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コンセント·コンセプト  作者: なつミカン
2章 敵だらけの劇場
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再開の声

「アズキ班なんて、ファラデー支部にない方が良いと僕は思っている…っ」



 あまりに重々しく、いつもの彼らしくもない表情でそう告げる。

 その変化に思わずカリヤは動揺してしまった。



「えっ…? な、なんでだよ?」


「…あまり言いたくないんだけれど、君には言っておいた方が良いかもしれない…っ」



 言いたくないこと?

 カリヤはそう言おうとしたが、唾を飲み込んで心に留めておいた。ちゃんと聞いておかなきゃ後悔しそうだからだ。



「それは……」



 カリヤは、前を歩いていたルーカスが立ち止まると、つられるように自身も立ち止まってルーカスの背中を見つめた。

 ルーカスが言い淀んでいると、俯いているルーカスの背中越しになにか黒い影が動いたのを目にした。



「! ルーカス! ショートだ!」

「なっ…!?」


 咄嗟に叫んだカリヤはルーカスの背中を掴んで後ろに飛び下がった。

 すんでのところでショートの攻撃を避けたルーカスは、腰に提げている剣を抜き、一方体勢を整えたカリヤは背中から小さなハンマーを手に取る。




「「コネクト!」」



 途端、それぞれの武器から緑色に発光するコードが伸び、うなじのコンセントへと接続する。

 ハンマーを構えたカリヤはショートを見据える。



 一、二、三……四匹が威嚇してこちらを睨みつけ、いまかいまかと襲いかかってきそうなことがみてとれる。



「…ルーカス、右の二匹やれるか。」

「任せたまえ…!」

「よし、いくぞ!」


 カリヤの掛け声と共に地面を蹴り出したルーカスは、自らの剣を下方に構えながら薙ぎ払うようにショートへと攻撃を開始した。

 同時にカリヤはその場で少し力を溜め、はじき出されたように空中へと舞い上がると、上方から振りかぶるようにショートへとハンマーを振り落とした。



「喰らいやがれ!」


 ルーカスのフランベルジュはショートの肉体を引き裂き、カリヤのハンマーはショートの肉体を潰した。


「ふむ…! 君との共闘も悪くないものだね…!」

「うるせぇ! もう二匹残ってんぞ!」


 カリヤは地面に着地したその勢いそのまま体を捻って、飛びかかるショートの横腹にハンマーを打ち付ける。

 その衝撃で塵と化したショート。どうやらルーカスも残りの一匹を仕留めたようだ。



「ふぅ……」

「今のショート、カリヤ君の依頼にあったサーベージドッグじゃないのかい…?」

「あ? ああ、そうだな…まぁ、四匹しかいなかったから依頼は達成できてないけど……」



 カリヤは展開したプラグをしまわず、その場を慎重に見渡す。ゆっくりと茂みに近づくと、以前にも聞いたような声が聞こえてきた。

 何かに怯えて、助けを求める声だ。



「ルーカス! まだ終わってねぇ! こっちで誰かが追われてる!」

「えっ、な、そ、そうか…! 向かおう…!」


 プラグをしまいかけていたルーカスを呼び、カリヤは茂みをかき分け声のする方へと走り出す。

 走っていけば行くほどその声は大きくなり、カリヤはふと思い至った。




 ──あれ? この声って……



 別の道に出ると、そこには今にも食われそうな少年と、さっきのサーベージドッグが一匹暴れまわっていた。



「しゃがめ!」


 咄嗟にカリヤは叫ぶと、少年に当たらないようにハンマーを横方向に振る。

 少年はカリヤの言った通りにしゃがむと、さっきまで自分に襲いかかってきていたショートの姿が消えているのを見て驚いた。



「え?」

「大丈夫か?」


 カリヤはうずくまっていた少年に手を伸ばすと、あ。と声を上げた。



「お前、あの時の…!」

「あのときのおにいちゃん…?」


 そう、カリヤが、ファラデー支部に向かう途中で迷い込んだ時に出会った少年であった。

 カリヤ自身、ショート対策軍に入るきっかけとなった少年だったため、ちゃんと彼のことは覚えていたのだ。



「はぁ、はぁ…か、カリヤ君…っ、待っておくれ…っ!」


 後々から息を切らせて走ってきたルーカスと合流する。なんで息切れてんだ、こいつ。とは言わないでおこう。



「そういえば、名前聞いてなかったな。俺はカリヤ。お前と出会ってからショート対策軍に入ったんだ。」

「へ~! おにいちゃんすごいね! ぼくは、つとむっていうんだ!」

「つとむ、か。ところで、こんなところで何してたんだ?」



 ここの森の植物は決してパラボネラ植物だけで構成されているわけではない。森の東側に確かショート出没地域があったはず。安全とは言いにくい場所だ。



「もしや、家が近いのでは…?」

「そうなのか?」

「うん、ぼく、ここのちかくにすんでるの。あっちのほう。」


 そう言ってつとむの指さした方向は、森の南側。確かにここから南側に向かって下り坂になっているようだ。


「南側…といえば確か、グリッド森林の南側には小さな都市があったような気がするよ…っ!」

「そっか。じゃあ、家まで俺らが送ってくよ。ショートがまだ居るかもしれねぇしな!」

「うん、ありがとうおにいちゃん!」



 そう言ってつとむはカリヤの手を掴む。それにしてもこの少年はよくショートと遭遇するんだな。と思い、ショートがさっきまでいた地面を見つめ自身が受けた依頼を達成してしまったことに気づいた。

 ――――あ、依頼達成してしまった。








 



今回短いです、すみません。

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