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25話 襲撃-ジェード視点-

アリスを無事に寮まで送り届けた私は自分の寮に戻るなり椅子に座り頭を抱えた。



アリスが愛しすぎて辛い……。



先程触れた彼女の髪の手触りや私に「大好き」だと告げた声、女性なのに男である私を守ると告げた凛々しさ……全てが愛しくて仕方ない。

妹溺愛主義のダニエルを馬鹿に出来ない程に私の心は彼女に奪われている。

彼女は私が他の人の元へ行ってしまわないかと不安がっていたが、こんなに愛しい相手が居るのに他に意識が向かう事など絶対にあり得ない。



私としては寧ろアリスに変な虫が付かないか不安だがな……。



彼女は気がついていないだろうが、他国の姫と言うこともあり男女問わず生徒達に注目されているのだ。

同じクラスの生徒だけでなく、他のクラスでも授業中に彼女の事を質問してくる生徒も居るくらいに。


廊下ですれ違った男子生徒達がアリスと仲良くなりたいと言う話をしていただけで、彼女を私にしか見えない場所に閉じ込め独占できたらと思ってしまう。

もちろんそんな事は出来ないのだが、アリスが私の愛しい相手だと回りに知らしめる事が出来ればどんなにいいかと考えてしまう。



……私は思っていたより重症のようだ。



彼女の事を考えると知らぬ間に頬が緩んでいたり、回りに嫉妬していたりする。けれどそれすらも幸せだと思えてしまう。


ずっとこうしているわけにもいかないな、そろそろ次の授業の準備をしなければ。


明日は午前中目一杯授業が入っている、早めに準備しておかなければ。

椅子から立ち上がり教材をしまっている棚に歩み寄った時だった。

控え目にノックの音がして声が聞こえる。


「ジェード先生……授業でどうしても分からないことがあって教えていただけませんか?」


声からするに男子生徒の様だ。

勉強に熱心な生徒がいるのは教壇に立つ身として嬉しく思う。

なるべく生徒の要望には答えてやりたい。

そう思ってドアを開けた瞬間、部屋の前にいた男子生徒の姿に一瞬息を止めた。


「……ユーイ・ノイディ」


部屋を訪れたのは先程アリス達から聞いた体を乗っ取られたという男子生徒。

私は動揺しかけた己を制して何も知らないというように振る舞い様子を見ることにした。


「今日は授業を休んでいたと思うが……どうした?」


「体調が回復したので、休んでしまった分を取り戻したくて自習していたんです。そしたらわからない部分がありまして教えていただければと。分からないことをそのままにしたくないので、ご迷惑を承知で伺いました。」


そう言って教科書を見せてくるユーイは変わった所など全く見られない。

あの動くぬいぐるみを見ていなければ、疑いを抱くことすらしなかっただろう。


「そうか。勉強熱心なのは良いことだがあまり無理はしないように………それで、分からない場所というのは?」


当たり障りのない返答をしながら様子を伺うと、ユーイはにこりと微笑み礼を述べる。


「はい、心配してくださってありがとうございます。教科書のこの部分なんですが……」


そう言って教科書を開く動作をした瞬間、彼の手元がきらりと光った。そのまま教科書ごとこちらに向かって飛び込んできたので体を捻り交わす。

するとバランスを崩したユーイは部屋の中に転がり込んだ。


「っとと……あーあ、何で避けるんですか。せっかく苦しまないように一撃必殺を狙ったのに」


体制を立て直しながら振り返る彼の手にはナイフが握られている。


「……お前は、誰だ。ユーイ・ノイディではないな。何者だ」


武器を持っていても相手は生徒だ、しかも体を乗っ取られた被害者である以上迂闊なことは出来ない。

それでも何か情報を得られないかと思い言葉を発するとユーイは歪な笑顔を浮かべた。


「俺はもう一人のお前だよ、ジェード」



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