末端ダボダボ
カリヤは目の前の巨大な建物を見上げていた。
「ほあーーー、でっけぇ……」
昨日はあのまま美味しいご飯を食べた後、フカフカのベッドで寝てしまったカリヤ。
もちろんテスト勉強なんてしていないし、何をやるかも分からないカリヤは、ファラデー支部に到着したはいいもののどこに行けばいいのか分からないまま立ち尽くしていた。
アズキには助けて貰ってばっかりだなー、ファラデー支部への分かりやすい地図も持たせてくれたし、いざという時の防犯ブザーもくれたし!
高飛車で上から目線の態度が気に入らんけど、俺の事を無下にするわけでもないから、一応は信頼してもいいのか?
「えーーっと……」
カリヤは辺りを見回すが、カリヤ以外の人は既にファラデー支部にて勤務しているらしき人達ばかりで自分と同じような新入隊員は見受けられない。
取り敢えず受付に行けば何か分かるかもしれないと、人が歩いていく方へと着いていく。
そういえば。
防犯ブザーと一緒に、アズキからある腕輪を渡されていたことに気づき、鞄から腕輪を取り出す。
見た目はただの青い腕輪。少し細いかどうかというぐらいで特に遜色はない。興味本位にその腕輪を自分の腕に通してみる。
「うわっ、俺のサイズピッタリじゃん」
「はじめまして、受験番号201カリヤ様。」
「……………は?」
腕輪を着けた瞬間、カリヤの眼前に人が立ってこちらにお辞儀をしていた。
え? さっきまでこんな人いなかったよね?
「ワタクシ、新入隊員の案内役を務めさせていただいております。導、と申します。」
「し、しるべ、さん……? えーっと、案内役ってことはテスト会場とかに俺を連れてってくれるってこと……すか?」
「はい。もちろん。ただ、テスト会場に向かう前に制服を支給致しますのでまずはそちらに向かいましょう。」
目の前に現れた男性は端麗な顔に笑みを浮かべ、踵を返す。カリヤは着いていくべきだろうと判断して彼の後を追っていく。
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「これが……! 制服…!」
緑色の生地で出来た襟シャツを掲げ、カリヤは嬉々としてその制服を眺める。
「うわー……男性用ってこんな感じなんだ……」
「どうです? こちら、ショート対策軍専用の生地で構成されています。また、一般の物と違い、強い衝撃にも耐え伸縮性にも優れている一品となっております。」
「へー、まぁ難しいことはわかんないっすけど取り敢えず凄いってことなんすね!」
ふと、カリヤが導に視線を移すと、支給された制服と導の着ている制服が少し異なることに気づいた。
カリヤの持っている制服はシンプルな緑色に統一された襟シャツだが、導のはカフス部分がヒラヒラとしている。
「これってアレンジみたいなこととかが出来るんすか?」
「ええ、よくお気づきで。性能の範疇内でのアレンジならば個人のお好きなように制服を変えることができます。私はプラグの性質故にこのようなアレンジを施しておりますが、お洒落のためにアレンジを施すのが主流ですね。」
「ふーん、やっぱり、どれも襟が付いてるんすね。コンセントに触れられないように、すか?」
「はい、襟だけは深めのものでないと本来の機能が果たせませんので。どういたします? アレンジを加えてみますか?」
「いや、いいや。………これって今着るんすか?」
導は無言で、部屋に配置されている試着室へ手を差し伸べる。入ってきた時から思っていたが、テストはこの制服で受けないといけないらしい。
ま、着るだけならただだし、お金を請求されたらまたアズキにでも言えばなんとか工面してくれるだろ!
カリヤは試着室へ、支給されたばかりの制服を持って入る。
着ていたスーツを脱ぎはじめ、制服の袖に手を通すとある違和感に気づく。
「ん………?あれっ……?」
恐る恐るカリヤはそのまま腕を伸ばすが、一向に自分の手が出てこない。むしろ袖が折れている。
「いや、まさかそんな……」
カリヤはスラックスに手をかけ、足を入れ、履こうとするが足先が一向に出てこない。
「導さぁぁん!?!? サイズデカすぎなんですけどぉおお!?!?」
「そ、そんなことは…! これでも一番小さなサイズなのですが…!!」
カリヤはダボダボの制服をつまみ上げ、導に迫る。対する導は戸惑うばかりで、先程までの端麗な顔に汗が流れていた。
一番小さなサイズぅうーー??
「嘘でしょ、これで一番小さいんすか!?」
「はい……申し訳ございません……。女性用ならばもう数段ほど小さいサイズが御座いますが……!」
「じょ、女性用……」
カリヤは口元をひくつかせ、改めて自分の姿を見る。袖も裾もダボダボ、この状態で歩くのは困難を極め、格好もダサいことこの上ないだろう。
これだから………これだから身長ってやつは……!!!
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「…………こちらが、テスト会場になります……」
「………じゃあ、ここで……」
「あの……本当に申し訳ございませんでした!!」
カリヤはゆらゆらと導を後にし、会場の扉を開けようとする。その姿は、自分にとっての恩人である女性と、自分を拾ってくれたアズキと似通っていた。
──緑色のスカートに、襟付きの白いポンチョのような上着に、お情け程度のカーゴパンツ。
───あぁ、俺。終わったわ──




