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22話 慈悲

ユーイから何があったのか簡単な説明を受けた私は眉間にシワを寄せた。

ユーイの体を乗っ取った影もアンジュの使う魔法なのだとしたら、彼女が他にどんな力を隠しているのか調べる必要がある。

アンジュの標的は恐らくジェード様なのだろう。早急にジェード様に事情を話して対策してもらわなければ。


でもリリの方も気になる。



話の中で、ユーイはアンジュの傍に居てもリリの事を大事に思っている気持ちはなくしていなかったと告げた。



都合がよすぎるでしょう!

自分の都合でリリを傷付けた癖に、いざとなったら本当は好きだから助けてくれだなんて!



リリの顔を見れば私と同じように感じているのかユーイを睨み付けている。

やがて椅子から立ち上がるとリリはユーイの前に立った。


「……気合い……気合い」


なにやらぶつぶつと呟いている。


『リリアンヌ……?』


ユーイが心配そうに声をかけた瞬間パンッと乾いた音がした。

リリがユーイの頬を叩いたのだと理解するのに数秒かかった。続いてもう一発、反対側の頬が叩かれる。

私が唖然としているとリリは目を瞬かせ、感心したように自分の手のひらを見つめる。


「本当に気合いでどうにかなるのね……凄いわ」



どうにかなるの!?

メアリーもリリも特殊能力でも持ってるの!?



試しに気合いを入れてユーイに触れてみようと手を伸ばしてみたが、私の手はあっさりとその体を通り抜けてしまう。

リリには出来るのに私には出来ないらしい、ちょっと悔しい。

それを見ていたメアリーは私の肩にぽふ、と手を置くと「人には向き不向きがありますから」と慰めてくれた。

向き不向きの問題ではない気がする。



「ユーイは……酷い人だわ。私に婚約破棄を突き付けて、あの子を選んでおきながら助けてだなんて……最低よ」


ユーイにそう告げるリリの声は震えている。


『……リリアンヌ、本当にすまない』


「言葉でなんていくらでも偽れるでしょう」


リリは泣き出しそうになるのを堪えているのだろう。一度真上を向いて息を吐き出すとユーイを真っ直ぐ見つめる。


『僕は今度こそ誰よりもリリアンヌを大事にすると誓う。本当にすまなかった……もう二度と君を傷付けるようなことはしない……信じてもらえなくても僕は君が大事なんだ。遅くなったけれどその事にようやく気がつけた……リリアンヌ、本当にごめん』


ユーイはリリの前に深く頭を下げた。


「……ユーイはずるい、こんな時ばかり私を頼ろうなんて。言葉なんていくら重ねても、私はユーイを信じられない……だから行動で示してくれたら……一回だけは許してあげる、もちろん次は無いわよ」


『……!わかった、僕は君の信頼を取り戻せるように全力を尽くすよ。ありがとう、リリアンヌ』


条件付きだがリリはユーイを許す様だ。

二人を見守っていた私に気が付くと眉を下げて「私もまだまだ甘いわね」と笑って見せた。


リリは私が思うよりずっとユーイの事が好きなのだろう。

彼に傷つけられても、許そうと思えるほどに。リリはそれを『甘さ』だと言うけれど一度裏切られた相手をまた信じようとするその勇気を『強さ』だと思った。


「まさかリリアンヌ様も『気合い』を習得されるとは…まるで弟子が出来たようで嬉しいです」


「メアリーって本当に何者なの?」


「あら、私は人より少しだけ情報収集が得意で色々な事ができるだけの普通の侍女ですよ、姫様」


「普通の侍女は素手で生き霊を捕まえたりしないと思うの」


「姫様がご覧になったことがないだけで日常茶飯事です」


「そうなの!?」


「もちろん嘘ですけど」


「メアリーが言うと嘘に聞こえない!」


メアリーは多才のようです。

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