赤髪の剣士
改めて思うが、ここはやっぱり軍の中なんだなぁ。厳しい訓練とか指導があっても、その人自身の能力を評価してくれるとか、最後には賛辞をくれるとか。まさに漫画やアニメで見る光景だ。
「なんか、漫画みたいだな」
「おや…? まんが、とはなんだい…?」
「え、お前漫画読んだことないの?」
とは聞いてみるが、ルーカスは首を傾げた。まさか漫画も知らないお坊ちゃんだったりしないよな?
と思っていたが、隣にいたスカーレット監督官も首を傾げていた。
ええ? 俺がおかしいの?
「こほん、では第二試合の者は前に出よ!」
一つ咳払いをした監督官は声を張りあげた。彼女が漫画を知らないことが少し気になったが、軍人が漫画を読んでることの方が珍しいんだろう。と結論づけて、第二試合の様子をカリヤも見る。
今度は棍棒のようなプラグを持った体格の良い男性と、ムチのようなプラグを持った女性が前へと出てきた。
「これは随分と、わかりやすい…!」
「ああ、どう見てもあのムチの子が不利だよな」
ムチと棍棒で攻撃力がどれだけ違うかなんて一目瞭然だ。しかし、そう呟いた俺たちにスカーレット監督官は口角を上げ、腕を組んだあと話しかけてきた。
「いやそうでもない! しっかりと見ていろ、カリヤにルーカス!」
そう言い、前方へと視線を移し開始の合図をする。
合図を受けた対戦者達はまたも、"コネクト"と告げプラグを構える。第一試合にて試合形式を理解したのか双方最初は動くことがなかった。
「…? どうしたんだろうな。近づいて棍棒で殴りゃいいのに。」
「それは、少し違うな。」
「スカーレット監督官、俺たちと話してていいんすか!?」
「何を言う。君たちの疑問はもっともであるし、その疑問に答えるのが私の任務だ。せっかくだからどうして互いに動けないのか教えてやろう。」
どうしてだろ。素直にありがとうございますと言えない。他の人にレクチャーしに行ってくれよ、俺こういう人苦手なんだから!
「ありがたき幸せ…!! どうか教えてください、スカーレット監督官っ…!」
ちなみにお前はもっと苦手。いい加減俺に付きまとうのをやめてほしい。
そうこうしている間にも試合は進んでいってるんだから試合をちゃんと見ようぜ。
「いいか、ムチとはそのしなりで相手を攻撃することができる。持ち主が女性であろうとも当たればそれなりに痛いし怯みもする。
しかも遠距離でそれが可能なのだ。対する棍棒は言うなれば殴ることしかできない。殴るということは近づかなければならないしその間は無防備だ。だからああして気を伺っていると言うわけだ。」
スカーレット監督官の言う通り、試合の様子を見るとムチを持つ女性は男性の腕や足に狙いを定めているように見え、逆に男性の方は近づくタイミングを図っているように見えた。
このままでは双方動かないままなんてことも有り得たが、動き出したのはやはり男性の方だった。
「!」
女性の方は、相手をじっくりと観察していたにも関わらずいきなり動き始めた男性に一瞬たじろいだ。しかし、それは一瞬。次の瞬間には鞭に力を込め、溜めてからその打撃を与えた。
「だが、男も無策ではない。今まで時間をかけていたのは油断させるためであり、また彼女の鞭のリーチを測っていたのだろう。」
その証拠に。と顎で彼を指すと、彼は走っていた勢いをわざと無くし、鞭が迫った瞬間足を止め、空振りした鞭が地面が着いた瞬間その大きな足を振り上げ鞭の先を踏んだ。
「なるほど…! 鞭を踏むとは…!!」
女性はすぐさま鞭を戻そうとするが、踏まれているためいくら引っ張っても戻ることはない。しかし男性はその鞭の上をゆっくりと歩いてくるため、恐怖心が湧き上がる。
そのまま女性は男性の棍棒によって殴られた。もちろん物理的にはなんのダメージはなく、またもスカーレット監督官が審判を下す形でその試合は棍棒を持つ男性の勝ちとなった。
「うむ、距離におけるデメリットを克服し、確実な勝利を掴もうとする気概には惚れ惚れとした! 君はよく頭が回る! これからどんな人物へと出世していくのか楽しみだ!」
上機嫌なスカーレット監督官は男性に向かってグーサインを送り、最上級の賛辞を送る。
「そう気を落とさずとも、慎重に行動に移した時点で君は素晴らしい才能を持っている! あとは、どんな行動であっても対処できるように対策を考えることだ!」
女性の頬へと手を添え、励ますように彼女に浩然と告げる。その姿はやはり教官たらしめるものであった。
「はぁ…! やはりここに来て良かったよ、カリヤ君…!! 僕だけでは思いつかないことをやり遂げる人が沢山いる…!」
「あ? ああ、そうだな」
「なんと雑な…っ」
さて、第二試合も終わって次は俺の出番。というところで、俺は部屋の中心へと歩いていく。その様子を見たルーカスは余計にもキメポーズで俺を送り出す。だからやめろってそれ。
俺は自分のプラグを改めて握る。こんな物でも使いようによっては勝てるかもしれない。二つの試合を見て、そう確信した。
「よし!」
そして、対戦することになる相手をカリヤは見た。
それから後悔することになる。
カリヤの目の前に立っていたのは、鮮やかな赤色の髪を持ち、鋭い目つきの男性。そしてその手には彼の身長程もあるぎらついた大剣があった。
カリヤは即座に思った。
─────ああ、勝てねぇわ




