表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
楽くんはいつも楽しそう  作者: ゆず
1/2

プロローグ

「君って変わってるね」


まさしく地獄のような空間で、神から遣わされた天使のように美しく愛らしい見た目をした彼は言った。


「ボク史上、他人に恨まれ呪われ怨嗟と悲哀にまみれているのに、君はまるで聖女みたいだ。まあ、聖女なんて存在してないと、ボク個人は思っているけどね」


散々弄んで満足したのかはたまた最初から玩具(じぶん)に興味などなかったのか、綺麗に輝く髪を弄りながら彼は不思議そうに首を傾げた。


「人間なんて一皮剥けばみぃんな同じ。あ、今は皮って言うより肉体から剥き出しだったね」


うふふふふ、と楽しそうに笑う彼に話したくても話す器官を壊されているので残っている右目だけをきょろりと動かした。


「君みたいな人間、初めてだよ。ボクに遊ばれて今そんな状態なのに、泣きも怒りも命乞いも狂いもしない。君は腹が立たないの?」


腹を立てても仕方ない。怒っても仕方ない。泣いても仕方ない。

ごめんなさい、わかりました。この二つの単語しかそもそも知らないのだ。

もう話せない自分の言葉は彼には届かない。

だから静かに目を瞑る。


「……なぁんか、思ってたのと違うなぁ。君ほど他人に死を望まれてるコも中々いないし、どんな悪人かと思ったら全部受け入れて赦すし、ううん? ボク人違いとかしてないよね。魂に間違うとかないから大丈夫だと思うけど」


細く繊細な造りの指先を顎に当てながら暫く考えていた彼は、突然閃いたように目を輝かせて両手をパンっと合わせた。


「君はなんか違うから解放してあげる。ボクが魂を返すなんて、多分今日が最初で最後だよ!」


彼の手から光が溢れ、ふと体が軽くなった心地がした。


「輪廻の環に戻って、君は新しい君になるんだ。まぁ、そうなった時点で今の君では厳密には違うものになっちゃうけど、別にいいよね。大した人生じゃなかったし、むしろ次は楽しく暮らせるかもしれないよ」


ボクのことも、今の君を形作る全てのことも忘れてね。


「じゃあ、次の人生を楽しんで」


薄れていく意識の中で、緑の目の怪物が嗤った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ