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3:モチーフは、揺らぎ続ける自分との決別への苦渋に満ちた決意である。

明らかに、自虐の反省に立てば立つほど、心乱れて苛まれる自分の心との葛藤である。

書き起こす時のモチーフと、書き進めている時のモチーフとは、その都度リクルートされて発展している。

モチーフを維持するために、一人の女性として、被告・加藤狩雄に対する『愛したい』情念と『愛されたい』情念との離反や、混濁の混迷が、現代の若者世代の『働かなければ生きてゆけない』人々の、追い詰められた困難性と密接不可分に絡み合って展開してゆくストーリーとして、従来の小説作法などの規律を乱暴に押し退けても表現されてしまう、一途にダイナミックな記述になっている。

後の裁判で、弁護士側や裁判官から『被害者としての発言態度とは思われない』と指摘されてしまう弱点を克服できずに、付け込まれて、やり込まれ、反論の重要な根拠に利用されてしまう欠点をも、隠すことなくリアルに表層させて記述する。

随所で、文体のレトリック的体裁に未熟さがあったり、社会見識への幻想的非科学性や、対人感情の幼稚性に引きずられて、作者の見識や力量の不足も見られるとしても、現代肉体労働者の複雑な観念と生活行動をリアルに展開している現代民主主義リアリズムの小説であることは疑いないだろう。




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