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恋愛系短編集

偽物の瞼(まぶた)

作者: 涼風岬

 一人の女性がバス停に立っている。彼女の名前は二瀬桃。彼女の視線の先には男性がいる。名前を知らない彼を見つけるのが、彼女の習慣となっている。彼とは路線が違う。先に到着時間を迎える彼がバスに乗り込む。


 ある日たまたま早くバス停に来た彼女は、彼を見かけた。それから、彼女はスマホを操作したふりをし、レンズ越しに彼を見るのだ。それが彼女の唯一の楽しみになっている。


 彼女は彼に一目惚れした。彼女は想いを伝えたいと思っている。彼は、くっきり二重で端正な顔立ちをしている。彼女は容姿に自信がない。特に一重瞼に劣等感がある。それで彼女は想いを伝えられないでいる。


 そんな中、大学の夏期休暇に入った。悶々としたまま彼女は生活していた。その中、彼女は決心する。それは二重瞼にする事だ。彼女は勇気を振り絞り実行した。


 休暇が明けると、彼女にとって別世界だった。大学の休憩時間、いつも彼女は俯いてた。そんな彼女が異性から声を掛けられる。それは彼女の後押しとなった。そう彼へ告白する事である。


 いつもように彼女はバス停へと向かう。そこには彼がいる。彼との距離には彼女の決めた境界線が存在する。今日の彼女は、それを打ち破る。今日の彼女は躊躇なく彼へと足を進める。


「おはようございます」


「……おはようございます」


「あのう」


「はい」


「貴方が好きです。いつも拝見していました。私と付き合ってくれませんか?」


「えっっ……ごめんなさいっ」


「えっ……そうですね。彼女さんが、いらっしゃいますもんね?」


「いませんが……あのぅ」


 彼女は体中が熱くなった。そして、彼女は両目を手で覆い小走りで彼から離れた。


 しばらく、傷心の彼女は大学を休んだ。彼女は、このままではいけないと奮起した。久しぶりに彼女はデパートへと向かう。気晴らし中の彼女は、唯々歩いているだけだ。すると、忘れられない声が聞こえてくる。その持ち主は彼だ。彼女は咄嗟に目に付いた化粧品店に身を隠す。


 気になる彼女は、そっと彼を見る。彼の傍には女性が寄り添っている。その彼女は一重瞼だ。彼が、こちらへ振り向いた。彼女は顔を背け鏡を見る。そして、彼女は試供品のルージュに手を伸ばし塗ろうとした。しかし、彼女は手を止めた。彼女は化粧をしたことが無かったからだ。


「本物の瞼なら彼の隣に居られたのかな?」


と彼女は鏡に呟いた。

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