表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

文字を変えた昔ばなしシリーズ(?)

嗅ぐや姫

作者: 桜橋あかね

遠い、遠い昔のお話。

……いや、どれくらい昔かは分からないが、匂いに敏感でどんな物でも嗅ぐ姫が居ったそうな。



その名も『嗅ぐや姫』。



この話では、そんな嗅ぐや姫の為に周りが奮闘する (?) お話である。


▪▪▪


ここは都から少し離れた場所にある、宮廷に献上する竹細工を作る名の通った名家がありました。

とある昼下がりの事、そこに居候している嗅ぐや姫はそこの主人を呼んでいました。


(じい)や!(じい)は何処に居る!」


「うるさいわ、どうしたんじゃ」

主人が作業場から、居間に顔を出します。


「お腹が空きましたのよ!お昼はまだかしら」

嗅ぐや姫はそう言います。


「居候のクセに、生意気な……」

主人がそう呟くと、嗅ぐや姫は睨みます。


「……上質な竹、丈に見合わないこの家にありったけ渡しているのに」


「なぜそこで駄洒落を言うんじゃあ……仕方がない、婆さんに頼むか……」


主人が洗濯場に居る主人の奥さんの所に向かおうとしたら、嗅ぐや姫は止めます。


「ちょっとお待ち」


「なんじゃあ?」

主人は振り向きます。


「確か、宮廷に出入りしている料理人が居ましたでしょう?そのお方に、作らせて欲しいの」


▫▫▫


嗅ぐや姫の一言で、料理人2人が集められました。

料理場に待機するよう言われて、待っています。


「どうして、嗅ぐや姫の所に呼ばれたんだろうな」

料理人の一人、松がそう呟きます。


「どうやら、ここの奥さんの料理は匂いがつまらないから、珍しい匂いのする昼飯を食べさせろ……的な話らしい」

もう一人の料理人、梅がそう言います。


「んな無茶な要望を……」


そうこうしていると、嗅ぐや姫が料理場に顔を出します。


「御二人、集まっていますわね」

嗅ぐや姫が、そう言います。


「早速ですけれど、そなた方に『珍しい匂いの御飯』を作って欲しいの」


「は、はあ」


「見事、珍しい匂いの料理を作ってくれたら……宮廷に嫁ぎますわ!」


……その発言には、料理人達も唖然する。


「……嘘よ、嘘。そなた方の生活に困らない程度の、お金をお渡ししますわ。それでは、お待ちしていますわよ」


▫▫▫


「おい、どうする」

梅が言います。


「……珍しい匂いって要望、あまりにも大雑把すぎてなぁ」

松がそう返す。


「まずは、ここの奥さんに普段の料理を聞かんとな」


二人は、主人の奥さんを呼び止めて、事情を話します。


「あの子の無茶振り、悪いわね……それで、普段の料理は―――」


どうやら、麦飯と汁物、シンプルな野菜の漬物と日によって魚を出しているらしい。


「そうでしたか、態々(わざわざ)ありがとうございます」

松がそう言います。


「それじゃあ、私は主人の仕事の手伝いを」

奥さんはそう言い、その場を後にしました。


「……なんか、閃いたようだが」

松の表情を見た、梅がそう言います。


「手伝ってくれ、梅。腕の見せ所、さ」


▪▪▪


約1時間後。


「うーん、お腹が空いたわ」

料理を食べる居間の方で、嗅ぐや姫はそう呟く。


「姫、料理が出来上がりました」

松の声が、(ふすま)の向こうから聞こえます。


「待っていましたわ!早く入りなさいっ」


(ふすま)が開き、二人の料理人が料理を出しました。


「………?」

嗅ぐや姫は、首を(かし)げます。

普段と同じ焼き魚料理にしか見えないから、です。


ですが、匂いを嗅ぐと……


「……これは、何かの果実?」

嗅ぐや姫は、そう呟きます。


「何の果実を使っているか、お分かりでしょうか」

梅が聞きます。


「……うーん」

必死に、匂いを嗅ぎます。


「……うーん、分からないわ」


ついに、嗅ぐや姫はそう言いました。


「正解は、この『柚子』と『檸檬(れもん)』。とても珍しい果実で、とても酸味のある実なのです」

松がそう言い、実物を見せました。


「へえ、これが柚子と檸檬(れもん)……あの、お魚食べてもよろしい?」

二人の料理人は、頷きます。


「……ほんのり酸味がありますわ。それなのに、美味しいわね」


▫▫▫


嗅ぐや姫は、出された料理をすべて食べました。


「美味しかったわ、とても良かったですわよ」


「……かなり質素な焼き魚料理でも、一手間で変わるモノなのです」

梅が、そう言います。


「そうですわっ!私を料理人に、してくださいまし!」


「「ええええっ!?」」




嗅ぐや姫は、本当に料理人の一人になったそうな。


めでたし、めでたし……?

とある会話で『嗅ぐや姫』が出たので、書いてみました。

名前のクセが強い、とどこからか突っ込まれそうですが(笑)


読んで頂き、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ