表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

詩など(連載詩集/その他)

キスで落ちてく冬の恋

作者: 檸檬 絵郎

アンリさまの冬の恋企画「キスで結ぶ冬の恋」参加作品。

拙作としては二作目です。


先に出した『佐吉のうた』のほうがメインですがね。

今回は全然違った題材です。




 枯葉かれはがきみの髪に落ちて、ゆらゆらとただよった。




 茶色はきたない。きみには似合わない。

 だから僕は、枯葉をとってあげた。


 そうしたら、きみの黒い瞳がゆれた。真っ赤な頬がゆれた。

 きっときみは、笑ったんだね。

 笑顔の波紋はもんがまぶしすぎて、僕にはしっかり見えないよ。

 でもだんだん、見えてきた。

 きみは笑ってる。

 その例えようもない美しい顔で、笑ってる。


 きみは美しい。

 僕が言うんだから、まちがいないさ。

 今までたくさんの女性を見てきたけど、

 きみほど美しい人はいなかった。

 なんだかずいぶんとぼけっとした顔になってきたけど、

 いや、いいんだ、

 普通の女性ならだらしなく見える顔でも、

 きみがすると、愛おしくさえ思える。


 ああ、きみは美しい。

 一刻いっときでもきみから離れなくちゃならないなら、

 僕はもう、生きてる意味なんてわからない。

 胃袋がなんだというんだ、

 胃袋は僕自身じゃない。

 僕自身はこの左右の目だ、

 今のところはね。

 でもそのうち、

 僕という存在はこの世からなくなって、

 きみとひとつになるんだよ、

 きっとね……







 

 また枯葉かれはが落ちた。

 きみには似合わないから、とってあげよう。


 僕は枯葉をどかそうと、きみの冷たい髪にさわる。

 きみはまた、顔をゆがめた。くすぐったかったかい?


 きみの髪にはまだ、枯葉がついていた。

 おかしいな、たしかにとったはずなんだけど。

 そういえば、

 さっきは枯葉のかさついた感触があった。今度はきみのうるおいだけだ。


 ああ、そうか。きみはきたない枯葉でさえも、美しく変えてしまうんだね。








 僕にはわかった。

 きみは、天使なんだ。

 僕を迎えにきたんだね、この寒い世の中から救い出すために。

 そっちはきっと、あったかいんだ。

 つめたいのは表面だけで、

 それも、この世と触れてしまっているせい……


 きみのくちびるが輝いてる。

 そうか、もうそのときなんだね。


 よし、わかった。

 今きみに……












 ……キスするから……
























「キスするから……」


 涙にれて、少女エコーは繰り返した。愛しい人の、最後のことばを。


「キスするから……」


 水面みなもにのこった茶色い枯葉……愛しい人の髪から落ちた、愛しい葉っぱ……、少女エコーはそれをひろいあげて、そっと、岸辺に置いた。





 ……彼女のゆくえは、誰も知らない。

 岸辺には今も、スイセンの花が咲いている……










……ネタ、わかりました?

もしご存知なければ、「ナルキッソス」で検索してみて。



参考記事として、

扉園さまというユーザのかた運営の外部サイト「メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-」の2017年4月29日の記事もおすすめです。こちらで紹介されているのは私のとった青年水没説とは違う説ですが。

西洋の絵画を紹介されているブログなのですが……、ということは、裸体絵画などあるわけで、念のためリンクは貼りません(笑)

上記のサイト名コピペ→検索

でお願いします^^



では、また。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ギリシャ神話ですねー好きです。エコー悲しいですよね。確かお仕えしていた女神様に、きちんとお返事出来なくて、おうむ返しの呪い?をかけられた、美しいニンフでしたっけ。 ナルキッソスの、あのお前…
[良い点] 水面で気づきました。 あ、ナルシスのことだ! と。 水面に映る自分に恋をするという。 そして水仙で確信しました。 水仙の花言葉はナルシストですから。 情景がきれいに映し出されていて素敵…
[一言] 切ない一方通行の愛。いや、僕にとっては相思相愛か。 エコーが悲しいです。 一見、素直に愛を謳っているようだけど、檸檬さんのことだから他の何かに違いない。エコーが出てくるまで一体なんだろう?…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ