始まり4
僕は煙が飛んできた方へ走る。
でもその速度は現役の陸上選手を超えるような速さで、本当だったらこんな速さで走ることなんて僕にはできない。魔力様々だ。
そのお陰で、すぐに入り口についた。
僕がショッピングモールの外に出た瞬間、何かが車の影から出て来て、炎の玉を放って来た。
僕は驚き、反応が遅れたものの、回避はなんとかできた。
炎の玉は僕の後ろにあったショッピングカートに当たり、爆発した。
ショッピングカートは跡形も無く吹き飛び、そこに黒い焦げた跡と、異臭を残していった。
僕は飛んできた方を見ると、そこには冠を被った老人のような怪人と、どこからか呼んで来たバーバリアンが六体が出て来た。
『バーバリアンキング。
バーバリアンの上位種で、炎系の魔法を使えて、なおかつある程度の知性とバーバリアンの指揮をできるのが特徴です。』
相手は先手必勝の魔法を避けられた事に警戒して、様子を見ているのか、まだこちらには攻撃を仕掛けて来ない。
『…マスター、進言です。敵は大したことは無いですが、この数を相手するのは時間がかかるのと、データ採取のために、空気中の魔力を集めて発射する“対魔法生物用ピストル„の使用をオススメします。』
「射撃アシストはあるの?」
ピストルなんて使った事も見た事も無いからね。
『射撃アシストはあります。ですが、大方の狙いを定めてもらいませんと、できませんので。』
僕はやっぱりそこまではしてくれないのか、と思いながらも使う事にした。
でも、確かにあの数を格闘戦で倒すのはめんどくさそうだ。
僕は持っていたダガーを試しに投げつけてみる。
とは言っても、投げ方なんて知らないから、とりあえず持ち手を握り締めて、おもいっきり投げた。
ダガーは回転をしながら飛んで行き、バーバリアンの右肩をおもいっきり引き裂いた。
バーバリアンは腕が吹き飛んだ衝撃で、倒れた。
ちなみに、僕の手から離れた武器は時間経過で魔力に戻ってしまうらしい。
この時計はどれだけ機能を取り付けてあるのやら。
敵は武器が無くなった僕を丸腰だと思い、バーバリアンキング以外の動けるバーバリアンは僕の方に突撃をしてくる。
「『召還、ピストル。』」
すると、ダガーを作った時のように、僕の手のひらの近くに魔法陣ができたあと、そこには手のひらよりも一回り位大きい、エアガンでよく見るような形のピストルがあった。
『マスター、引き金近くのバーを上に上げてロックを解除したあと、狙いを付けてください。反動はほぼありませんので、余裕で片手撃ちができますよ。』
「わかった。」
僕はまず、一番近くにいるバーバリアンを狙うために、ピストルをしっかりと握り締める。
息が荒くなり、両手が震え、顔から汗が一滴頬を伝って流れる。
「…ッ…」
僕は、緊張と焦りを無理に押さえ、ピストルの引き金を思い切り引いた。
ピストルの穴からは、白い閃光と、“ジュゥゥ„という、まるで何かが焼けるような音がした。
てっきり、“パァン„という、乾いた音がすると思っていたのだか、これが特殊なのか、変わった音だと心の中で少し思った。
ピストルから出た閃光は、バーバリアンの頭を撃ち抜いて、倒した。
本当は、ここで一息つきたい所だけれども、敵は待ってくれない。
さすがに、あと10メートルも無いのに突撃してくる残りのバーバリアン四体は倒せないので、距離を取ろうと僕は敵とは反対の方向に走り出した。
『…敵、攻撃接近!回避行動をマスター!』
「え、うあっ!」
しかし、僕はバーバリアンキングの魔法攻撃を失念していた。
バーバリアンキングの魔法は見事に背中に命中。爆発の衝撃で転んでしまった。
だが、幸いなことに当たった所は特に痛みもほぼ無かった。
でも、もしも変身していない状態で当たっていたら、僕は全身火だるまになって死んでた。
そう考えると、ゾッとする。
僕は倒れた状態からバーバリアンキングを狙おうとした。
だが、バーバリアンキングは近くの車の影に隠れたのか見つからない。
『マスター!敵接近。距離九メートル』
僕は急いで立ち上がり、駆け出す。
今の身体能力のお陰で、敵と距離を取るのは簡単にできた。
「ここから狙うからアシストお願い!」
『了解。』
僕はバーバリアンが狙い易いよう、遮蔽物の無い所で待ち構える。
敵も、標的の僕を見失っているはずも無いので、当然バーバリアンキングの命令通りに槍で突き刺そうと来ている。
僕はまず左端にいる奴から狙いを定め、引き金を引いた。
ピストルからは、先ほどのように閃光と音が出たあと、胸板中央に直撃させた。
そのあとは、一方的な戦いだった。僕が、敵の射程距離外からの攻撃に対して、避ける事も叶わずに倒されてくバーバリアンを見ながら、“何で頭とか心臓辺りを撃ち抜かれたら死ぬのか?„や「ピストルの光は弾を発射してるのかな」なんて思いながら全滅させた。
最初の戦いみたいに強い嫌悪感は無かったが、「この時計は人を恐ろしくしてしまうもの」と思った。
最後に、バーバリアンキングと、腕が無いバーバリアンにトドメを刺すために駐車場の中にある車の影を覗く。
しかし、何処を探しても二体のバーバリアンは見つからないので、アインに近くに居るのか聞いてはみたが、『反応は少し前に消えています。』と言われてしまったので、捜索は止めた。
「そういえば、おじいさんから聞いて無かったし、そんな余裕も無かったから気が付かなかったけど君、名前なんて言うの?」
『名前…ですか…
一応仮名として“アイン„と名付けられてました。』
「…アインか……名前の響きが良いし、アインの姿は見えないから特徴も解らないし、そのまま“アイン„にするね。」
僕は元々ネーミングセンスはそんな無いから、これで精一杯。
昔飼っていた亀に“亀太郎„と付けようとすると、「光希は何時代の人間か」なんて言われて、家族皆から止められたこともあったから、きっとネーミングセンスは僕には無いから、これで精一杯。
『解りました。これから私の名前はアインにします。マスター。』
「あ、そういえば僕も自己紹介してなかったね。
僕の名前は星野 光希。念のために言っておくと、男だからね。」