キスで落ちてく冬の恋
アンリさまの冬の恋企画「キスで結ぶ冬の恋」参加作品。
拙作としては二作目です。
先に出した『佐吉のうた』のほうがメインですがね。
今回は全然違った題材です。
枯葉がきみの髪に落ちて、ゆらゆらとただよった。
茶色はきたない。きみには似合わない。
だから僕は、枯葉をとってあげた。
そうしたら、きみの黒い瞳がゆれた。真っ赤な頬がゆれた。
きっときみは、笑ったんだね。
笑顔の波紋がまぶしすぎて、僕にはしっかり見えないよ。
でもだんだん、見えてきた。
きみは笑ってる。
その例えようもない美しい顔で、笑ってる。
きみは美しい。
僕が言うんだから、まちがいないさ。
今までたくさんの女性を見てきたけど、
きみほど美しい人はいなかった。
なんだかずいぶんとぼけっとした顔になってきたけど、
いや、いいんだ、
普通の女性ならだらしなく見える顔でも、
きみがすると、愛おしくさえ思える。
ああ、きみは美しい。
一刻でもきみから離れなくちゃならないなら、
僕はもう、生きてる意味なんてわからない。
胃袋がなんだというんだ、
胃袋は僕自身じゃない。
僕自身はこの左右の目だ、
今のところはね。
でもそのうち、
僕という存在はこの世からなくなって、
きみとひとつになるんだよ、
きっとね……
また枯葉が落ちた。
きみには似合わないから、とってあげよう。
僕は枯葉をどかそうと、きみの冷たい髪にさわる。
きみはまた、顔をゆがめた。くすぐったかったかい?
きみの髪にはまだ、枯葉がついていた。
おかしいな、たしかにとったはずなんだけど。
そういえば、
さっきは枯葉のかさついた感触があった。今度はきみの潤いだけだ。
ああ、そうか。きみはきたない枯葉でさえも、美しく変えてしまうんだね。
僕にはわかった。
きみは、天使なんだ。
僕を迎えにきたんだね、この寒い世の中から救い出すために。
そっちはきっと、あったかいんだ。
つめたいのは表面だけで、
それも、この世と触れてしまっているせい……
きみのくちびるが輝いてる。
そうか、もうそのときなんだね。
よし、わかった。
今きみに……
……キスするから……
「キスするから……」
涙に濡れて、少女は繰り返した。愛しい人の、最後のことばを。
「キスするから……」
水面にのこった茶色い枯葉……愛しい人の髪から落ちた、愛しい葉っぱ……、少女はそれを拾いあげて、そっと、岸辺に置いた。
……彼女のゆくえは、誰も知らない。
岸辺には今も、スイセンの花が咲いている……
……ネタ、わかりました?
もしご存知なければ、「ナルキッソス」で検索してみて。
参考記事として、
扉園さまというユーザのかた運営の外部サイト「メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-」の2017年4月29日の記事もおすすめです。こちらで紹介されているのは私のとった青年水没説とは違う説ですが。
西洋の絵画を紹介されているブログなのですが……、ということは、裸体絵画などあるわけで、念のためリンクは貼りません(笑)
上記のサイト名コピペ→検索
でお願いします^^
では、また。