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「なになに……すでに告白されたって、本当なの、マルゴット!」


「きゃあああ~~… 同時に二人もだなんて……まるで『ロミオとジュリエット』を地で行く展開だわっ!」


「マルゴットってモテモテねえ……まあ、普段の言動はおかしなところがあるけど、いざって時、頼りになるからねえ……」


 テンションの高くなったみぞれとアンネリーゼだが、クララはマイペースに食事を続ける。


「きっと、あの二人はデブ専に違いないわね……」


「ちょっと、クララぁぁ!!」


「えっ、なに、デブ専ってことは、あたいの中身じゃなくて、肉体が目当てってこと?」


 マルゴットが両手で突き出た腹を抱きしめる。「あっ、違った……」と言って、両手で胸の下を抱きしめた。


「その可能性があるわ……」


「そんなわけないでしょ、クララ……アルバンとカスパルは純真そうな好青年でしょうが……」


「でも……ママが男は狼だから気をつけろとも言ってたしねえ……」


 みぞれとアンネリーゼがそれは無いと力説し、先をうながした。


「むふぅ~~~~… あたいもいずれはミュンガ市下町のパパの病院を継ぐ予定だから、医者の婿さんは大歓迎なのよねえ……」


 マルゴットが眉根を寄せて、アプフェルショーレをグイッとあおる。まるで酒場で安酒をたしなむ苦労人のような呑み方だ。


「アルバンもカスパルも純情で真面目な医者の卵よ……どちらを婿にしてもいいと思うわ……」


「それで、それで……どっちを選んだの?」


「でも……ひとつ問題があってねえ……」


「問題?」


「なんなのそれは……」


 みぞれとアンネリーゼはテーブルを乗り出して、食いつくようにマルゴットを見つめる。


「二人とも長男で、実家の病院を継ぐ予定だった……て、ことよ……」


「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」」


 みぞれとアンネリーゼは椅子に戻り、肩を落として、やるせない溜め息をついた。空気の抜けた風船のようだ。


「現実の恋愛って、ままならないものなのねえ……」


「でも、まさしくこれも『ロミオとジュリエット』だわ……愛をとるか、家を大事にするか……それが問題ねえ……」


 クララはいたって低血圧な表情で食事を続ける。


「まあ、マッチョなロミオが二人もいるけどね……もっとも、ジュリエット二人分の目方はありそうだけどね……」


「クララって、小っちゃくて可愛いのに、時々毒舌になるのねえ……」


「小っちゃいは余計よっ!」


「はぅ~~ん……ごめんなさい、クララ……」


「あっ……このやり取り、懐かしいわあ……」


「むひひひひ……クララがジュリエットなら、三人分はあるわよぉぉ~~~…」


「ぐぬぬぬぬぬぬぬ……」


 ともかく、食事を終えて、自室に戻ることとなった。


「でも、なんだか懐かしいわねえ……四月の初めだったわよねえ……みぞれとクララと仲良くなったのは……」


「むひっ……そうそう……このテーブルで席を探していた二人を正体したのよねえ……その前の晩にアンネリーゼが外でお化けを見たとかいって……」


「そうだったわ……この食堂舎の二階の屋根に鳥の顔をしたお化けみたいなのを目撃したのよ……あれは夢だったのかしら……」


「んもぉぉぉ~~…夢だなんて……あたしは変質者でも出たかと思って、木刀をもって駆けつけたんだからね……」


 そこまで言って、みぞれはハッとしてクララと目を合わせた。鳥の顔の化け物……古着屋通りの殺人鬼事件に出現した人造人間は鳥の顔のようなペストマスクを被っていたではないか――


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