秋葉原防衛戦9
アラクネは糸を飛ばす以外の飛び道具は無いのか、接近戦に持ち込もうとするが、あれだけの大きさの体と腕の数を相手するのは相当キツそうだ。
でも、そうやって逃げながら“ライフル„を当てても障壁で弾かれて消滅してしまい、有効なダメージも無い。
なので、アラクネの図体の大きさを逆手に取り道端の狭く、何度も曲がることで相手の速度を殺して、それで距離を少しずつ取っていた。
また、ここで重要になるのは卯月達の集団から離れて過ぎないように、動くようにしている。
『マスター、やはりここはリスクを犯しても“ロングバレルキャノン„か“ロングソード„の方が有効なダメージを与えることができます!』
アインはこのまま倒されてしまうのではないのかと、半ば叫ぶようにそう進言をする。
「でもここでキャノン砲じゃあ捕捉する間に武器を取られるか避けられるし、あれに接近戦するのはやられに行くのと同じだと思う。だから数と連携を取りながらの戦闘。それが一番いいはず。」
僕の意見を聞いたアインは少しの間何も言葉を発せずに黙り込んだあと、逃げる以外の、僕が全く思いつかなかった提案をしてきた。
『ですがマスター、このまま耐え続けるのは相当大変な上にこちらが撃破される可能性も結構あります。
そこで、一つ賭けになりますが敵に有効打を与えるられる方法があります。』
僕はその提案を、ビルとビルの人間二、三人が歩ける位の隙間でアラクネの糸を避けながら聞いていた。
『まだ試作段階の物ですが外付けの“フライトユニット„による上空からの攻撃を提案します。』
どうやらアインはこの案を相当な自信を持って言っているようで、いつもと少し話し方が違かった。
「アイン、その“フライトユニット„造ってもらっていい?」
『了解ですマスター!それと、この狭い所では飛ばし難いので、丁度この道を後退すれば表通りに出れます。そこで飛ばします。』
僕は言われた通りに後ろ歩きをしながら表通りの方に向かう。
アラクネは糸を吐いて来るが、何度も回避しているので避けるのはそんなに難しいことではなかった。
けれども、アラクネの方も僕の考えが読めたのか、糸を飛ばすのを止めてビルの突起などに糸を引っ掛けてよじ登る。
『急いでください!』
「わかってる!」
僕は後ろ歩きから普通に走り出して一秒でも早く表通りに出るために全力で走る。
その途中から、背中付近に変身する時と同じ光が出始める。
「アイン、フライトユニットってどうやって操作するの?!」
すっかり忘れてはいたが、相当重要な点だ。飛行機とかみたいに複雑だったりしたらできる予感が全くしない。
『本来は脳波などを受け取って、実際は私が動かす予定でしたが、肝心の脳波を受けとるシステムが完成していないので、今回は完全に私が操作をしてマスターが攻撃するようになります。
また、その時アシストが追い付かなくなり、現状だと射撃命中率低下と接近戦がさらに弱くなります。』
「中々キツイな……」
こんな時にアシスト頼りなのも結構問題だな。
そう呟いている間に大通りに出た。
こっちの方は敵が全然来なかったようで、周りの建物に目立った被害は無い。
『マスター、“フライトユニット„が完成しました。』
「了解アイン!それじゃあ一丁飛ばしちゃって!」
僕の許可と共に、背中から何かに押されているような感覚と共に、体が宙に浮き始める。
浮き初めは数センチだったのが、十数秒経つともう一メートルも浮き、さらに上空に加速を初めて数秒後には、もうビル三階を越えた。
その時丁度アラクネが大通りに到達して、僕を毎度お馴染みの糸で落とそうとするが、アインが僕を急上昇させてくれたお陰で当たらないで済んだ。
『マスター、空中だと姿勢を崩すかもしれないので“ショートバレルキャノン„を使ってください。』
そう言われて造られたのは、“ロングバレルキャノン„よりもさらに砲身が短くなった筒があった。
『“ショートバレルキャノン„は“ロングバレルキャノン„の下位互換の物で、威力と射程距離は下がりましたが、取り回し安くなったのと連射性能の向上と反動が小さくなりました。』
僕はアインの説明を聞きながら、“ショートキャノン„をアラクネの顔面に合わせて、何度か引き金を引く。
ビゥゥゥ…ビゥゥゥ…ビゥゥゥ…
ショートキャノンの砲撃は的確にアラクネに付いている人型に直撃するコースへ飛ぶが、障壁によって消滅させられてしまった。
『やはり、ダメでしたか…』
僕はアインのつい口から零れた言葉を聞いていると、ふと賭けに近いが一つアイデアが浮かんだ。
「そうだ!アイン、キャノン砲捨てるから“ロングソード„を二本造って!
フライトユニットで高速接近して敵に取り付いた後、接近戦で仕留めるよ!
あんまり気乗りしないけど…それくらいしか今は思いつかないからね。」
『…了解しましたが、危険だと私が判断すればすぐに離れますからね。』




