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20話 元婚約者

リリが倒した椅子の音を聞き付けやってきたのだろう、メアリーはモップを片手に私達と本棚の近くにいる白い影の間に立つ。


「……これはいったい何ですか?」


物怖じせずに影を睨みながら尋ねるメアリーに私達は状況を説明する。


「わ、分からないわ…急に現れて…」

「本が、棚から落ちたんです!多分それの仕業かも…」


「なるほど」


何がなるほどなのだろう。

メアリーはモップを持っていない方の手を軽く握り込むとぱっと開いてその影をむんずと―――掴んだ。


その様子に私とリリは言葉を失う。

誰がどうみても絶対に掴めないものをメアリーは手掴みにしたのだ。

そしてそれを掴んだままにっこりとこちらを振り返った。


「安心してください、姫様、リリアンヌ様。これはただの生き霊ですわ」



そっか、そっか、ただの生き霊…………生き霊!?

生き霊って手掴み出来るの!?メアリーって本当に何者!?



呆然とする私とリリを余所にメアリーはモップを棚に立て掛け、手掴みしたその影をパンでも捏ねるように両手でぺたぺたと形作っていく、するとその影はやがて人の形になった。

しかもどこかで見たような顔である。


「……もしかして」

「ユーイ!?」


私が言葉にするより早く、リリが目を見開いてその人物の名前を呼んだ。


影から人の形をとった生き霊―ユーイは暫く驚いたように目を瞬かせていたが、リリが自分を見ているのに気が付くと申し訳なさそうに頭を下げた。


『すまない……リリアンヌ。君にこんなことを頼める立場じゃないのは分かってる…けど、どうか…助けて欲しい。このままだと僕の体は乗っ取られてしまう…!』


状況が把握出来ずに顔を見合わせる私とリリ。メアリーは何事もなかったかのように紅茶のカップをひとつ追加していた。


「………生き霊って紅茶、飲めるのかしら?」


ポツリと呟いた言葉に私は思わず頭を抱えてしまった。

そこなの!?と。

私の侍女は、かなりのチート能力を持っているらしい………本当になんで侍女なんかやってるんだろう。







◇◇◇


生き霊の正体はリリの元婚約者(と言っても正式にはまだ解消されていないらしい)のユーイ・ノイディと名乗った。

メアリーが紅茶を用意しようとしたけれど、飲んだり食べたりは出来ないらしいくユーイの手は椅子やテーブルをすり抜けてしまっていた。

余計にメアリーが手掴み出来た理由が気になる。


「メアリー、どうして実体のないユーイ様を手掴み出来るの?」


「気合いですわ」


「気合いでどうにかなるの!?」


「なります。気合があれば大抵の事は解決しますから」


さらりと返答されたがそんな超人じみた事ができるのはメアリーだけだと思う。

とりあえず手掴みの件は置いておくとして私達はユーイに詳しい事情を聴くことにした。

体が乗っ取られてしまうとはいったいどう言うことなのか。


ユーイは何があったのか、そして自分がどうして生き霊としてここに現れたのか私達に話し始めた。

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