街を離れる選別に
ルタは辞表をたたきつけ、職場を辞めた。
職場にあった荷物を持って、ルタは道を歩く。
「そういや新大陸見つかったんだってよ」
「最近定期船でたやつ?」
「そう。俺たちも行くか?」
「家族ほっぽって行けるかよ」
「んだな。住み慣れた地を捨てて行ってもなあ」
ルタは通行人の会話を耳ざとく聞いて、メモを取る。
(家族、か)
公園のベンチに座り、胸のペンダントを見つめるルタ。
そこには一枚目にはアイルとルタ、と男性と女性が写っていた。
写真をずらし、ルタは二枚目を見る。
そこには別の男性と女性が赤ちゃんを抱いていた。
「よし、行くか」
ベンチから立ち上がり、ルタは通いなれた道を歩く。
ルタは墓地で祈る。
祈り終えると別の場所へ歩き、再度祈った。
(行ってきます。お父さん、お母さん、おじさん、おばさん)
祈り終えたルタは、きびすを返し、宿へ向かう。
「新大陸へ行くのかい?」
「はい。自分を試してみたくて」
「そうかい、寂しくなるね」
「成功したら、また戻ってきますから」
「無事を祈るよ……っとそうだ!」
宿を引き払う手続きをしていると、主人は奥に向かう。
「帽子とサングラス、ついでに本。餞別だ」
「いいんですか?」
「ルタちゃんの両親にも世話になったからね」
「ありがとうございます」
「帰ってきたら、話聞かせておくれよ」
宿屋の主人と約束して、ルタは帽子とサングラスをつけて船着き場へ向かう。
船は波しぶきを上げ、進む。
「風が気持ちいい」
ルタは帽子を押さえ風と太陽を浴び、潮騒を聞く。
「新大陸には、なにあるんだろうな」
期待に胸を震わせて、ワクワクした様子でルタは船の進む先を見つめる。
「あれ?」
遠くに黒い雲が見えた。
ルタは船の甲版から船室に戻り、窓から海を見る。
しばらくしてポツポツと雨が降ってきた。
「本でも読もう」
しばらく窓から海を見ていたルタは、宿屋の主人からもらった本を開く。
「手紙?」
本を開くと手紙が挟んであった。
『アルタイスアへ この本には魔法が書かれています。何かの役に立ててください』
簡潔な分が書かれ、末尾に父と母の名前が記載されていた。
「ありがとう、お父さんお母さん」
ルタは手紙を抱きしめ、本を読み始めた。