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36話 因果応報


あまりの変わりように戦っていたはずのメアリーが慌てて私とジェード様の元に駆け寄ってきた。


「姫様、あの女から禍々しい嫌な感じがします。絶対に私の傍を離れないでくださいね」


メアリーに頷いて見せジェード様と離れないように手を繋ぐと近くからため息混じりの声が聞こえてきた。


「あーあ……こりゃもうだめだな。力を暴走させた以上、あいつはもう闇から抜け出せない」


その声はメアリーとの交戦を止めた黒峰くんだ。

どういうことなのか問い掛けようと口を開いた瞬間、アンジュの方から悲鳴が聞こえた。


「……っ痛い痛い痛い!!止めてえぇ!!」


何事かと視線を向ければアンジュの纏っていた闇が蛇のように体にまとわりついて彼女の体を締め上げていた。


「いや、いやあぁぁっ!!」


アンジュが助けを求めるようにこちらに手を伸ばしてくる。

その手は死体の様に青白い。


「死にたくない、死にたくないよぉ!!謝るから助けてぇっ!!」


反射的に駆け寄ろうとしてメアリーに止められる。


「姫様近付いてはいけません!」


「でも!!」


目の前で闇に飲まれていくアンジュを見捨てるのは躊躇われる。

このままでは彼女の命が危ない。


「諦めろ。助けるのは無理だ」


黒峰くんが言葉にすると同時にアンジュの悲鳴が止んだ。

闇に完全に飲み込まれたのだ。

アンジュの体を取り込んだ闇は暫くうねっていたかと思うとゆるゆるとした動作で回りの景色を飲み込んでいく。

じりじりとこちらにも迫ってきた。


「こんなはずじゃなかったんだがな」


黒峰くんがぽつりと呟いたかと思えば私達の回りが黒いシャボン玉の様な膜に覆われる。

薄く透けて見える膜の外では闇がゆったりと広がりながら世界を飲み込んでいく。


「これは一体……」


眉を寄せたジェード様が膜に触れようとしたが黒峰くんが止める。


「おっと、触らない方がいいぞ。こいつは触れたもの全て蒸発させる結界だ」


「私達を守ったとでも言うつもりか?」


「どう思われてもいいが……俺がこの結界を解いたらお前らも、俺もあの闇に飲み込まれるのは確実だ」


メアリーが警戒心を顕に黒峰くんに対峙するが彼は肩を竦めるだけだ。


「そこのメイドさんなら元の世界に帰る道くらい開けられるだろ?結界で時間を稼いでる間になんとかしろ」


「メイドではなくて姫様の侍女です!その間姫様に手を出したら許しませんよ?」


メアリーは軽く黒峰くんを睨み付けるとモップの先端を外して、スカートのポケットから小さなシャベルの様なものを取り出して付け替えた。

そして驚くほどのスピードで地面を掘り始める。



どこに持っていたのとか下を掘ればこの世界から出られるのとか、その体力はどこからくるのとか聞きたいことがありすぎるけど……それよりも私は黒峰くんに聞かなきゃいけないことがある



一心不乱に地面を堀続けるメアリーから一度視線を反らして黒峰くんに向き直った。

彼は私の視線に気がつくと隣に立つジェード様と私を見比べて苦笑浮かべた。


「俺が何者でどうしてこの世界にいて、アンジュの手伝いをしていたか……気になるって顔してるな。特にジェード、お前は俺とそこのお姫様が知り合いだったことに驚いてる。安心しろ、現世じゃただの他人だ」


黒峰くんの言葉にジェード様は眉を寄せる。


「どういう事だ」


「全部説明してやるよ、お前にも分かりやすいようにな」


そう言って黒峰くんは前世からの話を始めた。

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