っていく感覚までもしっかりと。


 身が焼けていく激痛が僕にただ淡々と伝わっている。

 炎に包まれ、手足もなにもかも無くなってしまった凄まじい激痛の中、僕は気づいた。






 僕は現実ぼくを終わることができないと。























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