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5:作者が「どうして辛いリアリズムで書かなければいけないの」「もうこれ以上書きたくない」と、追い詰められる作者精神を安定させたのが、夢と希望とロマンであった。

離別したボーイフレンドも自分も「2人とも何も悪くない筈だ」という願望や「たとえこんな目に遭った女でも、いつかは幸せになれる筈だ」という夢の、誰が何と批難しようと、主人公の人間性では受け入れられない『ロマン』だった。

作者のモチーフの核にある、天性の天真爛漫な楽天主義と「生きてやる」という根性の座った精神が合体しているかのような、速攻即断・即時行動の稀にみる性格でもある。

作者にとって『書くべきでないこと』よりも増して『書くべきこと』への執念の方が強力に見られる。

たとえ『書けること』のみに一心不乱で『書くべきでないこと』まで気が回らない欠点が、まだ多分に散見されるとしても、それは作者の『有機質体』から発せられる文体という匂いであるのだが、それは腐敗としての匂いではなく、決して『無機質体』が発することがない人間性の『匂い』であり『香り』であろう。