子どもの世話と裁縫と
翌日、ルタはスーと一緒に小さな子どもの相手をする。
目の前を子が駆け抜けていく。
視線を他に移すと、ぬいぐるみを抱きしめている子もいる。
せっせと積み木を積む子もいて、ルタはあっけに取られた。
「いろんな子がいるんですね」
「そうね。ここはそういう場所だから」
ルタがスーと会話していても、何人かの子どもが近くを走り抜ける。
「あー!」
気がつくと、ルタのエプロンの先端が切断されていた。
「さっき、走っていった子かな」
「買ったばかりなのにー」
ルタはエプロンを先端を確認する。
両端とも同じように切り取られたエプロンを、ルタは見つめていた。
「まあいっか。これはこういうデザインと思えば」
「メンタル強くてうらやましいわ。お昼寝の時間に繕っておこうか」
気持ちと切り替えたルタは、スウの言葉にまた困った顔をする。
「裁縫は苦手で……」
「慣れておこうか」
お昼寝時間になり、スウと別室に向かうと、そこには青年がいた。
「こんにちは、スウさん。それと……」
「はじめまして。私はアルタイスア、ルタって呼んでください」
「僕はデーネブ。ネブって呼んでね」
「ネブさん、ルタさんエプロン切り取られちゃってね」
「わかった。ちょっと待ってね、裁縫道具持ってくるよ」
「持ってきたよ」
「……ありがとうございます」
裁縫道具をルタは困った顔で受け取る。
「お手本見せようか」
ネーブはゆっくりと丁寧に説明しながら、エプロンの片側を繕う。
「こんな感じかな」
「ありがとうございます。やってみますね」
ルタは針に糸を通し、エプロンを塗っていく。
「少し休憩しようか。お茶、淹れてくるよ」
半分ほどで針が折れ、糸をほどくルタを見て、ネーブは席を立つ。
「なかなか難しいですね」
「慣れがいるからね」
作業をしていたルタは背筋を伸ばし、腕を上にあげる。
こわばった肩と首の緊張がほぐれていく。
「向こうではアイル君がやってくれた?」
「あ、はい」
ルタは少し遠い目をしてスウに話す。
「代わりに料理とか掃除をやってました」
「そっか。アイル君は今?」
「自分を試してみたいって、前の職場で別れたっきりです」
「なら、ルタさんはいろんなことに挑戦しようね」
「どうして?」
「自分を磨いておくってのはすごく大切なことよ」
ネブがお茶を持ってきた。