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コンセント·コンセプト  作者: なつミカン
2章 敵だらけの劇場
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青い腕輪

 意気消沈とした様子で扉を開けると、そこには既に人がまばらに居た。

 扉を開けた音に気づいてカリヤの方を見る人もいるが、知り合い同士で談笑しあっていて気づいていない人もいる。



 良かった……さすがに制服に関しちゃツイてないとは思ったけど、今回は遅刻にならずにすんだみてぇだ……



「誰だあいつ……」

「あんな人居たっけ?」



 ギクッ


 もしかして、ここにいる人って全員試験を受けた人で、顔合わせとかしてたりする?

 そしたら試験に遅刻して受験しなかったくせにアズキに勝手に合格させられた俺は、完全にアウェイ………いやいやもしかしたら違法行為…!?


 カリヤはできるだけ身バレしたくないと、声のした方向へ顔を見せないように一瞥をくれる。

 しかし、誰もカリヤのことなど見向きもせずあらぬ方向へとその視線を注いでいた。




「ふふん、よい…! 皆の視線が私を昂らせる…!」




 そこにはキメポーズをとりながら珍妙な動きをしているいわゆる変人が居た。


 なるほど、確かにあれはおかしい。


 どちらかというと熱い視線などではなく、変な物を見る冷たい視線が彼に降り注いでいるはずなのに、彼は髪を靡かせ、腰を捻りウインクをかます。


 正直言ってずっと見ていられるほどいいもんじゃないな。




 そこでふと、カリヤは周りをざっと見渡す。見た限りでは人数はそれほど多くなく、十五人程度の新入隊員が時間になるまでにここに待機している形だ。

 部屋は広く、天井や壁がやたらに遠いしなんだか全体が白っぽい。試験会場と言う割には机や椅子類なものは何もなく、クローゼットのようなものが壁際に大量に鎮座しているのだけがわかる。



 これからなにが起こるかどうかはともかく。アズキに言われたことだけは守ろうと、忠告されたことを思い起こす。




『よく聞きなさいカリヤ。あなたは私の推薦で合格したという体で、ショート対策軍の一員になったわけだけれども、ショート対策軍にはカーストなるものが存在するわ。』

『カーストって……じゃあ俺はどこにいるんだ?』

『底辺ね。』

『底辺』


『推薦だろうと、一般合格だろうと結局は新入隊員は底辺なのよ。だからいきがって他所に噛みつきでもされたら私の名が傷つくわ。』

『俺の心配はしないんだ……』



 アズキは鼻息荒く、「当然じゃない」と言い切ると腕を組んで、正座させられているカリヤを見下ろした。



『そして私は上から三番目といったところね。一番上はもちろんショート対策軍の総督。二番目は各支部の総隊長。そして三番目は各支部の上位戦闘員。その次に中位戦闘員、下位戦闘員、上位研究員、中位研究員、下位研究員、そして底辺が新入隊員。とまぁこんな感じかしら。』


『いや、覚えらんねぇって』

『覚えなさい、命令よ。むしろここからが本題なのだから。』

『本題』




『あなたがこの一年以内で上位戦闘員にならなければ、クビにするということよ。』





 なぜ俺をクビにするのか、そういったことは教えて貰えずに見送られたわけだけど……



 クビはやばい。ガチでやばい。路頭に迷う俺の姿しか思い浮かばない!



 もし、このテストがそういった肩書きに関するようなものだったらと想像しただけで、カリヤの背筋は凍った。

 しかし、カリヤは背後から肩を軽く叩く感触がして振り返る。



「やぁ」


「えーーっと?」



 そこにいたのは先程変なポージングをとりつづけていた変人。心做しか額にうっすらと汗が滲んでる気がするが、一旦置いておこう。

 軽く挨拶されたのはいいが、なんのために話しかけてきたのかが全く分からないカリヤは取り敢えず愛想笑いを浮かべる。



「君のその青い腕輪を見るに、君もなんだね…!?」


「……な、なにが?」


「とぼけなくとも分かるさ……! 僕らが選ばれた存在だと言うことはね…!!」



 そう言って彼は両腕を高く掲げ、キメポーズをとる。目立つからやめてくれよ。


 だけど、確かに改めて他の人の腕輪を見ると緑色の腕輪なのに、俺とこの変人や、あと少数の人の腕輪は青色の腕輪をしている。



「選ばれた存在ってのは、推薦された人ってことを言ってるのか?」


「ああ、そうだとも……! 推薦される程に優秀ということさ…!」



 いや、それはどうかと思うぜ。アズキも言ってたけど、新入隊員は皆平等に底辺なんだから。


 けれど、それを意識して青い腕輪を付けている人を見てみると、なんだか落ち着いているように見える。見知らぬ所に来たというよりも、一度来ているといった様子だ。



 そうしてカリヤが周りをきょろきょろと忙しなく見ていると、ふいに体が誰かとぶつかってしまった。



「あ、すいませ……」


「気をつけろ」



 謝ろうとして頭を上げるが、なかなか顔が見えない。かなり身長が高いらしく、カリヤは少しばかり後ずさりしたが衝突した彼はそんなカリヤを見もせずにそのまま歩いていってしまった。



 なんだあいつ……随分と無愛想なやつだな。



 身長が高いせいか無意識に頭の中で毒突く。が、ふいに視線を下に落とすと身長の高い彼の腕には青い腕輪があった。


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