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第六話 嫉妬

 レイス様からの呼び出しなんて“アレ”しかないじゃない。


「とてもお似合いですわ、オリヴィア様!」


「当たり前でしょ〜?」


 私は侍女長と自室で、悠々と着ていくドレスを選んでいた。


「はぁ~……レイス様から告白されたら、何て返そうかしら。『すぐにはお返事することは出来ません』って感じで、軽く焦らしちゃおうかな~」


 どちらにしろざまぁないわね、“鉄の女”――。


 王立学園に入学したての頃から、あの女が気に入らなかった。


 公爵令嬢で容姿端麗、スタイルも良いだけじゃなく、成績も他を寄せ付けないほどダントツで優秀。まさに『完璧』を絵に描いたような人間。


 私よりも学園で注目を浴びていたアイシャに――心底嫉妬した。


 ただ、アイシャはいつも無表情で淡々とした振る舞いをしていることに、私は違和感を覚えた。レイス様の婚約者だったアイシャにはカスみたいな取り巻きも多かったが、当の本人は煙たがっていたようにも見えた――。


 一方のレイス様は高身長で端正な顔立ちに、冷静沈着な気質を持つ生粋の王子様といった感じ。立ち振る舞いは洗練され尽くされ、男からも羨望の眼差しを浴びるほど。


 アイシャとレイス様の二人は、誰が見てもお似合いに見えた。


 けど、そんな二人の様子を影から観察していると、どこかよそよそしい雰囲気が常に纏っていることに気付く。二人の婚約はもちろん政略的なものであり、互いに“恋愛感情などない“とすぐに分かった。


 大体、なんで会話するのにお互い離れたベンチに座るわけ? 普通一緒のベンチに座るでしょ。


 アイシャには、間違いなく普通の人に備わる“感情”が欠落している。


 チャンスだと思った。


 何とかしてアイシャを出し抜こうと考えた私は、まずはレイス様に近づいて親密になろうと試みた――。


「この前観に行った演劇が本当素晴らしくって、私涙が止まりませんでしたわ~」


「そうか。泣くほど感動する物語だったんだな」


「それはもう~、涙なしには観れませんでしたわ。レイス様は演劇などご覧になられるんですか? もしよろしければ、人気沸騰中の券を差し上げますわ――」


 他愛のない話をメインに、さりげなくアイシャの株を落とす話も混ぜる。


「――女は恋に落ちると、盲目になってしまうんですよ~」


「盲目?」


「はい。人目を気にせずお相手の方と“触れ合っていたい”と思いますし、たくさん愛を込めた手作りのものを送ったりしてしまいますわ。お相手の方が好きじゃない場合、ただの迷惑ですけどね~ほほほほ」


 こんな行動、アイシャは絶対にやらない。レイス様、残念ですがあの鉄人形はあなたに興味など一切ないのよ――。


 それからはアイシャがレイス様に近寄れないよう、出来るだけ私が彼の側にいるようにした。あの女は私がいると、無駄に気を遣ってかレイス様に軽く会釈する程度でほとんどスルーする。


 ホント馬鹿な女。


 普通なら『私の婚約者に近寄るな』と目くじらを立てて突っかかるでしょ。大人ぶってんじゃねぇよ。そういうとこが癇に障るんだって。


 『私の婚約者は簡単にブレたりしない』とでも思ってんの?


 そんな余裕かましてて、ホントに大丈夫かしらね――。


 そしてついに今日、レイス様から「大事な話がある」とお呼びがかかった。今までの努力が報われる瞬間が来たのだ。


 レイス様の告白に対しての返事は考えた。


「レイス様のお気持ちが、真実の愛だと証明して下さるのなら……喜んでお受け致します」


 これでしょ。もし「どう証明すればいいんだ」と返されたら。


「私と……口付けして下さい」


 この“……”がポイント! このちょっとした間が照れてる感じと揺れ動く乙心を演出してくれる!


 心の準備は万端。いざ出陣――。


 呼び出されたのは港の桟橋。生温い潮風が肌にベタつく。海猫の鳴き声もやたらうるさい。正直、もうちょっと別の場所にして欲しかった。


 桟橋の先で待っていると、レイス様が乗っている馬車が到着した。彼が馬車から降りる際、一瞬だが席にカーネーションの花束が積まれているのを私は見逃さなかった。


 過去にレイス様から「女性は何を送られたら嬉しいんだ?」と尋ねられた時、私は「カーネーションを好む方は多いですよ。私は特に赤が好きです」と話したことがある。


 間違いなくあれは、私に告白するために用意されたもの。


 これ勝ち確だわ――。


「待たせたな」


「いえいえ~レイス様のお呼び出しなら、何時間でも待っていられますわ」


「そうか。しかし潮風が不快だな。これだから海はあまり好きじゃない」


「そうだったんですか……」


 いや、ならなんでここ選んだし。


「それよりレイス様、大事な話とは何でしょう?」


 私は期待に胸を膨らませ、両手を腰の前に組んで微笑んだ。


「オリヴィア……」


「はい」


「学園で君には女性について色々なことを教わった。無知だった俺に知識をくれたことに……礼を言いたい」


「そんなこと、わざわざお礼されるほどでもございませんわ~。私たちの仲ではございませんか」


「そうか……」


 んなことどうでもいいから、早く聞かせて。いい加減もう待てないわ。


「大事な話とは……まさかその件で?」


「いや、一つ頼みたい事があるんだ」


 ん? 頼みたい事?


「今後二度と、俺に近づかないでもらいたい」


 ……は? ――。

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